第24話:怒りと涙の追撃戦
本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。
剣の重み。床を擦る刃音。血の匂い。肌をひりつかせる冷たい空気。
全てが妙に心地よくて──ここが、あの大嫌いなやつが作った空間でなければ、今この瞬間はたぶん最高だった。
ゆっくりと歩を進め、血まみれで震えるイヴァンを見下ろす。
「おい、イヴァン。ちょこまか逃げるな。勝負してやるから、さっさとかかってこいよ」
指で挑発する。せっかく回復したんだ、もっとこの“遊び”を楽しませてくれよ。
「くっ……!」
歯を食いしばりながら立ち上がるイヴァン。だが、『蒼銀の翼』の連中が前に飛び出して彼を庇う。足元はガクガク震えているのが丸見えだ。
「はっ。仲間の影に隠れるなんて、恥ずかしくないのか? イヴァン」
あいつが俺に吐いた言葉を、そのまま返してやった。
“それ、イヴァンが言った言葉と同じですね”
“サーシャ、根に持ってたんですね”
“こんな弱い人間の言葉、気にする事なかろうに”
うるさい、うるさいよ! 根に持つのが悪いって言うなら、そう思っとけよ!
俺は、弱い奴にバカにされるのが何よりも腹が立つんだ!
その時、カティアの隣にいる魔法使いが、震える声で詠唱を始めた。魔力が不安定に揺らぎ、必死に力を振り絞っているようだ。
「大地の精ゼムリャよ、眠れる山脈を呼び覚ませ……」
“む? 我が名が呼ばれたような……”
“いえ、呼ばれてますよゼムリャ”
黙ってじっと見つめた。どうせ無駄に終わる……。
“魔法を使いたいのではないか?”
“いやしかし、これはサーシャに使いたい魔法ではないのか?”
「……我が命脈を礎に、怒りの槌を振り下ろせ──」
“ほら、詠唱終わってしまいますよ?”
“サーシャが傷つくのは反対だな”
“うむ、サーシャを傷つけるわけにはいくまい。我にも優先順位というものがある”
「《大地の怒槌》!」
……何も起きなかった。
精霊は力を貸すことを完全に拒否し、魔力は行き場を失って弾けるように消え去った。魔法使いは「え?」と情けない声を漏らし、動揺が隠せない。
小さく息を吐く。こんな程度の魔法、俺にはどうってことないのに、俺だけ特別扱いされるのは正直うんざりだ。
「あの……お兄ちゃん、精霊さんに好かれてるから。お兄ちゃんを傷つける魔法は、精霊さんが応じてくれないんだ……」
カティアの言葉が魔法使いを直撃した。膝をつき、力なく崩れ落ちる。肩が微かに震えたまま、動きを止めてしまった。
「そんな……そしたらもう……誰もサーシャを倒せないじゃないか……」
誰のものとも分からない呟きが、場の空気を冷たく震わせた。おいおい、倒せないって……俺、化け物扱いかよ。
イヴァンが息を飲み、剣を構え直す。
「カティア嬢、聞くだけ無駄かもしれないが……。サーシャに弱点とかないか?」
「え? 弱点??」
は? 俺の目の前で何聞いてんだ、こいつ。
見ると、カティアが真剣に考え込んでいる。
……え? まさか答えるつもりかよ、こいつ。弱点なんてないけども! 妹のくせに兄を売る気か!?
“サーシャに弱点なんてあるのですか?”
“サーシャの弱点は我らが王ではないか? 苦手にしているようだし”
“あ、バカ! 王に聞かれたら叱られるぞ!”
……こいつら、消滅させる方法はないのか? あれば、すぐにでも試してやりたい。
そんなことを考えていると、カティアがぱっと顔を上げてこちらを見た。
「弱点……、小さいところ?」
「おい! それは弱点って言わないだろ」
こいつ……本気なら、許さねぇ。
「だいいち、俺は成長期だって何度も言ってるだろ」
「またそんなこと言って、子供じゃないんだから〜」
あの、カティアの完全にバカにしたやれやれ顔がたまらなくムカつく。
「スヴェじいさんが、俺の成長はエルフの血のせいでゆっくりなんだって言ってたんだ」
「えー、でも、ボリスおじいちゃんは“サーシャはドワーフの血が濃く出てるんじゃー”て言ってたよ」
調子に乗りすぎたカティアほど腹立つものはない!
「どこがドワーフなんだよ! 体型からして違うだろ!」
「体型なんて関係ないもん。お兄ちゃん馬鹿力なのどう考えたってドワーフでしょ。いいじゃない、ドワーフ、かっこいいし!」
じいさんたちは確かに渋くてかっこいいけど、かっこいいの方向が違うんだよ!
「だったら、スヴェじいさんみたいに魔法使えるんだから、エルフでもいいだろ!」
「そんなこと言って、普段詠唱噛み噛みで失敗ばっかりじゃん。エルフはそんなかっこ悪いことしないよ!」
がぁぁぁぁっ!! バカティア、何も知らねぇくせに好き勝手言いやがって!
「しょうがないだろ! 緊張すると口が回らなくなるんだよ! お前こそ同じエルフの血が入ってるくせに、魔法センスゼロじゃねーか!」
──あ、やべ。言った。
言い終えた瞬間、背筋が冷えた。カティアが一番気にしてることなの、知ってただろ俺。
「……ひ、酷い……、気にしてるのに……。私だって魔法使いに憧れてたのにっ!!」
“サーシャ、それは言わないと決めてた言葉では?”
そうだけど、もう遅い。カティアが俯いている。……怒らせた。
「……お兄ちゃんなんか、小さくて可愛いからって、みんなにちやほやされてるだけじゃんっっ!!!」
拳を強く握りしめ、涙を溜めて睨みつけてくる。だがしかし! しかしだ!
俺の急所を突き返しやがった!!!
「なっ!? 俺だって身長気にしてるのに! 小さい小さいうるさいんだよ! お前がデカイから余計に小さく見えちゃうんだろーが!!」
“あ、サーシャ。それはダメですよ”
“それはカティアの地雷だぞ”
“前にも痛い目見たでしょ!”
“あーあ、知らない”
……前にも? ……いや、なんか思い出せない。
「…………お前、お前、うるさいなあ……。私だって大きいの気にしてるのにっ!!! ひどいよおぉぉっ!!!」
カティアが震え始めた。涙で目元がぐしゃぐしゃになっていく中、魔力は大蛇みたいに暴れまくってる。
“ひぇっ……”
精霊の情けない悲鳴が聞こえた。
「許さないっっっ!!!!!!」
その叫びと同時に、カティアが弾丸みたいな速度で突っ込んできた。刃が目前を薙ぐ。
「うわ、ちょっ、危ないだろ!」
身をひねってギリギリ回避。すでに二撃目が来てる。
「知らない!! ひっく……もー、許さない! お兄ちゃんこそ骨が見えるまで切り刻んでやるっ!!! ぐすんっ」
泣きながらキレてるくせに、斬撃は容赦ゼロ。踏み込みの重さだけで危険なのがわかる。受け止めようと手を伸ばしかけた瞬間、昔、弾き返した反動でカティアの腕を折ってしまったあの失敗がよぎり、慌てて引っ込めた。
そうだった……激怒カティアは本当に危険だってことを思い出した。避ければ避けるほど向きになって永遠に追いかけてくる。観念して一度だけ攻撃を受けてみたこともあったが——普通にざっくり斬られて死にかけた。
今も本気でヤバい。あの時と同じ軌道で、迷いがない……!
「ちょっ、ま、待て、カティア!」
「待たない!」
「うわっ! 本気で斬りに来てるだろ!」
「当たり前でしょ! お兄ちゃん強いんだから、本気で斬りに行くに決まってるでしょ!」
「やめろ! 悪かった! 俺が悪かったから!」
「は?! だから何?!!」
「ごめん! ごめんって! 頼むから斬りかかってくるのやめろって!」
「やだ!! お兄ちゃんが今すぐ私より大きくならない限り許さない!!!」
「そんなの無理に決まってるだろー!」
「だったら、一生許さない!!!」
斬る、逃げる、斬る、逃げる。息つく暇もない。涙と怒りの斬撃が雨みたいに降ってくる。
……あ、終わったかもしれん。マジで、骨が見えるまで切り刻まれる……。




