マップ外エリア
「痛、たた」
振り返り今吸い込まれてきた向こう側を見る。
「吸い込まれるとか、予想外だった……」
マップを表示させると、先程までいた場所の先にアイコンが点滅している。
「やっぱりエリア外か」
周囲を見渡しても薄暗くてろくに見えやしない。扉の外で見たあの微かに漏れていた光はなんだったんだろう。
とりあえず起き上がって歩いてみる。
今までいた岩に囲まれたダンジョンとは違い、リノリウムのような床に乾燥した空気。繋がっている事さえ疑わしい程、全くの別エリアだ。
暗がりに目が慣れてきて、ようやく全体が見渡せるようになった。歩いていた時には気付かなかったけれど、奥のほうに箱のようなものが置いてある。近づいてみると鎖で雁字搦めにされた銀色に青い宝珠がちりばめられたデザインの宝箱だった。
見たことのないタイプの宝箱。さて、どう開けたもんかな……
とか何とか考えていると、パッと室内が明るくなった。
「!!?」
瞬時に後ろに飛び退く。何かあるとわかったわけではないが、周囲に異変が起きた時の癖だった。
『プレイヤーID:117。プレイヤー名:トール。ジョブ名:ガンブレイダー。ジョブレベル:41。間違いがなければyesを押してください』
突然響く硬い声質のシステムアナウンス。目の前にはいつのまにか選択コマンドが表示されている。
戸惑いながらもyesのボタンに触れると、ポンッとシステム音が響き新たなウィンドウが表示された。
「利用規約……?」
一番上に規約に同意するか否かの選択コマンドがあった。その下にはよくある会員規約のような大量の文字。スクロークバーを見ると相当な文字数だと予想される。このノアークのユーザー登録の時に同じものを見た気がするので内容を見ずに同意を選択した。こんなもの律儀に読む奴の気が知れない。
『登録完了致しました。これより特典の配布を行います。アイテムインベントリの容量を確認致しますので少々お待ち下さい』
登録? 特典配布? 隠しクエストかなんかだったのか?
『容量の確認終了。特典の配布が終了次第、拠点登録されている街に転送します』
プログレスバーの進行速度から配布されるアイテムの容量が相当大きい事がわかった。
こんなクエスト情報は出回ってない。何かのバグか相当なレアクエストか……
再度ポンッとシステム音がして光に包まれる。
『ご登録ありがとうございました。これから始まるノアークでのよりよい冒険をお楽しみ下さい』
視界の隅でさっき見つけた宝箱が開いているのを確認した。あの中身が特典という事なのか。
システムアナウンスに続いて視界が薄くなっていく。
本来の目的は達成してないけど、レアクエストらしきものに出くわすことが出来たのだから収穫あり、と言うところか。
街に帰ったら特典アイテムを確認して、クロッドに話をして……。