Ⅱ 電子世界『偽物の空』
「おい!おーい?シロッ起きろよ!」
んんん?私の部屋で何で声がするの・・・あれ?
「シロ!!」
「ん!?」
勢いよく起き上がった。
ここは――――――――
「うはぁっ!」
ハンモックから滑り落ちて尻餅をつく。鉄板みたいな所に落ちたみたいで、かなり痛い。
「シロ、大丈夫か?」
私の顔を覗き込んでいるのは・・・
「ショウ?」
「おはようシロ」
思い出した。
私はサチばあの家からの帰り道に、おとぎ話に出てきた扉を見つけてここに来たんだっけ。
で、ハルたちに出会ったんだ。
「おはよう・・・」
ショウに手を借りて立ち上がり周りを見ると、もう皆起きていて朝食を食べていた。
「遅いぞシロ」
そう言ってゲンは朝食のパンの最後のひとかけらを口に入れた。
「ごめんなさい~・・・」
「コーヒーいりますか?」
「あ、うん」
セイトからコーヒーカップを受け取る。
「はい」
「ありがとうズズ」
ズズからはパンを受け取る。多分形からしてコッペパンだろう。
「シロ、僕たちの事は大方分かっただろう?でも君の事をよく僕たちは知らない。教えてくれないか?」
「えっと・・・」
皆の視線が集中する。話しづらい・・・。
一口かじったコッペパンを飲み込む。
「私の本名は藤城環奈。桜庭中学三年で、十五歳。この世界にもともといた訳じゃなくて、サチばあっていう近所に住んでいるおばあちゃんから聞かせてもらったおとぎ話に似た扉を見つけて――――」
「違う世界から来たって事か?」
ゲンが眉をひそめる。
「うん、そういう事になるのかな。そしてその扉をくぐったらこの世界に通じていたっていう・・・。」
うーん、自分でも納得しがたい説明。私自身もまだ実感があまりないし。
「そっちの世界は?」
「え?」
「シロの世界はどんな所?」
ハルがキラキラとした瞳で聞く。まるで太陽みたいだ。
「私のいる世界は――――――」
そこまで言って口をつぐんだ。
私のいる世界はどんな所か・・・。あまり考えた事がなかった。
「私のいる世界には皆と同じたくさんの人間がいる。風もあるし空もある。それに、太陽も。あと海もあるよ」
「ウミって何?」
ズズが首をかしげる。
「海は青い水がずーっと広がっている所だよ」
「へぇ~・・・」
この世界は太陽を奪われて、海も存在しないのか・・・。
そう思うと、私たちは随分贅沢な暮らしをしているんだと感じた。
「オレたちの世界の空は偽物だよ」
「え・・・っ?」
昨日見たあの星空は偽物・・・。
「空はたくさんのパネルをネジで繋ぎ合わせてできているんです。空があれば太陽があるでしょう、だから空も隠したんです」
セイトがコーヒーをすする。
「でも、そこまでしてゾイは何をしようとしているの?」
「それがさっぱり分からねえんだよ」
ゲンが大きく伸びをして言う。
「どうしてそこまでしてオレたちから太陽を奪ったのか」
「その全てをつきとめる為にも僕たちはゾイの基地を見つけ出さないといけない」
「そうね・・・」
皆はそう言うと黙ってしまった。
「シロ、君はもうその世界には戻れないの?」
ハルの言葉に私は頷く。
もう・・・戻れないんだ、きっと。
「そうか・・・でももし、もし戻れたら君の世界の海を見せてね」
ハルはそう言うと微笑んだ。
「うん・・・っ」
「さてと、飯も食ったし行くか!」
ゲンが立ち上がる。
「そうだな」
「ですね」
「うん」
「よし、行こう!」
・・・ええっと、
「あの、どこに行くの?」
すると五人は一斉に言った。
『探検だよ』
「探すんだ、ゾイの基地を」
いよいよ探し始めました。
まあ、あの五人はいつもやってるんでしょうけど。