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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
19/26

第19話:身勝手な精霊と欠けた記憶

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 全てが終わり、静まり返った空間で、俺は瓦礫を押しのけた。その重みが周囲に響き、広がる静寂を一層際立たせた。


「お兄ちゃん……!」


 カティアの声がした。どうやらちゃんと無事だったらしい。勢いよく瓦礫をどけた拍子に、俺の体に一部が当たって、痛みがじんわり広がる。


「いてて。カティア、無事か?」

「お兄ちゃん! 良かった!」

「ここ、どこだ? さっきいた場所は最下層だよな……」


 辺りを見渡すと、広大な空間がどこまでも続いていた。黒く高くそびえる天井が重くのしかかり、四方から漂う不穏な魔力が肌を刺すように感じる。壁際や柱の影、石の裂け目からも、その淀んだ魔力が静かに波打っていた。


“居るね。くすくす”

“いっぱいいっぱい居るね。くすくす”

“くすくす”


 カティアが震える声で視線を上げ、恐る恐る中央を指さした。


「……多分、ここが本当の最下層──ボス部屋なんだと思う……」


 そこには、巨大なアーマーゴーレムが無言で立っていた。


「え……」


 嘘だろ……、あんな大きなアーマーゴーレム……、誰がどうやって作ったんだよ! 超いいな!!

 いや待てよ? ダンジョン内なんだから、人が作ったとは限らないよな……。でも、あれって……俺にも作れないかな……、後でスヴェじいさんに聞いてみるか……。

 迂闊にも、心が少し踊ってしまっていたその時、奥からイヴァンの声が響いた。


「カティア嬢! 無事か?!」


 『蒼銀の翼』の連中が次々と現れ、斥候が叫んだ。


「やばいぞイヴァン! すぐに戦闘態勢だ! モンスターに囲まれてる!!」


 イヴァンが迷いなく声を張る。


「全員、ここにいるか?! 一箇所に集まれ!」


 その一喝と同時に、暗闇の奥からスケルトンやアンデッドアーマー兵がぞろぞろと現れた。

 ……まあ、判断の早さだけはリーダーっぽい。


“くすくす。いっぱい来た”

“来た、来た。くすくす”

“くすくす”

“こっち、こっち。くすくす”

“くすくす”


 ん? 気のせいか? いや……なんかこっちにいっぱい向かってきてる。違う、俺のところに向かってきてる! まるで磁力に引き寄せられるみたいに、次々と敵が迫ってくる。


「わ! なんで俺のところばっかり来るんだよ!! だ、大地の精ゼムリャよ、槍となりて、我が敵を穿て──《大地の槍》」


 叫びながら、素早く魔法を放って後ろに飛び退く。


“刺すよ〜”

“刺す、刺す”


 床が変化して鋭く突き上がると、次々とモンスターを突き刺していく──が、それでも迫り来るモンスターで周りが埋めつかされていく。


「お兄ちゃんっ!!」


 カティアが呼ぶ声が聞こえた気がしたが、それどころではない。なんなんだこれ! 異常じゃないか?!


“こっち、こっち。くすくす”

“おいで、おいで。くすくす”

“遊べるよ。くすくす”

“いっぱい、来て来て。くすくす”


 ちょ、ちょっと待て……。まさか……お前らが呼んでるのか!? そんな馬鹿な……精霊がモンスターに影響を与えるなんて、聞いたこともねぇぞ!


「バカ!お前ら、一体何やってくれてんだよ!?」


“くすくす。これでいっぱい遊べるね”

“いっぱい、遊べるね”

“遊べる遊べる”

“楽しいね、サーシャ。くすくす”

“くすくす”


 信じられねえ。こいつら、俺に魔法を使わせるためなら、こんなことまでするなんて……くそっ! こんな奴らだから、精霊なんて大嫌いなんだ。

 俺は精霊の思惑通り魔法を連発してモンスターを倒していく。だが、どれだけ倒しても次から次へと溢れ出てくる敵のせいで、カティアたちからどんどん離されていった。

 離れてきているとはいえ、まだ距離はそこまでない。剣がぶつかる音も、魔法の閃光も、誰かの叫び声もはっきり聞こえる。なのに俺はその場から一歩も動けない。元の場所に戻れないもどかしさが、苛立ちをさらに煽っていく。


「くそっ! カティアは無事なんだろうな! 何かあったら許さないからな!!」


“カティア、無事”

“カティア、怪我してない”

“大丈夫”

“大丈夫、大丈夫”


 ああ、イラつく。昔スヴェじいさんが“精霊は動物のように気まぐれだから信じすぎるな”って言ってたけど、信じすぎるどころじゃない、こいつらは本当に信じられない。こいつらに好かれてるからって、スヴェじいさんに言われて魔法使いになったけど、こんな奴らの力を借りないと戦えないとか、最悪だ! 魔法以外で戦えればどれだけ平和か……。

 魔法以外も習っておけば良かった……。魔法以外で……?

 ん? 俺って魔法以外は習ってなかったんだっけ……?

 あれ?俺って、剣を習ってなかったんだっけか? ……いや、習ってたよな……。カティアが剣を習ったのに、俺は剣を習わないとか変だよな……?

 そういえば、昔、じいさんたちに剣を何個も貰ったよな? あれ、どうしたんだっけ……? 特に、ボリスじいさんから貰った剣……、めちゃくちゃ気に入ってたんだけどな……。

 なんだろう……なんだろう……。全然記憶が無いな……。記憶のどこかが、まるで時間ごとスパッと切り取られたように欠けていて、何度思い出そうとしても、その部分だけが戻ってこない。

 剣を持ったことがあるような、そんなぼんやりとした感触を掴もうとして、俺は杖をぎゅっと握り締めた。だけど、その感覚はすぐに掻き消されて、違和感の波がまた静かに押し寄せてくる。何かがずれている、確かに何かが足りないような、言葉にはできない妙な空虚感。

 その感覚に飲み込まれそうになったとき、遠くでカティアの声がふと耳に届いた。耳を澄ませると、確かに聞こえた──


「いやぁぁ……もうやだぁぁ……お兄ちゃん助けてよぉ……!!」


 ええ……。あいつ泣いてるのかよ……。ちょっと引き気味になりつつも、これだけモンスターが溢れている状況じゃ、助けに行けるはずもない。


“カティア、泣いちゃった”

“泣いちゃったね”

“泣いてるね。くすくす”

“面白いね。くすくす”


「笑い事じゃねぇよ!」


 そもそもこうなったのは、お前ら精霊のせいだろうが!

 溢れ続けるモンスターに魔法を叩き込みながら、苛立ちが腹の底から煮えたぎる。助けにも行けず、状況も変えられず、ただ精霊に振り回されるしかない自分が、何よりムカついた。

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