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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
16/26

第16話:勝負と精霊の暴走

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 ギルドでイヴァンがカティアに求婚して以来、冗談みたいな勢いで、いろんな奴らに追い回されるようになった。


 ある日。期間限定のパンを買って店を出た途端、見知らぬ冒険者が近づいてきた。


「どうやら、お前がこのパン屋を気に入ってるって話は本当だったようだな」

「おいサーシャ。イヴァンとまだ勝負してないんだろ? 俺と勝負しろ」

「おいおい、パン屋の情報は俺が手に入れたんだ、俺の勝負の方が先だ!」


 ため息が勝手に漏れる。……おちおちパンも買えないのか、俺は。


“来たよ。サーシャの敵”

“また来たよ。敵。消しちゃう?”


 精霊たちは、すでに物騒なことを囁いていた。そんな中、冒険者たちは自信満々に剣を抜いてきた。


「はぁ…、ちょっと待てよ。勝負って、まさか剣でか? 冗談だろ?」

「決まってるだろ。俺たちは魔法が使えないんだ。お前は好きに魔法を使えよ」


“消しちゃおう? 焼いちゃう?”

“切り刻んじゃう?”

“凍らせちゃお。”

“じゃあ、土に埋めちゃお。”


 やめろやめろ。俺に剣を向けるから、精霊たちがどんどん好戦的になっていく。

 ……よし、逃げよう。とりあえず軽くつむじ風でも吹かせて──そう思って詠唱を始めた。


「風の精ヴェーテルよ──」


“はい、切り刻むよー”


 ばか! 違う!! ただ名前呼んだだけで勝手に動くな!!

 周囲の風の精霊たちが輝き始める。待て待て待て!!


「── #¥*@&っ!!」


 焦って詠唱を噛み、同時に全力で裏路地へ駆け込んだ。


「はぁっ……くそ、今日もかよ……!」


 もちろん、奴らは何も知らずに追ってくる。


「逃げんなチビ! 勝負しろ! 正々堂々!」

「こっちは求婚のためなんだよッ!」

「カティアちゃんと結婚するチャンスを、俺がもらうんだぞコラァ!」

「はぁ!? どこが正々堂々だよ!! 魔法使いに剣で勝負って、おかしいだろ!!」


 そのときだった。


“カティアだよ”

“あ、カティアがいるよ”

“こっち見てるよ。くすくす”

“くすくす”


「あ、カティア。ちょうどいい所に……」


 カティアが、場違いなのほほんとした様子で立っていた。おかげで精霊たちの注意が逸れる。

 俺は素早くカティアの背後に回り込んだ。デカいから影がちょうどいい。


「え? あれ? お兄ちゃん?」

「闇の精トゥマーン、影よ、我を包め──《闇纏い》」


 影がふわりと揺れ、カティアの影に溶け込むように闇が俺を包む。

 冒険者たちが追いついたが、俺がいないことに混乱し、顔を見合わせた。


「……あれ? い、今ここにサーシャが来たよな?」

「カティアちゃんだけ? どこいった?」


 俺は胸を撫で下ろしたはが、パンの袋がない。辺りを見回すと、カティアの足元に落ちていた。あっ、と思った瞬間、カティアが拾い上げた。


「お兄ちゃんはいないよ?」


 三人は腑に落ちない顔のまま立ち去る。


「俺のパン……!」

「ほら、もう。ちゃんと拾っといたよ」

「返して」


 すぐに取り返し、中身を確認する。買った時のままの形にほっとする。


「……つぶれてない……よかった……」


“パン、無事”

“サーシャの大好きなパン”

“どんな味?”

“食べて、食べて”


 うるさい。お前らのせいで落としたんだよ。好き勝手言いやがって、呆れつつも腹が立つ。


 また別の日。ギルド本部の掲示板の前で依頼票を見ていると、ここでも案の定バカどもがやって来た。


「よお、サーシャじゃねーか」


 数人の男が俺の前に斜めに立ち塞がり、距離がやたら近い。なんなんだこの囲まれ方。


“また敵? 吹っ飛ばす?”

“ひっくり返しちゃう?”


 いや、無視。こいつらは……そうだ、突然現れた壁だ。壁。


「なあ、お前に勝ったらカティアちゃんと結婚できるって噂、本当か?」

「俺と勝負してくれよ、前から狙ってたんだ」

「おいおい、俺だってずっと狙ってたんだ! 勝負は俺とだ!」


 ·····やっぱり壁は無理があったか。小さくため息が出る。

なんなんだよ毎回。本当に掲示板くらい見せてくれ。


「なんだ、ビビってんのかチビ」

「おいサーシャ、黙ってないで表に出ろよ」


 無視していたら、とうとう壁際まで追い詰められた。あーもう、本当に嫌だ。全部あの愚妹のせいだと思うと腹立たしい。

 そう思った瞬間、男たちの背後からどす黒い魔力が流れ込んできた。


“あわわ”

“あわわわ。怒ってるよ”

“怒ってるよ。くすくす”


 魔力の方を見たら──黒いモヤの奥で、カティアの人を殺しそうなほど冷たい目だけが、男たちをじっと睨んでいた。


「──なにしてるのかな?」


 その目に俺もビクッとした。男たちも振り返った瞬間、固まる。


「ひっ……!」


 おいおい。その目と魔力、大丈夫か。こいつ、たまにこうなる。精霊が焦るレベルだ。怒らせちゃダメなやつ。


「いや、その……別にケンカとかじゃなくて……!」

「そうそう! 声掛けただけだよ! じゃあな、カティアちゃん!」


 男たちは慌てて逃げていった。

 カティアはぽつりと言う。


「……お兄ちゃんがナンパされてた」


 はあ?! 呆れて頭を抱え、ため息で返す。


「どこをどう見たらそうなるんだよ……」


 本当にこの妹の思考は理解できない。


 また別の日。ダンジョンの奥でモンスターを倒していたら、精霊たちが騒ぎだした。


“来てるよ。来てるよ”

“見てよ。見て。魔力見て”


 ん? 魔力に集中する。


「……来てる。三時方向、二人。動きが重い」


 おお、魔力で探るのも案外使えるな。ダンジョンは人の魔力が浮くからわかりやすい。


「魔法使いなのに、何その斥候能力?」

「毎日追い回されてると、自然と反応が鋭くなるんだよ、人間って」


 ちょっと格好つけて言ってみた。どうせこいつには細かい説明してもわからない。


 そんな日々の中、俺は特にイヴァンにだけは見つからないよう、細心の注意を払っている。遠くで姿を見たら隠れ、裏道を使い、ギルド内では常に出口を意識し、食事中も必ず背中を壁につける。完全に、逃走体勢が癖になってしまった。

 それなのに最近は──


「イヴァンが、サーシャを捕まえたやつに金を払うって言ってたらしいぞ」

「マジかよ、それってもう懸賞金じゃん!」

「愛の懸賞金だな、ははは!」


 なんて噂まで飛び交っている。それを聞いたカティアが尋ねてきた。


「……お兄ちゃん。もし本当に懸賞金がかけられたらどうするの?」

「……この街を出て、逃げる」


 イヴァンと勝負なんて絶対にしたくない。魔法を使おうとした瞬間、精霊たちの暴走が目に見えている。

 そんな事態になる前に、全力で逃げる。……もう本当に、面倒事は勘弁だ。

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