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社畜に異世界は生ぬるい〜奉公から始まる楽勝平民ライフ  作者: 明和里苳


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第3話 さわやか奉公

 奉公人から勉強部屋と呼ばれている小部屋。そこは、小さな会議室兼倉庫といった感じ。大きさは二十畳くらいだろうか。机と椅子、そして書棚には本や書類が雑多に並んでいる。


「……見事だ。すべて合っている」


「ありがとうございます」


 今日の先生は、店員の一人。ここの奉公を卒業し、正社員として就職した先輩だ。


 この世界全体がどうかはわからないが、少なくとも俺の住んでいた街では、教育機関といえば神殿くらい。洗礼後の子供に、最低限の読み書き計算を教える日曜学校が開催されるのだ。しかし俺は、洗礼で風属性だと判明し、こうして奉公に送られた。属性と奉公との関係はまた今度説明するとして、ここでは日曜学校の代わりに店員から読み書きを教わるというわけだ。


 文字については、母の買い物に付き合って、「りんご」とか「20」などの値札を覚えた。兄が日曜学校で覚えたことを、自慢げに披露されたこともある。それらが俺の持つ知識のほとんどすべて。洗礼したての子供としては、そんなものだろう。


 だがしかし、前世の記憶を取り戻した俺は、この世界の文字が極めてアルファベットに近いこと、そして数が十進法であることに衝撃を受けた。そういえば一週間は七日だし、一日は十二刻だ。そもそも名前だってロドリゴ。どっかで聞いたことある。


 俺が思うに、異世界転生ものってだいたい元の世界に近い世界じゃないか。空は青いし草は緑だし、人間は二足歩行で、体のつくりも大体同じ。それって偶然じゃなくて、そういうふうにできてるんだと思う。だって、たとえば転生先の空が赤かったり手足がタコのような宇宙人に生まれ変わったとすると、わりとすぐに正気を失うんじゃないかと思う。もしくは前世と認識できなかったり、思い出せなかったり。意識の連続性を保つということは、それなりに元の世界と近しい世界を選んで転生した、もしくは近しい世界に転生したから前世の記憶と繋がった、そういう現象が起こってるんじゃないかと思う。


 話は逸れたが、この世界は前世の世界と基本的な概念が似通っていて、俺が慣れ親しんだものとそう変わらないということだ。そして読み書きはともかく、算数となれば簡単なこと。テキストに書かれた一桁の足し算を、手元の小さな黒板にさっさと回答して見せれば、先輩の顔色が変わった。そして次々に渡されるドリルをサクサクこなして、三桁の足し算までやり終えて、今ここ。


「お前、どこかで計算を習ったことがあるのか」


「いえ、なんかこう、やったらできました」


 まあちょっと前世でね。小中高大と十六年間教育を受けましたけども。


「……まあいい。これで算術は終わりだ。お前はこれから別の学習をするといい」


「えっ」


 ちょっと待って。算数って、四則計算どころか三桁の足し算だけでいいの。


「これ以上は学園で学ぶところだ。他の分野でも成績を上げられるようなら、特待生として入学することができるだろう」


「はぁ」


 拍子抜けだ。まさか奉公二日目で、算数を卒業してしまうなんて。しかし、店員のお兄さんだけでなく、他の奉公人からも驚愕の視線を送られている。悪い気はしない。


 その後は簡単な絵本を渡され、ひたすらスペルを黒板に書き取った。単純だが、こういう反復作業が一番記憶に残るんだ。また、これらの単語がどっかで見たことあるのも幸いした。りんごはmanzanaでオレンジはnaranja。うんうん、なんか第二外国語を覚えてるみたいで面白いぞ。


「信じらんねぇ。あいつ、楽しそうにしてやがる」


「変態かよ……」


 ひそひそ声が俺のプライドをくすぐる。ふへっ。俺、なんかやっちゃいました? ニチャァ。

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 最後の最後で読者を気持ち悪がらせる主人公(笑) 
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