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Ⅲ 心に光を『彼女の涙』

梯子から降りてくると、皆はまだ寝ていた。

「もうすぐ起きるよ」

ハルがそれぞれのハンモックを見て言う。

「そろそろ朝ご飯の準備しないとね」

そう言って金属製の棚からハルが取り出したのは・・・

「・・・ハル、それ何?」

六つの袋。それをハルは次々に開けていく。

「え、何ってインスタントスープ」

インスタントスープ・・・。

「作ったりはしないの?自分で」

すると、ハルは苦笑いして言った。

「僕ら料理だけは出来ないんだ」

「そうなの!?」

だから昨日も一昨日も同じ味のスープだったのか。それにパンも同じ。

あ、そうだ!

「私が今日のご飯作るよ!」

「えっ?」

ハルは目を丸くした。

「任せてよ、私こう見えて料理得意なんだ」

サチばあに小さい頃から料理は教えてもらってるから大体の定番は作る事が出来る。いつまでも頼ってばっかじゃダメだもんね、これ位しなくちゃ。

ハルは自分の持っているインスタントスープの袋と私を見比べてから、インスタントスープを棚に戻した。

「じゃあ頼むよシロ」

「了解っ」

さてとー・・・。

「インスタントの他に食べ物はある?」

「うん、冷蔵庫に色んな所で調達した食料が入ってるよ。あんまり使ってないけど、賞味期限は大丈夫だよ」

冷蔵庫を開けてみると結構入っていた。こっちの世界と食文化はあまり違わない様で、私の知っている食べ物がたくさんある。

とりあえず、朝は和食にしよう。


 * * *


「はい完成~」

味噌汁に白米、それから鮎の塩焼き。川はあるらしく川魚の冷凍があった。

「美味しそう」

ハルが楽しそうに言う。

「あれ・・・ハルとシロ?」

後ろで声がした。同時に声のした方向に振り向くと、ショウがいた。

「何かいい匂いがするね」

「シロが朝ご飯作ってくれたんだ」

「へぇ~、凄いねシロ」

ショウがこの前の様に私の頭に手を当てて言った。その存在はまるで兄の様に感じる。

「運ぶの手伝うよ」

「ありがとう」

円を描く様に並ぶドラム缶の真ん中に置かれたテーブルに朝食を順に置いた。

「腹減ったー、飯は?」

今度はゲンが起きてきた。

「なんだか、インスタントではなさそうですね」

続いてセイトも。

「はい、皆座れー」

ショウが皆を座らせる。一つだけ空いたドラム缶、ズズの席だ。

「ズズ、起きるの遅くないか?」

早速朝食に手を付けようとしたゲンが箸を止めて言う。

「そうですね」

「いつもはオレの次に早く起きてくるんだけどな」

どうしたんだろう・・・。

「私見てくるよ」

そう言って席を立って、ズズのハンモックの方へ歩く。

「ズズ、」

ハンモックに丸まっている毛布に向かって言う。反応はない。

「・・・ズズ?」

ハンモックにのっている毛布はピクリともしない。

「ズズ、朝だよ~・・・」

・・・私だから無視してるのかな・・・。

少し、鼻の奥がツンとした。そんな私の脇をハルがすり抜ける。

「おいズズ!起きろって」

ハンモックを揺する。そしてすぐその手を止めた。

「・・・重みがない」

「え?」

って事はズズはいないって事?

なんで・・・・・・?

「ズズどこ行ったか知ってる奴いないよね」

ハルの問いかけに私たちは頷く。

「じゃあ、ズズは今どこにいるんでしょう」

セイトが首をかしげる。

「トイレにでも行ってるんじゃねえか?」

ゲンが味噌汁を啜る。

「違うと思うけど」

ショウが電気の点いていないトイレのドアの小窓を親指で示す。

「とりあえず、この一帯探してみよう」


 * * *


――――――――あたしは今、何してる?

彼女は手を止めた。

――――――――そう、計画を忠実に行ってる。

数十体の中のクラウドの制御装置のフタを開く。

電子パネルに文字が浮き出る。


ターゲット 入力|


彼女はカタカタと文字を打つ。


ターゲット ハル ショウ ゲン セイト|


文字を打つ手が震える。


ターゲット ハル ショウ ゲン セイト シロ|


――――――――大切な仲間、新しく加わった仲間。ハルは、きっとシロの事が・・・見てれば解る。そしてシロも、同じ想い。あたしもハルの事が好きだ。シロもきっとそれが解ってて遠慮してる。

・・・遠慮なんてしなくていい。もういいの、もう・・・。

シロは、もう大切な仲間の一人。なのに――――――――・・・


彼女の瞳からひとしずくの涙が零れ落ちる。

――――――――あたしは今、何してる・・・?


 * * *


「どうかしたか、シロ?」

ゲンの声が横でする。私はその問いに首を振る。

――――――――ズズ・・・。

立ち止まって空を見る。

ズズは私の事を仲間と思ってないかも知れないけど、私はズズの事を仲間だと思ってる。

大切な仲間だって、思ってるから――――――――――


うーん、ややこしい(?)事になってきたような・・・?

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