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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
18/26

第18話:最下層大混戦

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 気づけば、俺たちは最下層に来ていた。ここは──もう攻略済みのボス部屋だ。


「やあ、カティア嬢」


 聞き覚えのある声がカティアを呼んだ。振り向けば、相変わらず派手な鎧を着込んだイヴァンが立っていた。その後ろには、『蒼銀の翼』のメンバーたちが、明らかに疲れ切った顔で並んでいる。


“ピカピカ、イヴァン”

“くたくた、イヴァン”

“へなへな、イヴァン”


 精霊たちがまた騒ぎ出す。こいつらは人間の区別がほぼできないから、『蒼銀の翼』のメンバー全員をイヴァン扱いだ。


「まさかこんな場所で会うなんて、運命を感じるよ」


 イヴァンが嘘くさい笑顔で言った途端、後ろのメンバー全員が同時に首を横に振った。


「……もう三日目です、リーダー」

「“ここに絶対『なかよし団』が来る”って張り込んでましたけど……」

「正直、帰って寝たいです……」

「もう乾パンしか残ってません……」


 三日……? ここで待ってたってことか……? 本当にバカなのか……いやバカだな。


「え? 可哀想……」


 カティアがぽつりと言った瞬間、空気が凍った。イヴァンがゆっくり振り返り、仲間たちを眺める。


“くすくす。イヴァン面白いね”

“くすくす。イヴァン楽しいね”


 精霊たちは楽しそうだが、『蒼銀の翼』の連中はビクッと固まった。背筋を伸ばし、息まで止めている。

 そんな仲間たちを背にして、イヴァンだけが靴音を響かせてこちらへ歩いてくる。コツ、コツ……その音がやけに大きく感じられた。

 ……こんなところにこいつがいるとは、まずい。


「……なんでお前がここにいんだよ」

「決まってるだろう。貴様が逃げ続けるからだ。ついに、俺自ら迎えに来た」

「迎えにって……いや、逃げてねぇし」

「ほう……」


 イヴァンが、小さく笑った。その瞬間──


“イヴァンと遊ぶ?”

“遊んじゃおう”

“遊ぼう、遊ぼう”


 遊ぶじゃねぇよ! 戦う気満々じゃねぇか!

 どう逃げるか考えていると、さっきの男たちが次々と部屋になだれ込んできて、場が一気にカオスになった。イヴァンが呆れた顔でそいつらを見る。


「なんだ君たちは。いくら簡単なダンジョンとはいえ、ここで騒ぐのは感心しないな。少しは常識というものを弁えてほしいものだ」

「イヴァン! お前こそ、どうせここで張ってたんだろ!」

「そうだ! 人のこと言えねーだろ!」

「なっ! お、俺がそんなことするわけないだろ!」


 ……すげえなこいつ。図星つかれたのに平然と嘘つくとか、ぶれないにもほどがある。後ろのメンバーは悟ったように黙り、目だけ死んでいる。


「なら、イヴァン、お前が引け!」

「そうだ! 俺がサーシャに勝ってカティアちゃんと──」

「ふざけるな! 最初にカティア嬢に求婚したのは俺だ! 引くわけないだろう! だったら……こうしよう。サーシャもお前らもまとめて、俺が相手になってやる!」

「何言ってやがる! お前は指咥えて見てろ! サーシャを倒すのは俺だ!!」


“サーシャ、バカにしてるよ”

“バカにしてるね”

“ムカつくね”

“ムカつくね。消しちゃう?”

“バカにしてるから、消しちゃう?”


 ……話がどんどんまずい方向に進んでる。おいおい、勘弁してくれよ。

 俺が逃げる隙を探す間もなく、男たちが焦ったように俺へ飛びかかってきた。


「ちょっと! お兄ちゃんに何すんのよ!」


 カティアが俺の前に飛び出す。その瞬間、イヴァンがニヤッと笑った。


「ははっ。妹の影に隠れてるなんて、恥ずかしくないのか? サーシャ」

「なっ! 隠れてるわけねーだろ!」


“このイヴァン、ムカつくね。焼いちゃう?”

“丸焦げにしちゃう?”

“消し炭にしちゃう?”


 くそ……。こっちはお前らを殺さないために魔法を抑えてんだよ。事情も知らずによくまあ好き勝手言えるな。


「……それとも、俺を相手にするのが怖いのか?」

「は?! 怖くねーし!!」


 ……もういい。ここまで我慢した俺が馬鹿だった。胸の奥がひどく静かになった。怒りじゃない。ただ、線をひとつ越えただけだ。精霊が暴れようが、人が死のうが、もう知らない。淡々と杖を持ち上げ、そのまま本気の詠唱に入る。


「炎の精オゴニよ、我が拳に灼熱の刃を刻め──」


“サーシャ本気だね。嬉しいね”

“楽しいね。燃やすよ”

“燃やすよ、燃やすよ”


「燃え上がれ、《紅蓮火弾》!」


 精霊の歓喜と共に魔法が炸裂し、空気が一気に焼けついた。


「な、なにそれ、威力やば……っ」


 そのとき──

 ぐらっ。


「……え?」


 鈍い音とともに床が崩れはじめる。

 ばきぃぃん!!


「きゃあっ!? ちょ、足元崩れてる!!」


 カティアが叫んだ直後、一気に床が抜けた。


「うそっ、ほんとに落ちるの!? やだ、やだってば〜〜!!」

「え、待って待って待って!? 俺、高いの苦手なんだけど──!!」


 心臓がバクバクして足元が崩れ、一気に宙に浮くような感覚に、慌てて体を支えようとするが、もう踏ん張る場所すらなかった。そんな状況でカティアが先に落ちていくのが目に入り、咄嗟に魔法を放った。


「風の精ヴェーテルよ! えーーっと! ああ──とにかくカティアを守れ!!」


“守るよ〜”

“守る〜”

“サーシャも守るよ〜”

“守る〜〜”


 風が俺とカティアの周りをふんわり包み込むように吹いた。だけど、カティアを守る風は雑で、そのままぼとっと落ちてしまった。

 小さな声が「いたっ!」と聞こえた直後、瓦礫がカティアに向かって落ちていくのが見えて、思わず叫んだ。


「あっ! バカ! ちゃんと守れっ!!」


 叫んだ瞬間、風が急に強くなって瓦礫を吹き飛ばした。

 ……その時、俺の頭上にも瓦礫が落ちてくるのに気づかなかった。やべっ!と思った直後、痛みはなく、どうやら大地の精霊ゼムリャが勝手に助けてくれたらしい。

 いつの間にか、土壁が俺の周りをすっぽり包んでいた。


“サーシャ、大丈夫?”

“大丈夫?”

“サーシャ、無事?”

“無事、怪我してない”


「カティアは?」


“カティア、無事”

“カティア、怪我してない”

“カティア、大丈夫”


「本当だろうな……」


 精霊たちの言葉は、どこか信用ならない。

 土壁が崩れ、守られていた空間の境界が破られた。すると、ひんやりとした、どす黒く濁った魔力の空気が侵食するように流れ込んできた。

 これまで出会ったモンスターとは比べものにならない──圧倒的な存在感が、そこにあった。


“居るよ”

“いっぱい居るよ”

“サーシャ、いっぱい遊べるよ。くすくす”

“遊べるね。くすくす”

“サーシャ、遊ぼう。くすくす”

“くすくす”

“くすくす”


 どこかただならぬ響きを含んだ囁きに、思わず耳を澄ませる。その不穏な空気に背筋がざわつき、妙な違和感が胸にひろがった。

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