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Ⅱ 電子世界『ハルとその仲間たち』

「え・・・と」

いきなり名前を聞かれて一瞬戸惑った。

「藤城環奈・・・です」

そう答えるとハルと名乗る少年はニッと笑った。

「フジシロカンナ・・・じゃあシロだね!」

「シロ??」

え、シロ?私の名前が?

「よろしくね、シロ」

ハルが手を差し出す。

「あ・・・ハイ」

とりあえず、シロって事だよね。ハルは私の差し出した手を握ってぶんぶん振った。

「あ、そういえばシロはどこから来たの?」

「へっ?」

ええと、私は偶然この世界に繋がっていた扉を見つけて、扉が消えて戻れなくなった・・・って言えばいいのかな。

「言えない程の事情があるのかい?」

うーん、そういう訳ではないんだけど。

「そうなのか・・・じゃあ、行こう」

「え?」

ハルは勝手に解釈してしまったらしい。

「どこに行くの?」

「僕たちの砦さ」

僕たちって事はまだ仲間がいるのかな。

「そこ、気を付けて」

くねくねとした細い裏路地を歩く。どこまで行くのかな・・・。

あ、そういえば。

「あのロボットはなんだったの?」

「ん?ああ、『クラウド』の事?」

クラウドっていうのか、あのロボット。

「あいつはいわゆる警備ロボットって奴さ」

「ハルはそのクラウドに追われてたの?」

「・・・うん」

少し間をあけてハルが答えた。

「どうして・・・?」

「それは、後で話すよ。そろそろ砦に着くからね」

ふと周りを見回す。生活感のない機械だらけの世界に、少しだけ生活感が出てきた。ここからがハルとその仲間たちの砦なんだろう。

「さあ着いた」

広い空間に出た。ハンモックが五つ機械にぶら下がっている。それからガスコンロの様な物とどこからかひいてきたのだろう、水がホースを通って流れていた。他にも私が見た事のない物がたくさんあちこちにあった。

「ここが、ハルの家?」

「僕たちに家はない。ここは僕たちの砦だよ」

真剣な眼差しでハルが言った。

「砦・・・」

自分たちを護る為の場所・・・。

「ここに住んでるのってハルだけじゃないよね」

「うん、他にはショウとズズ、ゲンとセイトって奴がいる」

ショウとズズとゲンとセイト・・・どんな人たちだろう。

「もうすぐ帰って来ると思うんだけどな・・・あ、一人帰って来た」

振り向くと、スラリとした背の高い少年が向こうから歩いて来ているのが見えた。黒いフード付のパーカーにだぼっとしたジーンズ、フードを被っているから顔はよく見えない。

その少年はスタスタと歩いて来て私とハルの前で止まった。

「・・・誰、コイツ」

落ち着いた声で尋ねる。

「こいつはシロ、新しい仲間だよ」

え、あもう仲間なんだ。

「シロです、よろしくお願いしますっ」

軽く頭を下げる。

「ふーん・・・」

ショウは私の顔をじっと覗き込む。なんなんだ、一体。

そしてポスポスと私の頭に手を当てた。

「ヨロシク、シロ。オレはショウだ」

続いてやって来たのは少女だった。ショートパンツに白いタンクトップ。印象的なのは腰まで伸びている長い黒髪と鼻を中心として広がっているソバカスだ。背は私より高め。

「何・・・?この人」

若干睨むような感じで少女は言った。

「シロっていいます、よろしくっ」

今度は自分から自己紹介した。すると少女はツンとした態度で何も言わずにハンモックの方へ行ってしまった。呆然とする私にハルは慌てて言った。

「あいつはああいう性格だから・・・、ズズっていうのがあいつの事」

「おい、なんだぁそいつ」

野太い声が後ろでした。びっくりして振り返る。

「シ、シロっていいますっ」

背は私より遥かに高い。青の半袖Tシャツにダメージジーンズ。がっしりとした筋肉質な体に、鋭い眼。

「俺はゲン、よろしくな」

意外と笑った顔は優しかった。

「あのー」

ゲンのすぐ後ろで声がした。迷彩柄の七分袖にオーバーオール姿。私より低い背に、ゴーグルとサングラスのハーフの様な物をかけた少年。

「シロです、よろしくっ」

「ボクはセイト、こちらこそよろしく」

この四人がハルの仲間たち。

そして私も、今その仲間に加わったのだ。


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