第16話:勝負と精霊の暴走
本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。
ギルドでイヴァンがカティアに求婚して以来、冗談みたいな勢いで、いろんな奴らに追い回されるようになった。
ある日。期間限定のパンを買って店を出た途端、見知らぬ冒険者が近づいてきた。
「どうやら、お前がこのパン屋を気に入ってるって話は本当だったようだな」
「おいサーシャ。イヴァンとまだ勝負してないんだろ? 俺と勝負しろ」
「おいおい、パン屋の情報は俺が手に入れたんだ、俺の勝負の方が先だ!」
ため息が勝手に漏れる。……おちおちパンも買えないのか、俺は。
“来たよ。サーシャの敵”
“また来たよ。敵。消しちゃう?”
精霊たちは、すでに物騒なことを囁いていた。そんな中、冒険者たちは自信満々に剣を抜いてきた。
「はぁ…、ちょっと待てよ。勝負って、まさか剣でか? 冗談だろ?」
「決まってるだろ。俺たちは魔法が使えないんだ。お前は好きに魔法を使えよ」
“消しちゃおう? 焼いちゃう?”
“切り刻んじゃう?”
“凍らせちゃお。”
“じゃあ、土に埋めちゃお。”
やめろやめろ。俺に剣を向けるから、精霊たちがどんどん好戦的になっていく。
……よし、逃げよう。とりあえず軽くつむじ風でも吹かせて──そう思って詠唱を始めた。
「風の精ヴェーテルよ──」
“はい、切り刻むよー”
ばか! 違う!! ただ名前呼んだだけで勝手に動くな!!
周囲の風の精霊たちが輝き始める。待て待て待て!!
「── #¥*@&っ!!」
焦って詠唱を噛み、同時に全力で裏路地へ駆け込んだ。
「はぁっ……くそ、今日もかよ……!」
もちろん、奴らは何も知らずに追ってくる。
「逃げんなチビ! 勝負しろ! 正々堂々!」
「こっちは求婚のためなんだよッ!」
「カティアちゃんと結婚するチャンスを、俺がもらうんだぞコラァ!」
「はぁ!? どこが正々堂々だよ!! 魔法使いに剣で勝負って、おかしいだろ!!」
そのときだった。
“カティアだよ”
“あ、カティアがいるよ”
“こっち見てるよ。くすくす”
“くすくす”
「あ、カティア。ちょうどいい所に……」
カティアが、場違いなのほほんとした様子で立っていた。おかげで精霊たちの注意が逸れる。
俺は素早くカティアの背後に回り込んだ。デカいから影がちょうどいい。
「え? あれ? お兄ちゃん?」
「闇の精トゥマーン、影よ、我を包め──《闇纏い》」
影がふわりと揺れ、カティアの影に溶け込むように闇が俺を包む。
冒険者たちが追いついたが、俺がいないことに混乱し、顔を見合わせた。
「……あれ? い、今ここにサーシャが来たよな?」
「カティアちゃんだけ? どこいった?」
俺は胸を撫で下ろしたはが、パンの袋がない。辺りを見回すと、カティアの足元に落ちていた。あっ、と思った瞬間、カティアが拾い上げた。
「お兄ちゃんはいないよ?」
三人は腑に落ちない顔のまま立ち去る。
「俺のパン……!」
「ほら、もう。ちゃんと拾っといたよ」
「返して」
すぐに取り返し、中身を確認する。買った時のままの形にほっとする。
「……つぶれてない……よかった……」
“パン、無事”
“サーシャの大好きなパン”
“どんな味?”
“食べて、食べて”
うるさい。お前らのせいで落としたんだよ。好き勝手言いやがって、呆れつつも腹が立つ。
また別の日。ギルド本部の掲示板の前で依頼票を見ていると、ここでも案の定バカどもがやって来た。
「よお、サーシャじゃねーか」
数人の男が俺の前に斜めに立ち塞がり、距離がやたら近い。なんなんだこの囲まれ方。
“また敵? 吹っ飛ばす?”
“ひっくり返しちゃう?”
いや、無視。こいつらは……そうだ、突然現れた壁だ。壁。
「なあ、お前に勝ったらカティアちゃんと結婚できるって噂、本当か?」
「俺と勝負してくれよ、前から狙ってたんだ」
「おいおい、俺だってずっと狙ってたんだ! 勝負は俺とだ!」
·····やっぱり壁は無理があったか。小さくため息が出る。
なんなんだよ毎回。本当に掲示板くらい見せてくれ。
「なんだ、ビビってんのかチビ」
「おいサーシャ、黙ってないで表に出ろよ」
無視していたら、とうとう壁際まで追い詰められた。あーもう、本当に嫌だ。全部あの愚妹のせいだと思うと腹立たしい。
そう思った瞬間、男たちの背後からどす黒い魔力が流れ込んできた。
“あわわ”
“あわわわ。怒ってるよ”
“怒ってるよ。くすくす”
魔力の方を見たら──黒いモヤの奥で、カティアの人を殺しそうなほど冷たい目だけが、男たちをじっと睨んでいた。
「──なにしてるのかな?」
その目に俺もビクッとした。男たちも振り返った瞬間、固まる。
「ひっ……!」
おいおい。その目と魔力、大丈夫か。こいつ、たまにこうなる。精霊が焦るレベルだ。怒らせちゃダメなやつ。
「いや、その……別にケンカとかじゃなくて……!」
「そうそう! 声掛けただけだよ! じゃあな、カティアちゃん!」
男たちは慌てて逃げていった。
カティアはぽつりと言う。
「……お兄ちゃんがナンパされてた」
はあ?! 呆れて頭を抱え、ため息で返す。
「どこをどう見たらそうなるんだよ……」
本当にこの妹の思考は理解できない。
また別の日。ダンジョンの奥でモンスターを倒していたら、精霊たちが騒ぎだした。
“来てるよ。来てるよ”
“見てよ。見て。魔力見て”
ん? 魔力に集中する。
「……来てる。三時方向、二人。動きが重い」
おお、魔力で探るのも案外使えるな。ダンジョンは人の魔力が浮くからわかりやすい。
「魔法使いなのに、何その斥候能力?」
「毎日追い回されてると、自然と反応が鋭くなるんだよ、人間って」
ちょっと格好つけて言ってみた。どうせこいつには細かい説明してもわからない。
そんな日々の中、俺は特にイヴァンにだけは見つからないよう、細心の注意を払っている。遠くで姿を見たら隠れ、裏道を使い、ギルド内では常に出口を意識し、食事中も必ず背中を壁につける。完全に、逃走体勢が癖になってしまった。
それなのに最近は──
「イヴァンが、サーシャを捕まえたやつに金を払うって言ってたらしいぞ」
「マジかよ、それってもう懸賞金じゃん!」
「愛の懸賞金だな、ははは!」
なんて噂まで飛び交っている。それを聞いたカティアが尋ねてきた。
「……お兄ちゃん。もし本当に懸賞金がかけられたらどうするの?」
「……この街を出て、逃げる」
イヴァンと勝負なんて絶対にしたくない。魔法を使おうとした瞬間、精霊たちの暴走が目に見えている。
そんな事態になる前に、全力で逃げる。……もう本当に、面倒事は勘弁だ。




