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私の可愛いお兄ちゃん  作者: みてりつき
《サーシャside》
15/26

第15話:波乱の予感

本作は自分の考えた世界観やキャラクターをもとに、小説の文体化をChatGPTにサポートしてもらいました。物語そのものはすべて自分の手で作っています。

 今日も掲示板の前は、いつも通り人で溢れている。図体ばかり無駄にデカい連中が壁のように陣取っていて、邪魔で仕方ない。そのうえ、妹のカティアまで背が高くて、圧迫感が半端ない。そんな状況に辟易しながら、貼り紙に目を向けた。


「……また見られてるよ、お兄ちゃん」


 それに合わせて、いつもの煩い声。


“くすくす、見られてるよ”

“くすくす、見られてるね”


 精霊どもまで揃って言ってくる。


「ああ? 依頼探してる人たちだし、気にしなくていいんじゃない?」


 今更何がそんなに気になるんだか分からないが、いちいち気にするカティアに適当な返事を返す。すると背後から声が飛んできた。


「カティアちゃん、うちのパーティに来ないか?」


 振り返ると、革鎧に派手な羽飾りをつけた男が仲間を連れてニヤついていた。


“カティアもてもてだね”

“もてもて〜”


 出たよ、これ。兄の存在を完全に無視して、下心丸出しでカティアを勧誘してくるタイプ。しかもカティアは、こんな奴らにも愛想良く笑う。


「ありがとう。でも、お兄ちゃんと組んでるから──もし本当に一緒にやりたいなら、『なかよし団』に入ればいいよ♪」

「いや、『なかよし団』はちょっと……」


“『なかよし団』嫌だって〜”


 男は引きつった笑いを浮かべて下がった。


“『なかよし団』良いのにね?”

“良いのにね?”

“ね〜”


 ああもう、煩い精霊ども。ため息がまたひとつ。


「……『なかよし団』って時点で、誰も来ないだろ……」

「え? いいじゃんこの名前! 私たち仲良しだし、団だし! すっごく気に入ってるんだから!!」


 やたら力説してくる妹に、思わず舌打ちが出る。

 精霊まで気に入っている、このふざけたパーティ名。良いと思ったことなんて一度もない。カティアの自由奔放さに、結局いつも振り回される。

 それに、こいつは何も分かっていない。ここにいる連中も、誰ひとり分かっちゃいない。

カティアは生まれつき大量に持っている魔力をだだ漏れさせている。しかも、その魔力には無駄に明るい性格が影響していて、当てられた者は気分が良くなり、気づけばカティアに惹かれてしまう。いわゆる魅了みたいなものだ。

 そのうえ見た目も良いらしいし、愛想まで振りまくから、変な奴らが寄ってくる。そのたびに俺まで巻き込まれて迷惑を被るってことを、こいつは本当に分かってない。

 そんなことを考えていたら、カティアがじっと俺を見つめて口を開いた。


「……お兄ちゃん、もうちょっとだけ背、伸びたほうがいいよ」


“くすくす”

“くすくす”


「うるさいなあ、俺だって成長期なんだから──」

「成長期って、もうそんな年齢じゃないでしょ」


 ……その時だった。


「カティア嬢!」


 ギルドの空気を切り裂くような声。現れたのは『蒼銀の翼』のリーダー、イヴァン。高身長で、魔力による防御効果を強化する宝石を散りばめた派手な鎧を纏った、いけすかない男だ。


「やあ、元気そうだな。最近の冒険はどうだ?」


“来たよピカピカ”

“ピカピカイヴァン。くすくす”


 イヴァンは軽い世間話みたいな調子で、胡散臭い笑顔を向けてくる。


「元気ですよ。お兄ちゃんと一緒に頑張ってます」


 カティアが、要らない笑顔を返した。

 イヴァンはこうしてちょくちょく話しかけてくる。カティアに惹かれているように見えるが、カティアの魔力がまったく効いていないのだ。


“イヴァン、カティアの魔力効かないねぇ”

“凄いねぇ”


 精霊も同じことを言っている。魔力耐性が高いのだろう。そのくせカティアに絡んでくるから面倒で仕方がない。早くどっか行け。

 ふとカティアを見ると、なぜか俺にニヤリと笑ってきた。は?なんで笑ってんだこいつ。


「ふむ、なるほど。楽しそうで何よりだ」


 イヴァンはカティアに微笑みながら、俺を見下す。こいつ、身長差をいいことに完全に威圧してくる。むかつく。


“イヴァン、サーシャ馬鹿にしてる”

“いじめちゃう?”

“サーシャ、いじめちゃおう”


 いやいや、いじめんて! こいつはどう見ても、カティアよりも強い。本当に勘弁してくれ。

 そう思った瞬間──


「しかし君の実力、『なかよし団』──いや、サーシャには勿体ないと思っている。

だから我がパーティに来る気はないか? そして──」


 イヴァンは片膝をつき、カティアの手を取った。


「叶うことなら……俺の妻になってくれ!」


“求婚だ”

“求婚だね”

“カティアの番になるの?”


「ちょっと待て! 何言ってるんだ、結婚とかありえないだろ!」


 カティアだけでも振り回されてるのに、これ以上厄介事が増えたら本気でやってられん!


「……ごめんなさい、嬉しいけど──」


 カティアは一度言葉を飲み込み、困り笑いを浮かべた。


「お兄ちゃんより強い人としか、結婚しないって決めてるの」


 その瞬間、ギルドが静まった。

 ……は? いま何て言った?

 “……え? サーシャより強ければチャンスあるの?”そんな空気が変な方向に伝染していくのが分かる。顔が引きつる。


「……は、はああああっ???」


 素で裏返った声が出た。イヴァンは驚いたあと、ニヤリと笑う。


「はははははっ!! サーシャより強いか……面白いことを言うんだなカティア嬢。それは俺の妻になるって承諾と受け取っていいのかな?」


“こいつムカつくね”

“みんなムカつくね。サーシャを馬鹿にしてるね”

“消しちゃうか?”

“全部消しちゃおうか……”


 やばい。本当にやばい。ここにいたら色んな意味で終わる。そっと出口へ向かった。誰も俺を見てない今がチャンスだ。


「あは。それはお兄ちゃんに勝ってからの話ですね」


 愚妹がまた余計なこと言ってるが無視だ。イヴァンが既に勝ち誇ったように口元を吊り上げているのも無視無視。


「……ああ、なるほど、なるほど。ならば──勝負だ、サーシャ!」


 イヴァンがビシッと指を突き出して決めポーズをとった。ギルドの視線が一斉にそちらに向く。

 けれど、そこにはもう俺はいない。俺が立っていた場所だけが、ぽっかりと空いている。


「……あれ? いない?」


 ギルド中の冒険者たちが一斉に俺の姿を探し始めた。

 上手く気配を消して立ち去ったのに、カティアがバッとこちらを振り返る。なんでこういう時だけ見つけるのが早いんだ。カティアに連動して、全員が食い入るような目でこっちを見る。特にイヴァンの視線が怖い。


“許せないね”

“みんなサーシャの敵?”

“消しちゃおう”

“全部消しちゃおう”


 やばい、精霊が本気で怒り始めた。焦って手を振る。


「む、無理!!!」


 叫びながら全力疾走でギルドを飛び出した。精霊が騒ぐ。さっき俺がバカにされたのが気に食わないらしく、“消す消す”と物騒なことを言っている。


「あーー! 煩い! 煩い!! 消さない! 消さない!! 消さなくて良いんだよっ!! いちいち人族の言動に反応すんなっ!!」


 うるさい精霊たちに怒鳴る。ほんとに、どいつもこいつも俺を振り回しやがる。もう、いい加減にしてくれ。

 ……そう思っていたのに。

 その日から、俺のところにはイヴァンだけじゃなく、次々と冒険者たちが勝負を挑んでくるようになった。

 その度に精霊が騒ぐ。本当に地獄でしかなかった。

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