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思い出のオルゴールと、姫と騎士の愛憎

作者: 下菊みこと
掲載日:2025/12/13

「姫様、国が滅びるのはあっという間でしたね」


「そうね、騎士たちの裏切りもあったし」


彼が罪悪感から、顔を背ける。


私は思い出のオルゴールを取り出して、鳴らした。


優しいメロディーが私と彼を包む。


「ねぇ、どうして国を裏切って革命軍についたの?」


「…姫様が一番ご存知でしょう」


「………そうね」


兄は王位を継承してから、狂った。


平和を愛した優しい兄は、父と母を暗殺した隣国の王へ敵討ちを宣言して戦争を起こした。


隣国を滅ぼしてからも兄が元に戻ることはなく、凶王として君臨し続けた。


優しい兄は、もういない。


「…兄様は?」


「断頭台にて、首を」


「……そう、そうよね」


これで私には、家族がいなくなった。


「次は私?」


「―…」


彼が何か呟いたけど、よく聞こえなかった。


「なに?もう一回言って」


「姫様、俺と…私と、交渉しませんか」


「え?」


命乞いでもしろというならわかるけれど、交渉とは?


「姫様、私は皆から望まれて…新しく建て直すこの国の新たな王になることとなりました」


「あら」


それはいいことだと素直に思った。


この騎士は優しく、誠実で、一途だ。


幼い頃から私を可愛がってくれた、兄。


その人を断頭台送りにした人。


それでも、この騎士以上の騎士を私は知らない。


「ですが、私は平民の生まれです」


「そうね」


「そこで…権威付のため、私と結婚していただけませんか」


「は?」


「そうすれば、貴女の命は保証できます。他国からも貴女だけは殺すなと圧力も掛かっていまして、頷いてくれれば嬉しいです」


…夢、みたいな話だ。


ずっと好きだった憧れの人。


身分違いを理由に諦めていた人。


その人が、手の届くところにいる。


―そこに愛がなくとも。


「………ええ、それが民にとっても良いことなら。けれど貴方を信頼して次の王にと推した民は、元姫との結婚を喜ぶかしら」


「陛下は恨まれていますが、姫様は変わらず民に愛されております。問題ありません」


「いいのかしら」


父と母は暗殺された、兄は断頭台に送られた。


凶王となった兄を糾すことができなかった私だけ、生きていていいの?


「姫様」


騎士が傅く。


私だけの騎士が。


「私は、貴女をこの手に掛けたくない」


「…ずるいわ」


この騎士が幼い頃に贈ってくれた、大切なオルゴールを撫でる。


そして、閉じた。


静寂が広がる。


私はただ、頷いた。


「…ありがとうございます、姫様」


嬉しそうに笑うものだから、愛されていると誤解してしまいそうになる。


この結婚は、政略なのに。

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― 新着の感想 ―
くっつくんかーい………。 そこは断って欲しかった……。
お兄さん、悪い人ではなかったんだろうなあ。 それが狂うほどの暗殺。王と王妃は一体どんな殺され方をしたんだろうか。 狂王と化した兄は殺されなければ止らかなったかも知れないが、騎士達がふたりを護れていれば…
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