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ノアークβ  作者: ニセモノノシキ
第一章
6/21

ラグナロク

主人公のキャラが崩壊してます。

相変わらず書き方模索中です。

設定やらちょこちょこ変わります。

書き直しもちょこちょこしてます。


「いやいやいやいやいやいやいや」

 一通り話を聞き終わっての第一声。そんな事あっていいのかってレベル。

「ねーよ! そーれはねーよ!」

 思わずキャラも崩壊するってもんだ。

「そんな事言われましても」

 眉毛をハの字にしているニケ。なんだか楽しそうなクレス。

 それを尻目に大混乱中の俺。

「でもさーにいちゃん! ずっとゲームの世界にいれるんだぜー? もう学校とかいかなくていいし、母さんに怒られる事も電源抜かれてムカつく事もないんだぜー?」

「そーんな単純な事で済むかあああああああ!」

 

 ニケから聞いた話はつまりこうだ。

 あのシステムアナウンスのいう『登録』とは、極秘裏に進められている仮想世界移住計画のテスター登録であり、それに登録してしまった俺は今、仮想世界の住人となってしまったと。

 この世界にログインして遊ぶわけではなく、完全にこっち側に移住する。プラシーボ? とか思い込みの極地みたいな実験らしい。よくわからなかったけど。

「俺の体はどうなるんだよ! 現実世界(あっち)で食ったりしないと死んじゃうだろ!」

 俺のユーザーメニューは既にログアウトボタンがなくなっている。もう二度と現実世界に戻れないって事だ。

「それはですね、このゲームに登録した時に入力した個人情報を使って運営が死なない程度の保護をしてくれてるらしいですよ」

「死なない程度ってなんだよ! ちゃんと手厚く保護しろよ! って違えーよ! ログアウトさせろよ!」

「あはは、にいちゃん元気だねー」

「元気じゃねーーーーっ!」

 

 

 

「落ち着きました?」

 低めのテーブルにマグカップが置かれる。中身は匂いからしてココアだろう。

 あれからしばらく喚いたり騒いだりを繰り返し、結局そんな事は何の意味もない、と気付いて無理矢理に心を落ち着けた。

「落ち着いたとかではないんけど……」

 カップに口を付けると温かさで心が和らいで行くようだった。

「なぁ、ログアウトする術はないのか?」

「さっきもお話した通り、現状は見つかっていませんが絶対にあります」

 きっぱりと断言する瞳に嘘や冗談の色はない。

「何でそんな事わかるんだよ。まさか勘とか言わないよな?」

「まさか! ちょっと、これを見てください」

 彼女か取り出したのはモンスターデータ収集結晶、所謂アークだった。慣れた手つきでモンスターデータを表示させていく。

「これはインティコアという、この島にしか棲息していないモンスターのデータです」

 目の前のモニタに映っている鳥はインティとよく似た別種だった。さっきの鳴き声もコイツか。

「収集報酬を見てください」

「ん……なんだ、これ?」

 通常であればSTR3とかレア遭遇値1みたいにステータスと数値が記載されている欄に、data01と書かれている。

「そして、こちらも」

 遷移したモニタには見た事のないモンスター。報酬欄にはcase01。こんな表記は見た事がない。

「その二つがこれです」

 そう言いながら差し出された掌に乗っていたのは小さな石板とビーズのようにキラキラした小さな結晶。

「報酬がアイテムなんてことあるのか」

 腕を組み一人感心している俺を横目に石板の中央に空いている穴に結晶をはめ込む。

 すると石板から上に向かって扇状の光が放たれ、その中にどう見ても可愛くない作りの黄緑色のクマのぬいぐるみらしき物体が映った。

『やあ! ノアークの本当の世界にようこそ! 選ばれた君はとてつもない幸運の持ち主だね!』

 なんだコイツ。

『これからこの世界についての説明をしていくんだけど、準備はいいかな?』

 教育番組の着ぐるみのように滑稽な動きとファニーな表情。だがしかし、本当に可愛くない。どうやったらこんなに可愛くないキャラクターが生み出せるのか、というくらい可愛くない。クマなんてオーソドックスなものを題材にしてよくここまで不細工に作れたものだと制作者のデザイン力に感心する。

『それでは説明して行くね! おっとその前に! もしかして君は、間違えて登録しちゃったりしてないかな?』

 ガタッ

 思わず立ち上がってしまう。

 やはりそんなケースも想定されていたのか。

『そんな君には登録解除のやり方を説明しちゃうよっ! えーっとねー…………あ! もう時間だ! また会おう!』

「はあああああああああああっ?!」

 ヒュンッと消える光。消える間際に聞こえた『ボクはフィンくんっていうんだ! 覚えておいてね!』という無駄な情報が憎らしい。

 ガクッとうな垂れる俺の頭上から哀れみを含んだ声が降る。

「まぁ。そんな訳でこのまま収集を続けてれば欲しい情報には辿りつけるって事で……ね? 元気だしてください」

「ん、ああ。そうだな……」

 いずれにせよ希望が見えた、という事だ。

 そっと差し出された右手を握る。

「改めまして。私はニケ、シューターです。ようこそ、攻略ギルド『世界の終焉(ラグナロク)』へ!」

 

 

 話している間に日は暮れてしまっていた。

 少しでも今いる場所を把握しておきたかったが、散策は明日に回すことにして小屋の周りを散歩するだけに留めておく事にしよう。

 長い話が退屈だったのかクレスはソファーで眠ってしまっていた。

 毛布をかけながら「晩御飯までには戻ってきてね」と言ったニケを見て、胸がむず痒くなる。

 し、新婚さん、みたいだな……なんて。

 顔が赤いのは夕日のせいにしよう。そうしよう。

 

 身体の痛みはもうほとんどなかった。ニケの言うように身体がこの世界に慣れたのか。

 確かに今までよりも軽く、動きやすくなっている。

 重力が小さく、空気が濃い状態と考えるとわかりやすい、とは言っていたが全くわからん。

「それにしても」

 崖近くの小さな岩に腰を下ろす。

「勝手なもんだな」

 一人苦笑を漏らした。

 あんなにも苦痛だった、あんなにも帰りたくなかった現実世界に、今はこんなに帰りたい。

 帰れない、というこの状況が不安で不安で堪らない。

 夢にまで見たことがあるこの状況。ゲームの中や漫画の中に入り込んで冒険する。

 家には帰らなくていい。そんな妄想上の夢が実際に叶ったのに、ちっとも嬉しくない。

 何でそんなに帰りたいか、と聞かれればそれ程の理由なんてない。ただ帰る場所、いつもそこにあったはずの場所がなくなるという事は、そこがどんなに嫌な場所であっても不安になるのだ、と思う。

 いや、違うな。俺は甘えていただけだ。どれだけ仮想世界で無茶をしても、受け入れてくれる現実世界に。当たり前だけど現実世界は全ての基盤なんだ。

 

 外から小屋を見上げると下手くそな文字で「らぐなろく」と書かれた看板が掲げてあった。

世界の終焉(ラグナロク)』か。

 見上げながらニケと握手を交わした手を握る。

 終わらせてやるよ。なんとしてでも。帰ろう、現実世界に。

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