Ⅲ 心に光を『まばらな光、そして影』
次の日、私は朝早くに目が覚めた。
「うーん・・・」
体が痺れているのはこのベッドのせい・・・というのは少しゲンに申し訳ないけど。昨日はさすがにズズのハンモックは借りられず、ゲンに簡単なベッドを作ってもらった。
左上にはハルとショウのハンモック、右上にはズズとゲンとセイトのハンモックがぶら下がっている。
皆はまだ寝ているらしく周りは静かだ。
「よっ・・・と」
ベッドから降りて地面に足を着いてみる。挫いた左足首に痛みは全くない。セイト特製湿布が効いてくれたみたいだ。
上を見上げると、夜明け前の空が広がっている。綺麗だけど、これはゾイがパネルを繋ぎ合わせて造った偽物の空なんだよね・・・。
「あれ、シロ?」
後ろで声がした。驚いて振り返る。
「ハル・・・」
そこにはハルが立っていた。
「どうしたの?こんなに朝早く」
「うん、なんか目が覚めちゃって」
「そっか・・・あ!シロ、ちょっと来て」
「え?」
「こっち!」
ハルに言われて砦に取り付けられた梯子を登る。
「さあ着いた、見てごらん」
私はハルに手を借りて一番上に登り着いた。
「わあ・・・っ」
思わず歓声を上げる。
「綺麗だろう?」
目の前に広がっていたのは、今まで見た中で一番美しい景色だった。立ち並ぶ高いビルとその周りに散らばる機械たち、そしてそれらに降り注ぐまばらな光・・・。
あれは―――――――――――
「太陽の光だ、本物の」
「本物?」
「うん、ゾイがパネルを取り付けて太陽と空を隠しただろう?少しだけ、そのパネルがずれている所が幾つかあるんだよ」
「パネルの隙間から光が漏れてるって事?」
私の問いかけにハルは頷いた。
「あのパネルの向こう側に、太陽があるんだ・・・」
空を見つめるハルの瞳。私は大きく息を吸った。
「絶対に、」
「ん?」
ハルが私の目をまっすぐと見つめる。
「絶対に取り戻そうね、太陽を」
その言葉にハルは前よりも大きく頷いて言った。
「うん・・・!ありがとう、シロ」
「約束するよ・・・ハルの瞳から希望の光が途絶えるその時まで」
「・・・僕も、約束するよ。絶対にシロを護る」
ハルの返答に少し言葉がつまった。
「うん・・・っ」
* * *
――――― まだ夜明けを迎える前の事、少女は無線機のフタを開いた。
「こちらジル、応答願います」
『あぁ、ジルか』
低く深い声が応える。
『計画は順調か?』
「・・・はい、ゾイ様」
無線機に長い黒髪が垂れる。
『そうか、ではまた一週間後連絡をしろ』
「はい、了解しました」
そう答え、無線機を閉じた。
周りは静かだ。
―――――誰も起きてないわ。
自分にそう言い聞かせる。
大切な仲間、大切なこの時・・・。
しかしそれを想う気持ちでさえも押しつぶす程の恐れが彼女にのしかかる。
―――――裏切ってはならない、裏切ればその先に待っているものは・・・死。
彼女は一人、息を吐いた。
シロの想い、ハルの想い・・・そして―――――――
・・・いきなりですが、シロ(環奈)は黒髪真ん中分けのショートヘアです*
あのシーブリーズのCMに出演てる女の子位の長さ~。