第18話:最下層大混戦
本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。
気づけば、俺たちは最下層に来ていた。ここは──もう攻略済みのボス部屋だ。
「やあ、カティア嬢」
聞き覚えのある声がカティアを呼んだ。振り向けば、相変わらず派手な鎧を着込んだイヴァンが立っていた。その後ろには、『蒼銀の翼』のメンバーたちが、明らかに疲れ切った顔で並んでいる。
“ピカピカ、イヴァン”
“くたくた、イヴァン”
“へなへな、イヴァン”
精霊たちがまた騒ぎ出す。こいつらは人間の区別がほぼできないから、『蒼銀の翼』のメンバー全員をイヴァン扱いだ。
「まさかこんな場所で会うなんて、運命を感じるよ」
イヴァンが嘘くさい笑顔で言った途端、後ろのメンバー全員が同時に首を横に振った。
「……もう三日目です、リーダー」
「“ここに絶対『なかよし団』が来る”って張り込んでましたけど……」
「正直、帰って寝たいです……」
「もう乾パンしか残ってません……」
三日……? ここで待ってたってことか……? 本当にバカなのか……いやバカだな。
「え? 可哀想……」
カティアがぽつりと言った瞬間、空気が凍った。イヴァンがゆっくり振り返り、仲間たちを眺める。
“くすくす。イヴァン面白いね”
“くすくす。イヴァン楽しいね”
精霊たちは楽しそうだが、『蒼銀の翼』の連中はビクッと固まった。背筋を伸ばし、息まで止めている。
そんな仲間たちを背にして、イヴァンだけが靴音を響かせてこちらへ歩いてくる。コツ、コツ……その音がやけに大きく感じられた。
……こんなところにこいつがいるとは、まずい。
「……なんでお前がここにいんだよ」
「決まってるだろう。貴様が逃げ続けるからだ。ついに、俺自ら迎えに来た」
「迎えにって……いや、逃げてねぇし」
「ほう……」
イヴァンが、小さく笑った。その瞬間──
“イヴァンと遊ぶ?”
“遊んじゃおう”
“遊ぼう、遊ぼう”
遊ぶじゃねぇよ! 戦う気満々じゃねぇか!
どう逃げるか考えていると、さっきの男たちが次々と部屋になだれ込んできて、場が一気にカオスになった。イヴァンが呆れた顔でそいつらを見る。
「なんだ君たちは。いくら簡単なダンジョンとはいえ、ここで騒ぐのは感心しないな。少しは常識というものを弁えてほしいものだ」
「イヴァン! お前こそ、どうせここで張ってたんだろ!」
「そうだ! 人のこと言えねーだろ!」
「なっ! お、俺がそんなことするわけないだろ!」
……すげえなこいつ。図星つかれたのに平然と嘘つくとか、ぶれないにもほどがある。後ろのメンバーは悟ったように黙り、目だけ死んでいる。
「なら、イヴァン、お前が引け!」
「そうだ! 俺がサーシャに勝ってカティアちゃんと──」
「ふざけるな! 最初にカティア嬢に求婚したのは俺だ! 引くわけないだろう! だったら……こうしよう。サーシャもお前らもまとめて、俺が相手になってやる!」
「何言ってやがる! お前は指咥えて見てろ! サーシャを倒すのは俺だ!!」
“サーシャ、バカにしてるよ”
“バカにしてるね”
“ムカつくね”
“ムカつくね。消しちゃう?”
“バカにしてるから、消しちゃう?”
……話がどんどんまずい方向に進んでる。おいおい、勘弁してくれよ。
俺が逃げる隙を探す間もなく、男たちが焦ったように俺へ飛びかかってきた。
「ちょっと! お兄ちゃんに何すんのよ!」
カティアが俺の前に飛び出す。その瞬間、イヴァンがニヤッと笑った。
「ははっ。妹の影に隠れてるなんて、恥ずかしくないのか? サーシャ」
「なっ! 隠れてるわけねーだろ!」
“このイヴァン、ムカつくね。焼いちゃう?”
“丸焦げにしちゃう?”
“消し炭にしちゃう?”
くそ……。こっちはお前らを殺さないために魔法を抑えてんだよ。事情も知らずによくまあ好き勝手言えるな。
「……それとも、俺を相手にするのが怖いのか?」
「は?! 怖くねーし!!」
……もういい。ここまで我慢した俺が馬鹿だった。胸の奥がひどく静かになった。怒りじゃない。ただ、線をひとつ越えただけだ。精霊が暴れようが、人が死のうが、もう知らない。淡々と杖を持ち上げ、そのまま本気の詠唱に入る。
「炎の精オゴニよ、我が拳に灼熱の刃を刻め──」
“サーシャ本気だね。嬉しいね”
“楽しいね。燃やすよ”
“燃やすよ、燃やすよ”
「燃え上がれ、《紅蓮火弾》!」
精霊の歓喜と共に魔法が炸裂し、空気が一気に焼けついた。
「な、なにそれ、威力やば……っ」
そのとき──
ぐらっ。
「……え?」
鈍い音とともに床が崩れはじめる。
ばきぃぃん!!
「きゃあっ!? ちょ、足元崩れてる!!」
カティアが叫んだ直後、一気に床が抜けた。
「うそっ、ほんとに落ちるの!? やだ、やだってば〜〜!!」
「え、待って待って待って!? 俺、高いの苦手なんだけど──!!」
心臓がバクバクして足元が崩れ、一気に宙に浮くような感覚に、慌てて体を支えようとするが、もう踏ん張る場所すらなかった。そんな状況でカティアが先に落ちていくのが目に入り、咄嗟に魔法を放った。
「風の精ヴェーテルよ! えーーっと! ああ──とにかくカティアを守れ!!」
“守るよ〜”
“守る〜”
“サーシャも守るよ〜”
“守る〜〜”
風が俺とカティアの周りをふんわり包み込むように吹いた。だけど、カティアを守る風は雑で、そのままぼとっと落ちてしまった。
小さな声が「いたっ!」と聞こえた直後、瓦礫がカティアに向かって落ちていくのが見えて、思わず叫んだ。
「あっ! バカ! ちゃんと守れっ!!」
叫んだ瞬間、風が急に強くなって瓦礫を吹き飛ばした。
……その時、俺の頭上にも瓦礫が落ちてくるのに気づかなかった。やべっ!と思った直後、痛みはなく、どうやら大地の精霊ゼムリャが勝手に助けてくれたらしい。
いつの間にか、土壁が俺の周りをすっぽり包んでいた。
“サーシャ、大丈夫?”
“大丈夫?”
“サーシャ、無事?”
“無事、怪我してない”
「カティアは?」
“カティア、無事”
“カティア、怪我してない”
“カティア、大丈夫”
「本当だろうな……」
精霊たちの言葉は、どこか信用ならない。
土壁が崩れ、守られていた空間の境界が破られた。すると、ひんやりとした、どす黒く濁った魔力の空気が侵食するように流れ込んできた。
これまで出会ったモンスターとは比べものにならない──圧倒的な存在感が、そこにあった。
“居るよ”
“いっぱい居るよ”
“サーシャ、いっぱい遊べるよ。くすくす”
“遊べるね。くすくす”
“サーシャ、遊ぼう。くすくす”
“くすくす”
“くすくす”
どこかただならぬ響きを含んだ囁きに、思わず耳を澄ませる。その不穏な空気に背筋がざわつき、妙な違和感が胸にひろがった。




