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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
25/26

第25話:壊れた杖と誓い

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 動き回ったせいで体がふらつき、足元が定まらない。もう体力の限界だった。かすかに口が動き──


「……この……体力バ……」


 言い切る前に、意識がぷつりと途切れた。真っ暗な中に倒れ込み、体はそのまま黒い底なし沼へ沈むみたいに、ずぶずぶと落ちていく。

 あれ……? 俺、なんでこうなったんだっけ。体が重い。とにかく重い。指一本すら動かない。──まあ、いいか。このままでいるのが一番楽だ。

 何も見えない。何も聞こえない。何も感じない。何も考えなくて済む。ただ沈んでいく。眠りに落ちていく。

 やがて、どこからともなく光が差し込み、周囲がじわじわと白く霞んでいった──。


「うえぇぇぇぇぇん……」


 母さんにしがみついて、幼いカティアが泣いている。足元には、誕生日に渡されたばかりの大きめの杖が転がっていた。


「おかしいわね……」


 母さんも理由が分からないらしく、カティアを抱きしめながら困った顔をしている。


「スヴェお爺様……どうしてなんでしょう? 魔力はあるはずなのに……」

「……うむ」


 スヴェじいさんはカティアを見つめ、長い沈黙のあとで首を横に振った。


「すまん。私にも分からん……」

「そう……ですか……」


 その背中越しに、カティアの泣き声が続いていた。俺はただ立ちつくして見ていることしかできなかった。──本当は知っていた。でも、言えなかった。言いたくなかった。泣きじゃくるカティアを見るのが辛くて、俺はその場から走り出した。


「サーシャ?!」


 母さんの声が聞こえたけど、振り返らなかった。


 森の奥、いつも来ていた場所。込み上げる感情のままに、地面へ杖を叩きつけた。


「くそっ……! くそっ! くそ!!」


 いつもなら鬱陶しいほど話しかけてくる精霊たちが、今日は一言も喋らない。


「なんで黙ってんだよ……! いつも煩いくせに……なんでカティアの言うこと聞かないんだよ……! いつも勝手なことばかりする癖に……ふざけんなよっ!!」


 怒りのまま杖を叩きつけると、乾いた音を立てて粉々に砕けた。その瞬間、精霊たちの声がぽつぽつと響いた。


“サーシャ……”

“カティアはダメなの”

“カティアの言うこと聞いちゃダメ”

“王様、ダメって言ったの”

“王様、カティアに魔法使わせてあげないの”

“カティア、サーシャの宝物だからダメ”

“王様ヤキモチ”

“内緒、内緒……シー……内緒”


「……な、んだよそれ……」


 悔しさと怒りと罪悪感が一気に込み上げて、涙が地面に落ちた。


「サーシャ」


 振り向くと、スヴェじいさんがゆっくりと近づいてきていた。砕け散った杖に視線を落とし、俺へ優しく手を伸ばす。


「あ……ごめ……んなさい……!」


 溢れる涙を袖で拭いながら謝ると、スヴェじいさんは俺の頭をそっと撫でた。


「やはり……カティアが魔法を使えないのは、精霊が応じないせいか……」


 その言葉に、俺は堪えきれず嗚咽が漏れた。分かっていた理由が胸の奥で重くのしかかる。

 勇気を振り絞って言葉を吐き出す。


「カティアが……俺の宝物だから……。精霊の王様ってやつがヤキモチなんだって……。だから……魔法を使わせてあげないって……。もう……魔法なんて嫌いだ。精霊も嫌いだ。精霊の王様なんて……大嫌いだ!!」


 言い切った瞬間、涙が止まらなくなった。スヴェじいさんは俺の手を強く握り、優しい声で言う。


「サーシャ。魔法も精霊も嫌いで構わない。だが──魔法使いにはなりなさい。カティアが困った時、お前が助けてやれるようになれ。それがお前のためであり、カティアのためでもある」


 そして続ける。


「好きになる必要はない。利用してやればいい。精霊に人の理は通じん。ならばお前も、お前の都合で使えばよい。精霊とお前は別の存在なのだから……」


 そう言って、スヴェじいさんは俺を抱きしめてくれた。涙が止まらなかった。大切にしていた杖を壊したことを後悔した。だけど、心の奥で決めた。

 ──魔法使いになる。そして、カティアの分までたくさん魔法を使えるようになる。

 もう二度と、魔法のことでカティアを泣かせない。

 ……それなのに。なのに俺は、また……カティアを傷つけた。

 ごめん……。


気付いたら部屋のベッドで寝ていた。

【暗穴の墳墓】に行って、床が抜けて大量のモンスターと戦っていたところまでは覚えている。カティアが泣き喚いていたのも覚えてる。なんか、イヴァンをくるくる回してるとか精霊が言ってたのも覚えてる……ん? なんだそれ? 訳分からん。

なんでそっからの記憶がないんだ? どうやって帰って来たんだ?


“くすくす”

“くすくす”

“サーシャ、可愛い”

“可愛い。くすくす”


うん? 何が可愛いんだ?気になって鏡を見てみると、何故か頭にリボンが付いていた……。


「あ! お兄ちゃん! 起きた?!」


 無言でカティアの頭を殴った。痛がって騒いでいたが無視だ。

 まったく、なんなんだよ。訳がわからないし、やけに腹が空くし身体はだるい。とりあえず服を探して着替えようとした。


「ん? なんで俺の服ないんだ? 洗濯したのか?」

「あー、あれ……あれね。ボロボロになってたから捨てちゃった♡」

「はあ? なんでお前が勝手に捨てるんだよ……。まあ、いいけど、他にも服はあるし」

「えへへ」


なんだこいつ、怪しい。もしかして、俺の服を洗濯しようとして破いたのか? ……ありえそうだ。

まあいいや。腹が減ったので、いつものパン屋でパンを買い、食べながらギルドへ向かった。

ギルドに入ると、なぜか視線が俺に集中する。いつもはカティアに向いているはずなのに、しかもその視線がやけに痛い。


「な、なあ? カティア……なんで──」


そう言いかけて振り返ると、カティアの後ろにイヴァンが立っていた。


「ん? なに? お兄ちゃん?」


カティアが言い終わらないうちに、イヴァンが猛スピードで俺にタックルしてきて、容赦なく体にのしかかる。


「うわっ!!」


こいつ、こんなことするキャラじゃなかったはずだろ?! くそっ、捕まった! 今日は一体何なんだ!


「サーシャ、すまない。しかしこうしないと君は逃げるだろうからな」

「当たり前だろ! お前が勝負だ勝負だってうるさいからだろ!」

「いや、今日はそれじゃないんだ……」

「は?」


訳が分からないまま、イヴァンの話を聞くことにした。

 それにしても、こいつの鎧、かなりボロボロだな。【暗穴の墳墓】でかなり無茶をしたのか。そんなことを考えながら話を聞いていたが、その内容はとんでもなかった。


「はあ? 何言ってんの? 俺がアーマーゴーレムを倒せるわけないだろ」

「しかし! 本当に君が倒したんだぞ?! その報酬と名誉は君が受けるべきだ!」

「いや、受け取るわけないだろ! 倒してないんだから! なんなんだよ、これ! 新手の嫌がらせか?!」

「カティア嬢! 君からも何とか言ってくれ!」

「えー。んー……えへへ♪」


 何だ、この笑いは……。こいつ、誤魔化してるな?


「カ、カティア嬢? そうだ! 剣を! あの剣を出してくれ!」

「なんだよ、剣って……?」


 俺が尋ねると、カティアはしばらく黙ってからにっこり笑った。


「……なんですか? 剣って」

「くっ!」


 イヴァンがものすごく悔しそうだ。何なんだ、この会話は?


「あ、そうか! サーシャ、俺の剣を持ってくれ!」


 その言葉が飛んだ途端、一斉に周囲の視線が俺に集まった。

 は? 何これ? 怖いんだけど。うん……もう逃げよう。


「イヴァンさん、だーめ♡」

「カ、カティア嬢……」


 なんだか知らないが、カティアがイヴァンの手をぎゅっと握りしめた。力が強すぎて、イヴァンがちょっと痛がっているようにも見える……いや、喜んでいるのか?あれは。

 その隙をついて、俺はさっと逃げ出した。


 それから数日、イヴァンとのこんなやり取りが何度も続いた。

しかし最近は訳の分からない勝負を挑んでくるやつもいなくなり、パンも気軽に買えるし、ギルドの掲示板を見ても絡まれなくなった。

 ただ、どこにいても痛い視線が感じられるのと、カティアが最近コソコソしているのが少し気になるけど……。

 とにかく──


「なんか知らんけど、だいぶ平和になった!」

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