Ⅲ 心に光を『鼓動』
「探検・・・え、探検?」
「そう、ゾイの基地を見つける為に毎日続けてるんだ」
ハルが言う。
「ゾイはなかなか尻尾を出さねえんだ」
「だから、オレたちからってな」
「出来るだけ広範囲を探ってるの」
「今日の範囲を説明しますよ」
セイトがノートの様な物を取り出す。
「何それ?」
「これは電子マップ、そんな事も知らないんですか」
む・・・。そっちの世界とこっちの世界じゃちょっと勝手が違うんだし。
「じゃあ説明しますよ」
改めてセイトが言った。そして電子マップを開く。
「ここがボクたちの砦」
そう言って赤い点が点滅している所を指さす。
「そして、この範囲が今日の目標です」
セイトがコツコツとマップを叩くと、砦からかなり離れた所が緑のベールに包まれた。
「ハルがここでショウがここ、ゲンがそこでズズはここ、そしてボクはここの範囲です。シロは一人だと心配ですから、ハルと行動してください」
よりによってハル~・・・?ズズの視線が痛い。
「じゃあ行動開始!」
ハルがバズーカみたいなのを持ち上げる。周りを見ると皆何かしら持っている。
ショウはハルと色違いのバズーカ、ゲンはそれよりも大きなバズーカ、セイトとズズは腰にたくさん手榴弾をぶら下げている。
「えーっとシロには・・・」
ショウが鉄でできた箱の中を探る。
「はい」
渡されたのは小型のミサイル入りの発射砲。さほど重くはない。
「あ、ありがと」
渡されたはいいけど、どうやって使うんだろう・・・。
「ここを引いたら、ミサイルが出るんですよ」
セイトが説明してくれた。
「心配しなくても、それは相手の動きを止める程度だから」
ショウが昨日のように私の頭に手をぽんぽんと当てる。
「そう・・・なんだ。よかったぁ」
実を言うとちょっと怖かったんだよね。
「さ、じゃあ行こうか」
ハルが四人と私の前に手を出した。それに皆手を重ねる。私も戸惑いながら手を重ねる。
「『心に』」
「『光を』!」
それだけ言うと、皆はバラバラに道を進み始めた。多分、合言葉なんだろう。
「よし僕たちも行こうシロ」
「あっうん」
* * *
どの位歩いただろう。
セイトに言われた範囲をざっと探してみたけど、それらしい場所は見当たらなかった。
ずっと曲がりくねった道が続いている。ハルは一メートル先を歩いている。
「大丈夫?シロ」
ハルが心配そうに後ろを向く。
「うん、大丈夫大丈夫~」
手をヒラヒラと振って応える。けど体は大丈夫じゃないと叫んでいた。けどそれは無視。足手まといになってちゃダメだもんね・・・。
「ホントに大丈夫?」
ハルが聞く。
「うん平気、早く行こう」
「もう少しで着くから」
「うん分かっ――――――」
痛・・・っ
「シロ!」
「いたた・・・」
こんな段差で足を挫くとは・・・。二十センチ程の段差を睨みつける。
「歩けるから大丈夫だよ」
けど、立ち上がろうとした途端に足ががくんとぐらついた。
「無茶はダメだよっと」
「うわっ?!」
いきなり目線が高くなった。
「お、重くない・・・?」
「大丈夫。シロは小さいし軽いからね」
おぶわれたまま下を向く。
「ありがとう、ハル」
「うん」
心臓の鼓動が高まる。聞こえてないといいけど・・・。
ズズの顔が頭に浮かぶ。
―――――――どうすればいいんだろう
「シロ、もう戻ろうか」
「うん・・・、ゴメンね私のせいで」
ハルは私の言葉に応えるようにおぶった私を少し揺すった。
* * *
「ただいまー」
ハルが言った時には、もう皆砦に帰り着いていた。
「おかえり・・・ってシロ!?」
ショウが驚いた表情をみせる。
「足挫いてるんだ」
ハルが私をドラム缶の上に下ろす。
「うーん・・・」
セイトが私の足首を見て腕を組む。
「傷の感じからしてこの薬ですね・・・」
薬箱から湿布を取り出す。そしてそれを貼ってくれた。ひんやりとした感触が足に伝わる。
「ボクの特製湿布です。きっと明日には歩けるようになってますよ」
「ありがとうセイト~」
「どういたしまして」
は!忘れてた。
ズズの視線・・・・・・更に増して痛い。完璧にこっち睨んでるよ~・・・。
「ズズ、なんでそんな目でシロを睨んでるんだよ?怖いよ」
ハルが少しきつい口調で言う。
するとズズはきゅっと口を結んで、ハンモックに寝転んでしまった。
ごめん、ズズ。
私もハルに惹かれてる。
ハルが太陽の様に暖かいから――――――――――。
当初からこの設定です*
さてズズさんはどうするんでしょう。