第26話:【エピローグ】原初の光の誕生
本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。
森の中の小道を年老いたエルフ、スヴェトザールが歩いていた。ふと前方に見覚えのある後ろ姿があった。小柄だががっしりとした体格のドワーフ、ボリスである。スヴェトザールは軽くため息を吐く。
「なんだ、スヴェトザールか」
ボリスが振り返り、声をかける。スヴェトザールは眉間に皺を寄せて答えた。
「相変わらず、目上の者に対する口の利き方がなっとらん小童だな」
「ふん! 口の悪いジジイめ」
「お前もドワーフとしては十分ジジイだぞ」
「お前よりは若いわ! まだまだピチピチじゃ」
「曾孫ができる年だ、十分ジジイだ──」
そう言い終えると、スヴェトザールは周囲の異変に気づき、辺りを見回し始めた。
「どうした?」
「やけに精霊が騒がしい……。こんなことは稀だ」
「精霊が見えるのか?」
「いや、何となく感じ取れるだけだ」
「精霊は気まぐれだ。大した理由ではないだろう」
「ならよいのだがな……」
二人は目的の家へと歩みを進める。だが進むにつれて、精霊たちの騒がしさは増し、その気配は強まっていった。
家に到着したスヴェトザールは息を飲んだ。これほど濃密な精霊の気配を感じたのは、これまでの長い人生でも数回しかなかった。家の中に入ると、まるで聖地のような清浄な空気が漂い、明確に精霊の祝福がそこにあるのがわかった。
「なんてことだ……」
「スヴェお爺様、いらっしゃい。どうかしました?」
迎えに出てきたヴァレリアが、大きく膨らんだ腹を抱えながら声をかける。
「おお、ヴァレリア。迎えになど出てきて大丈夫なのか? もう生まれるのではないのか?」
「ええ、もう陣痛は来ていますが、まだまだこれからです」
そう言いながら微笑むヴァレリア。
「それに母さんもお祖母様も来てくれてますし、もしもの時も大丈夫ですよ」
「ああ、ミレナと我が娘アレナの二人がいるのならこれ以上心強いものはないな」
「それより何かあったのですか? 驚いていたようですが……」
「うむ。どうやらこの子は精霊に祝福されているようだ。多くの精霊が集い、この子の誕生を待ちわびているらしい」
スヴェトザールはヴァレリアの腹にそっと手を置いた。彼女は不思議そうに自らの腹を見つめ、まだ見ぬ子を思った。
「この子が……?」
「この子はもしかしたら、大魔法使いとなりうるかもしれぬ」
その言葉に、スヴェトザールの顔は満面の笑みとなり、じじバカの様相を見せた。ヴァレリアは思わず吹き出したが、すぐに顔を歪めて痛みに耐え、息を整えた。
「ヴァレリア、大丈夫か?」
「ええ、でもそろそろ部屋で安静にします」
そう言い残し、奥の部屋へと入っていった。
スヴェトザールは小さく息を吐いた。精霊たちの気配は止まることなく膨れ上がっていた。これが本当にただの祝福なのか、胸にざわつきが生じる。長く生きた彼でも経験したことのないほどの現象だった。いや、遠い昔、少年時代、ただ一度だけ大いなる存在と出会った記憶が蘇る。しかし、あの時と今の気配が重なるのかどうかは、彼の胸の中で揺れていた。
だが、知識を蓄えた彼の脳裏に、嫌な未来がちらついた。わからぬまま祈るしかなかった。
やがて精霊の気配は極限まで高まり、スヴェトザールの耳には幻聴のように微かな声や笑い声が紛れ込んだ。それは確かに精霊の声だった。
その時、赤ん坊の産声が響き渡った。次の瞬間、世界が振動し、風が吹き荒れ、光が眩く周囲を照らす。家の全ての扉と窓が開き、物が揺れ動き、次第に宙に浮かび上がった。
慌てて奥の部屋に駆け込むスヴェトザール。眩い光に目を奪われるもすぐに慣れると、そこには美しくも男女の区別がつかぬ神秘的な人物が、産まれたばかりの赤子を抱いて立っていた。その神々しい姿に場にいた者すべてが息を呑み、時が止まったように動けなくなった。強大な存在感に身体が硬直してしまっていたのだ。
「精霊王様……」
スヴェトザールは膝をつき、頭を深く垂れた。
精霊王はゆっくりとスヴェトザールを見据え、口を開く。
「エルフの王よ。お前の子孫はなかなか面白い。混ざるはずのない複数種族の血が奇跡的に最適調和で融合した。そのため、人の枠を超えた“根源の人”に限りなく近い存在が生まれるとは……」
慈しむ瞳で赤ん坊を見つめ、微笑む精霊王。
スヴェトザールは緊張で手に汗をかきながら、次の言葉を待った。
「この子の名は何と言う?」
精霊王が問いかける。スヴェトザールは決意を持って答えた。
「この子の名は“サーシャ”です」
その名を繰り返しながら、精霊王は何かを思案した後、納得したように赤子を見つめ、愛おしそうに微笑んだ。
「エルフの王よ。この子、サーシャを我が魂の伴いと定めた。彼女は原初の光を宿す、唯一無二の存在。成長の時が来れば必ず迎えに来よう。それまではそなたのもとで静かに見守っていてほしい」
そう告げると、精霊王はゆっくりとサーシャから手を離した。赤子は宙に浮き、スヴェトザールの胸の中へとすっと収まった。
「かしこまりました」
満足げに頷く精霊王は、霧のように姿を消していった。
眩さが和らぎ、周囲は正常を取り戻しつつあった。
ヴァレリアは緊張の糸が切れ、疲労で気を失っていた。慌てて駆け寄るアレナ。
「父様、“サーシャ”なんて女の子みたいな名前、この子は──」
「しっ」
スヴェトザールは口に指を当てて制した。
「まだ精霊の気配が濃い。落ち着いたら話そう」
そう言いながら、スヴェトザールは幼いサーシャの顔を見つめた。
まだ何も分からぬこの赤子の将来が決まってしまった複雑な思いに、彼の心は揺れていた。
慌ててボリスとルスランが部屋に駆け込んできた。やがて精霊の気配が落ち着いた頃、今日この場にいる家族はそろって、サーシャの未来について語り合ったのだった。




