第17話:逃走と精霊の悪ふざけ
本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。
昨日買っておいたパンをかじる。いつも通りの味だけど、この瞬間は確かな幸せだ。こんな穏やかな時間が、今日一日続けばいいのに——と、心の奥で願いながら、だるい体を少し伸ばし、カティアへ視線を向ける。
「今日の依頼、どうする?」
「んー、今日はまったり行こうか。ほら、あのダンジョン。最近また人が入れるようになったって聞いたんだ」
「ああ、【暗穴の墳墓】か。モンスターも弱いし、落とし穴も直されたんだっけ?」
「うん、たぶん」
まあ、ダンジョンならやたら勝負を挑んでくるバカどもを避けやすいし、ちょうどいい。しかも【暗穴の墳墓】は、昔は危険すぎて一部が封鎖されていたが、最近ボスが倒されて安全になったらしい。今日一日分の生活費くらい稼げれば十分だ。
「じゃ、行こう。ゆっくり探索して、のんびり帰って、昼寝でもするか」
「お昼寝って、子供じゃないんだから」
カティアは肩をすくめて笑った。
ダンジョンの入り口にたどり着き、俺たちはひんやりとした空気に包まれながら中へ足を踏み入れた。湿気が肌をくすぐり、辺りはまあまあ静かで、まあまあ寒い。
しばらく進んでいると、精霊のテンションが微妙に高くなってきた。
“じめじめだね”
“ガタガタしてるね”
“探検しよ。くすくす”
“何か隠れてるかも。くすくす”
でも先走ることもなく、魔法は普通に使えている。潜ってから今のところまだ誰にも遭遇していないのも助かる。
「んー、やっぱり古びてるね。モンスターは弱いけど……環境はイマイチ」
「でも今日、人少ないから快適かも。敵も少ないし」
「……お兄ちゃん、それ、ある意味フラグじゃない?」
カティアの冗談と同時に、精霊が騒ぎ出した。
“来るよ、来るよ”
“サーシャを探してるよ”
“また敵だよ。くすくす”
数人の魔力がすぐそこまで近づいてきている。あの安定した魔力の揺らぎ……ベテラン冒険者の気配だ。
「来る! 逃げるぞ!」
「え、は?」
返事も待たずに走り出す。カティアが慌ててついてくる。振り返ると、背後からバカどもが迫ってきていた。
「サーシャ! 勝負だぁぁぁ!!」
あー……こんなところまで来て、勝負とか、くだらないにもほどがある。
「お兄ちゃん、どうするの!?」
「決まってるだろ! 逃げるんだよ!! ──これでも喰らえ!」
通路を駆け抜けながら杖を振り上げる。
「炎の精オゴニよ、我に力を──」
詠唱を始めた瞬間──
“黒焦げにする。黒焦げ”
“消し炭にしよ〜”
いやいや! しないから! なんで即殺そうとするんだよ!
「◎△$♪×¥○&%#っ! ──火えん、きゅっ……!!」
「え……?」
足止めするつもりで放った火焔球は──ぽつん、と火花がひとつ。空中でしゅん、と消えた。
「なにそれ!!?」
カティアが笑いながら叫ぶ。くそ。精霊が強い魔法に切り替えようとするから、慌てて押し戻したら詠唱がぐちゃっただけだった。結果が火花一個って……なんだよそれ。ほんと、こいつらは俺の言うことを聞かない。
「いや、ちょっと力が……!」と誤魔化しつつ、すぐさま次の魔法へ。
「風の精ヴェーテルよ、疾風の翼となり──」
“切り刻む?”
“八つ裂きにする? くすくす”
“あ、あれがいいんじゃない?”
いやいやいやちょっと待て!! お前らどんだけ血の気多いんだよ!? 俺が使いたいのはそっちじゃねぇっての!!
「し、◆×%@◎……っ!」
ピシィッ!!
突風が巻き起こり、床に転がってた謎の骨が宙を舞い、後ろの男たちの顔面に直撃した。くそ! めちゃくちゃだ!
「うわっ!?」
「おい! なにすんだよ!!」
「ちょ、ちょっと待って! その骨どっから出て きたの!?」
「ち、違う! 今のはヴェーテルが勝手に……!」
思わず本音が出る。精霊が完全に遊んでる。とにかく走る。カティアは泣き笑いしながら足をもつれさせている。
「ぶはっ!! ちょ、お兄ちゃん!!」
それでも男たちは懲りずに追ってくる。カティアは笑いが止まらず、足取りはますますおぼつかなくなっていた。
「やばいって! お兄ちゃん、ほんとにちゃんと魔法使って!!」
「うるさいなぁ! 集中させろ!」
どいつもこいつも好き勝手しやがって、マジで頭にくる!
ふざける精霊に、勝負を挑んでくるクソ野郎ども、挙句の果てには笑い転げてるカティアまで──全員まとめて黙らせてやりたい! 怒りに任せて杖を乱暴に掲げ、感情のままに詠唱を始めた。
「雷の精グローz…よ、天の怒りを我に示せ◎×○¥っ…らいげき!」
……素で噛んだ。一瞬、自分でも呆然とした。
“噛んだね、くすくす”
“噛んじゃったね。くすくす”
“サーシャ可愛いね。くすくす”
「……今の、誰呼んだの?」
「……いや、グローザ……のつもりだったんだけど」
「ぶっはははははっ!!」
“グローザ呼んだ。くすくす”
“呼ばれてないよ。くすくす”
“くすくす”
カティアは笑いが止まらず、よろよろとバランスを崩しながら必死についてくる。もう完全に走れてはいなかった。
「ぜ、絶対伝わってないってそれ!! 今の精霊さん、絶対“俺か?俺か?”って首かしげてたよ!!」
“俺か? 俺か? くすくす”
“グローザ、グローザ。くすくす”
「やかましいっ!! さっきの火花で調子狂ったんだよ!!」
──ああ、もう帰りたい。
気持ちは折れてるのに、走るしかない。止まれば追いつかれるのはわかっているし……こんなくだらないことで一日が潰れるなんて、ほんとやってられない。




