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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
17/26

第17話:逃走と精霊の悪ふざけ

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 昨日買っておいたパンをかじる。いつも通りの味だけど、この瞬間は確かな幸せだ。こんな穏やかな時間が、今日一日続けばいいのに——と、心の奥で願いながら、だるい体を少し伸ばし、カティアへ視線を向ける。


「今日の依頼、どうする?」

「んー、今日はまったり行こうか。ほら、あのダンジョン。最近また人が入れるようになったって聞いたんだ」

「ああ、【暗穴の墳墓】か。モンスターも弱いし、落とし穴も直されたんだっけ?」

「うん、たぶん」


 まあ、ダンジョンならやたら勝負を挑んでくるバカどもを避けやすいし、ちょうどいい。しかも【暗穴の墳墓】は、昔は危険すぎて一部が封鎖されていたが、最近ボスが倒されて安全になったらしい。今日一日分の生活費くらい稼げれば十分だ。


「じゃ、行こう。ゆっくり探索して、のんびり帰って、昼寝でもするか」

「お昼寝って、子供じゃないんだから」


 カティアは肩をすくめて笑った。


 ダンジョンの入り口にたどり着き、俺たちはひんやりとした空気に包まれながら中へ足を踏み入れた。湿気が肌をくすぐり、辺りはまあまあ静かで、まあまあ寒い。

 しばらく進んでいると、精霊のテンションが微妙に高くなってきた。


“じめじめだね”

“ガタガタしてるね”

“探検しよ。くすくす”

“何か隠れてるかも。くすくす”


 でも先走ることもなく、魔法は普通に使えている。潜ってから今のところまだ誰にも遭遇していないのも助かる。


「んー、やっぱり古びてるね。モンスターは弱いけど……環境はイマイチ」

「でも今日、人少ないから快適かも。敵も少ないし」

「……お兄ちゃん、それ、ある意味フラグじゃない?」


 カティアの冗談と同時に、精霊が騒ぎ出した。


“来るよ、来るよ”

“サーシャを探してるよ”

“また敵だよ。くすくす”


 数人の魔力がすぐそこまで近づいてきている。あの安定した魔力の揺らぎ……ベテラン冒険者の気配だ。


「来る! 逃げるぞ!」

「え、は?」


 返事も待たずに走り出す。カティアが慌ててついてくる。振り返ると、背後からバカどもが迫ってきていた。


「サーシャ! 勝負だぁぁぁ!!」


 あー……こんなところまで来て、勝負とか、くだらないにもほどがある。


「お兄ちゃん、どうするの!?」

「決まってるだろ! 逃げるんだよ!! ──これでも喰らえ!」


 通路を駆け抜けながら杖を振り上げる。


「炎の精オゴニよ、我に力を──」


 詠唱を始めた瞬間──


“黒焦げにする。黒焦げ”

“消し炭にしよ〜”


 いやいや! しないから! なんで即殺そうとするんだよ!


「◎△$♪×¥○&%#っ! ──火えん、きゅっ……!!」

「え……?」


 足止めするつもりで放った火焔球は──ぽつん、と火花がひとつ。空中でしゅん、と消えた。


「なにそれ!!?」


 カティアが笑いながら叫ぶ。くそ。精霊が強い魔法に切り替えようとするから、慌てて押し戻したら詠唱がぐちゃっただけだった。結果が火花一個って……なんだよそれ。ほんと、こいつらは俺の言うことを聞かない。


「いや、ちょっと力が……!」と誤魔化しつつ、すぐさま次の魔法へ。


「風の精ヴェーテルよ、疾風の翼となり──」


“切り刻む?”

“八つ裂きにする? くすくす”

“あ、あれがいいんじゃない?”


 いやいやいやちょっと待て!! お前らどんだけ血の気多いんだよ!? 俺が使いたいのはそっちじゃねぇっての!!


「し、◆×%@◎……っ!」


 ピシィッ!!

 突風が巻き起こり、床に転がってた謎の骨が宙を舞い、後ろの男たちの顔面に直撃した。くそ! めちゃくちゃだ!


「うわっ!?」

「おい! なにすんだよ!!」

「ちょ、ちょっと待って! その骨どっから出て きたの!?」

「ち、違う! 今のはヴェーテルが勝手に……!」


 思わず本音が出る。精霊が完全に遊んでる。とにかく走る。カティアは泣き笑いしながら足をもつれさせている。


「ぶはっ!! ちょ、お兄ちゃん!!」


 それでも男たちは懲りずに追ってくる。カティアは笑いが止まらず、足取りはますますおぼつかなくなっていた。


「やばいって! お兄ちゃん、ほんとにちゃんと魔法使って!!」

「うるさいなぁ! 集中させろ!」


 どいつもこいつも好き勝手しやがって、マジで頭にくる!

 ふざける精霊に、勝負を挑んでくるクソ野郎ども、挙句の果てには笑い転げてるカティアまで──全員まとめて黙らせてやりたい! 怒りに任せて杖を乱暴に掲げ、感情のままに詠唱を始めた。


「雷の精グローz…よ、天の怒りを我に示せ◎×○¥っ…らいげき!」


 ……素で噛んだ。一瞬、自分でも呆然とした。


“噛んだね、くすくす”

“噛んじゃったね。くすくす”

“サーシャ可愛いね。くすくす”


「……今の、誰呼んだの?」

「……いや、グローザ……のつもりだったんだけど」

「ぶっはははははっ!!」


“グローザ呼んだ。くすくす”

“呼ばれてないよ。くすくす”

“くすくす”


 カティアは笑いが止まらず、よろよろとバランスを崩しながら必死についてくる。もう完全に走れてはいなかった。


「ぜ、絶対伝わってないってそれ!! 今の精霊さん、絶対“俺か?俺か?”って首かしげてたよ!!」


“俺か? 俺か? くすくす”

“グローザ、グローザ。くすくす”


「やかましいっ!! さっきの火花で調子狂ったんだよ!!」


 ──ああ、もう帰りたい。

 気持ちは折れてるのに、走るしかない。止まれば追いつかれるのはわかっているし……こんなくだらないことで一日が潰れるなんて、ほんとやってられない。

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