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第二十話「迷宮胎動 四」

インフルでした。申し訳ない。

「それは参ったね」

「幼体だとしてもまずいよなタラスクって」



オベロンの口から放たれた情報にジャンヌは驚きシノンとジオは頭を抱える。


ダンジョンとの融合、卵の孵化の原理については後で聞くとして、現状を整理しよう。

妖精族も攻略はしたい。でも勝てるかわからないタラスクを生まれさせたくないから攻略できない。



「生まれた瞬間にタラスクを倒せないんですか?」

「随分簡単に言ってくれるな。

 ダンジョンボスを倒してからさらにもう一体なんて言ってる奴がいるか」

「う…」



確かに、オベロンの言っていることは最もだ。

俺はダンジョンを知らない。想定が甘いのは事実だ。



「どうしたって2連戦になるのか」

「そう仕掛けられている以上どうにもできない」



いやできるはずだ。どうにかして分断できれば十分勝機が生まれる。

ダンジョンの知識を並べろ。解釈を懲り固めるな。

何も知らないからこそ新たな視点で見れるものがある。

…そうだ。


何かを閃いたシノンは再びオベロンに問いかけた。



「ダンジョンブレイクでボスは外に出てきますか?」

「ああ、出てくる」

「それだ…」

「シノン?」

「ダンジョンブレイクを起こすんですよ!」

「は?」



高々とぶっ飛んだことを言い出したシノンに全員の口が塞がらなくなる。

誰も理解できていないことを察し、急いでシノンが訂正を挟む。



「つまり、ダンジョンブレイクが起こし魔物とボスを外に出しダンジョンの内部をタラスクのみにするんです。

 そしてタラスク討伐のパーティと外で待機している冒険者で各個撃破!どうです?」

「かなりいいと思うけど、シノンそれには一つ見落としがある」

「見落とし?」

「どうやってダンジョンブレイクのタイミングを知るんだい?」

「あ」



忘れてた。結界がどれくらいで壊れるかなんてわかる奴いない。

それこそ結界が物質なら俺の生跡でどうに解析できるかもってのに、どの情報が見えるかは知らないけど。


シノンが再び頭を悩ませ始めた時、オベロンが軽々しく言い放つ。



「いや可能だ」

「「え?」」

「できるんですか?」

「タイミングがわかる訳ではないがな」

「じゃあどうやって…?」



タイミングが知りたいって話だったよな?

何をどうするつもりなんだ?



「簡単だ。こちらも結界を張る。

 僕の魔力ならある程度の長い時間持続する。溢れた魔物も一日程度は」

「ちょ、ちょっと待ってください!」



勝手に話しを淡々と進めるオベロンをシノンは急いで止める。



「まさか…耐久するつもりですか?」

「どういうことですか?」

「つまりねジャンヌさん、王様は自分の結界で冒険者が来るまでの時間稼ぎをするって言っているんだよ」

「それって…」

「おっと何も言っちゃいけないこれは王様が考えた最強の策だよ」



なんだその「僕の考えた最強のドラゴン」みたいなの。

まぁ確かにややこしい手を幾つも講じるよりは簡単かつ効率のいい策を使うべきではあるが、これはあまりにもパワープレイ過ぎだ。



「おい思考を辞めた訳ではないぞ。

 そもそもの策がおかしいのだ。これくらいが丁度いいだろう?」

「それって思考停sムグッ!?」

「ジャンヌさんストップですよストップ!」



ジャンヌの言葉にオベロンの機嫌を損ねかけたことで漏れた覇気を即座に感じ取ったシノンがすぐさま彼女の口を塞ぐ。

むぐむぐと塞がれた口を動かすジャンヌだが直ぐにオベロンに気付き口を閉じた。



「ふん、僕の寛大さに感謝することだな。

 生跡師(メイガス)この巻物をギルドの奴らに渡すがいい」



オベロンはその場で紙を作り出し、ペンでスラスラと書き終えた巻物をジオへ投げる。

ジャンヌの無礼に何もないことに安堵しながらシノンはジャンヌへ投げられた巻物の中身を確認する。

内容にはここで話した記録と決定したことが丁寧にまとめられていた。


今の一瞬でこれ全部書いたのか!?

もしかして思いの外頭良かったりする?



「では直ぐにでもあの浮遊都市に戻るがいい。と言いたいが、客人を直ぐに帰らせるほど僕も落ちぶれてはいない。

 今日は止まっていけこの宮殿には客室がある」

「ここに泊まっていいんですか」

「部屋は少ない。全員同じ部屋だぞ小娘」

「だ、大丈夫です!」



この宮殿の客室か、かなり豪華なんだろうな。

野営しかしてなかったからご褒美だな。同室ってのもジャンヌさんがいいならいっか。



「じゃあ一回部屋に向かうか?」

「いやシノン、僕は少し宮殿を見て回りたい気分なんだけど…」



そう言ってジオは合わせてくれと願うようにシノンへウィンクを飛ばす。

シノンはウィンクの意図を横目で受け取り踵を返してジャンヌの背を押す。



「じゃあこっちは部屋に荷物おいてから観光でも~」

「部屋はそこを左だぞ」

「どうも王様、ささジャンヌさん行きましょう」

「ジオさん、建物好きなんですか?」

「そんなとこです」



ジオの意図をわかっていないジャンヌの背中を押しながらシノンは玉座の間を後にする。

二人が完全に見えなくなったことを確認し、ジオは玉座に座るオベロンに視線を移し手を広げた。



「では話しましょうか幼き妖精王様」

「妖精族の中ではな。薄っぺらな生跡師」



ーーー



「さて、どこに行きましょうか?」

「私はお店を回りたいです」

「じゃあそこらの建物を見て回りますか」

「はい!」



二人はジオと別れた後に客室に武器屋装備を置いてから宮殿を会談で下りながら観光のルートを大雑把に作る。

視線を落とせば多くの店が立ち並んでいる。ここは常若の森(コル・ナ・ノーグ)の中心地、ここに来ればこの森にある大抵のものは手に入る。

シノンたちは初めにアクセサリーの売っている店を見ることにした。

街や村では見たことのない多くのアクセサリーに目を輝かせる二人へ店主が声を掛ける。



「あんたら、冒険者か?」

「ええ、まぁそうですね」

「宮殿から降りて来たってことは王様と話したんだろ?

 …ダンジョンのことか?」

「…はい」



シノンが質問を認めると、店主は少し表情を暗くした。


やっぱり妖精族もダンジョンのことは心配してるんだな。

そりゃそうか。ミラーナの人々より近くに脅威が存在してるんだ。

いつ結界が壊れるかわからない状況に晒され続けてたんだから俺たちが来たことは興味を引くだろう。



「どうにか、してくれるのか?」

「どうにか…」

「します!」

「ジャンヌさん?」



シノンが縋るような言葉に答え切れずにいる中ジャンヌは迷わず言い放った。

曇りなき眼で店主を見詰めて言う彼女に、シノンは目を奪われた。ジャンヌの言葉に驚いていた店主も先程の暗い顔が嘘のように吹き出した。



「ふっははははは!そんなに言われちゃ信じなきゃな。

 久しぶりに笑わせて貰ったよ。どうだこの中の好きな物一つ持ってってくれ」

「いいんですか?」

「ああ、ここのみんなダンジョンが見つかってからずっと心配してたんだ。

 嘘でも、言ってくれて嬉しかったんだ」

「店主さん…それじゃあシノン君が選んでください」

「僕ですか!?」



そんな事頼まれても…俺オシャレとかのセンスは全くないし。

来てる服も家にあった物を持ってきただけだし装備も剣も…あれ今の俺貰い物で構成されてる?


これはまずいと感じたのかシノンは目を見開き全力でジャンヌに似合うアクセサリーを探す。

手にとってはあれも違うこれも違うと探していると一つのブレスレットを見つけた。

パールのような宝石を埋め込んだアンティークゴールドのブレスレット、シノンはそれを手に取って店主に渡した。



「それにするか?」

「はい、一番綺麗な気がしたので」

「綺麗ですねシノン君!」

「じゃあジャンヌさん、手を出してください」

「は、はい」



ジャンヌはシノンの頼み通り差し出された手に添えるように自分の左手を差し出す。

シノンがゆっくりとジャンヌの腕にブレスレットを通す。

ジャンヌは自分の腕に嵌められたブレスレットを角度を変えながら見つめて頬を緩めた。

そして大事に抱えるように左手を胸に抱いてシノンに言った。



「ありがとう!シノン君!」

「!」

「シノン君?」

「え、ああ、とても似合ってますよ」



シノンは一瞬戸惑った。それは今彼女の中に幼さをみたからだった。


今の、入れ替わってないのにどうして幼いジャンヌさんが見えたんだ?

一度気絶していないはずなのに。そもそも、症状だって確定していない。

本当に、二重人格なのか?



「次のお店に行きましょうジャンヌさん」

「ありがとなお二人とも」

「こちらこそ、またどこかで!」



ジャンヌは店主に別れを告げてシノンの跡に着いて行く。

次に二人が向かったのは小さな酒場、店名には「蜜葉の宿」と書かれていた。

入ってみようにも中には誰もいない、ただ店の前にメニューが置かれているだけだった。

シノンは恐る恐る中を覗いてみる。数個のテーブル席にカウンター窓から入る明るい日差しが店内を照らしている。

ジャンヌを連れてゆっくりと中に入って見渡してみる。



「誰かいますか?」

「誰かー」

「……」



二人がいくら呼んでも返事は帰ってこない。

仕方ないと諦めえてジャンヌを連れてシノンが店を出ようとした時カウンターの扉が開いた。



「おやお客さんかい?」

「「うわぁ!?」」



二人は突如した声に呼び止められ振り返る。

振り返るとカウンターには椅子に頬杖を着きこちらを見詰める女性がいた。

少し暗い緑色の髪は腰まで垂れ前髪は片目を隠すまで伸びている。髪を伸ばし続けていることでずぼらな印象を得るがそのスタイルはあまり肥満的ではなかった。

シノンは年齢のせいか気にしていなかったがジャンヌは彼女の胸に実ったそれと自分のそれを何度も見比べていた。

シノンと目が合った女性は妖艶な笑みを浮かべて口を開いた。



「ようこそ私の店へ、お客さんなか?」

「営業しているんですか?」

「してるよ。ほとんど客は来ないけどね」



声で探しながら魔力探知もしていたのに一切気配を感じなかった。

これが門番が言っていた自然との同化ってことなのか?このレベルで気付かれなくなるなら是非とも身に着けたいな。



「それで?食べてくのかい?」

「ではここで一番美味しい物を」

「はいよ。そこの席に座ってな」



店主の女性がカウンターの奥へ向かうのを見ながらシノンとジャンヌは示された席に向かい合う形で腰を下ろす。

カチャカチャと調理器具を出して店主は竈に火を着けた。



「このお店、いつもこんなにがらんとしてるんですか?」

「まぁね、営業が私の気分だから人気も常連も作りにくいんだよ」

「気分って…」



気分次第で開店するって、店としてどうなんだ?

客が来るまで表に出ないんだから来た人全員誰もいないと思って帰っていくだろうさ。



「あんたたち、ダンジョンを攻略しに来たのかい?」

「まぁそんなところです」

「今日は事前のお話と言いますか…」

「そうかい。じゃああんたらが…」

「どうかしました?」

「いやなにも、そうだ。

 うち…というか私たちは酒を飲まないから置いてないよ」

「そもそも飲めませんので」



妖精族は酒を飲まないって本当だったのか。

確かすぐに森がうるさくなるからだっけ?どういう意味なのかはよくわかんないけど。



「ダンジョンのこと、ここの人はどのくらい知ってるんですか?」

「タラスクのことまでは王様が話してくれたよ。

 あんたらはあの化け物とやり合うのかい?」

「そんな状況なら、やります」



シノンの言葉に背中を向けたまま店主はふっと口角を上げる。

二人はそれに気付かなかったが突然黙った店主の様子に首を傾げた。



「さぁできたよ」



店主が料理を完成させて皿に盛り付け机に運ぶ。

運ばれた料理を見たシノンとジャンヌはその見た目と香りに思わず喉が鳴った。



「どうぞ、()()()()()()()二皿だ」

「「おぉー!」」



二人の前に運ばれた「スプリングラム」と呼ばれた料理は妖精族の森で春に生まれる小型獣の肉に若葉と調味料を振り、香草で包んで熟成させてから花蜜と一緒に焼く多くのアレンジがある家庭料理だ。

熟成と香りづけを丁寧に行ったこの料理は多くの妖精族に人気がある。



「それじゃあいただきます」



いつものように手を組んで食事を始める。

机に置かれたナイフで肉を切ろうと当てると驚く程容易く切れた。

一口大に切った肉を二人はゆっくり口に運び頬張るとその味に目を見開いた。



「どうだい?」

「「おいしいです!」」

「それは良かった」



本当に美味しいぞ!肉は柔らかいし薫り高い。

それに花蜜が肉の味に不思議とマッチしている。



「こんなに美味しいならお客さんもきそうなのに…」

「お嬢さん、何も私はお金が欲しい訳じゃないの。

 ただ自由に気ままに過ごしたいの。だから少年」

「はい?」

「君を鍛えてあげる」

「…はい?」

「気ままに過ごすためにはダンジョンは邪魔ってこと」



それでなんで俺を鍛える流れになるんだ?

それにこの人がそんなに強いとも思えないし。



「私の強さがわからないかい?」

「ええ、まぁ」

「明日の朝にまたここにおいで」

「いやちょっと」

「さあ食べ終わったらお代をいただくよ」

「えぇ…」



自分の質問に答えてもらえず話を進められることに戸惑うながらシノンは促されるまま料金を支払う。

またシノンに奢られていることに申し訳なく感じるジャンヌを見ないようにしながらシノンは店の外にd出た。



「深いことは考えずにおいで」

「…わかりました」


俺明日ミラーナに戻らなきゃいけないのに…


帰り際、店の入り口に寄っかかりながらそういう彼女に頭を下げてから二人はその場を後にした。

その後も二人は武器屋や湖、広間など沢山の物を見て回った。



ーーー



すっかり時間は経って夕暮れの時、赤く染まった空を見ながら二人は宮殿へと戻っていった。

荷物を置いた部屋へ戻るとジオがベッドに座って待っていた。



「おかえり二人とも」

「ただいまジオ」

「ただいま帰りました」

「さっそくだけど話しいいかな?」

「ああ、問題ない」



ジオがオベロンから貰った髪をひらひらと動かしながら一つの丸机を全員のベッドの間に置く。

それを囲むようにそれぞれのベッドに腰を掛けて会議は始まった。



「まず、ミラーナに戻ることだけど僕の生跡ですぐに戻れるから君たちはここで待機」

「ほんとか!?よかった~」

「君そんなにここが気に入ったの?」

「シノン君、昼間に変な約束を取り付けられちゃって」

「なるほど」



まるでわかっていない返事をしてからジオは話しを続ける。



「そしてダンジョンの攻略に参加してもらう。君たちは王様に認められてる分呼べる冒険者の上限関係なしに了承してくれるだろう。

 どちらの部隊でも問題はないけど、僕としては外で溢れた魔物の対処をしてほしいね」

「ジオに従う」

「私もです」



タラスクと戦いたくないかと言われれば多分首を縦に3回ほど振る俺だが、さすがに死ぬかもしれない上に人数に限りがあるのに行くほど馬鹿じゃない。



「正直ダンジョンの魔物は君たちなら倒せるだろうけど、ボスはわからない。

 ビュフォンを一人で倒せた君ならとは思いたいけどそれでも心配だ」

「大丈夫だよ。他にも人はいる。

 それに俺は明日から鍛錬なんだ。ダンジョンの日までに強くなる」

「それは心強いね」

「私は…」

「ジャンヌさんは、自分の身を守ってください」



ジャンヌさんに戦力としての貢献を望んじゃいない。

元々問題ごとに首を突っ込んだのにそのまま連れまわしてる状態なんだ。

ここで帰りますとか言われても俺たちは何も言わないし言えない。



「じゃあ今日はそれだけ、明日の朝に僕がいなくても気にしないでね」

「いつでも気にしないぞ」

「うわひどい」

「じゃあ、おやすみ」

「おやすみ二人とも」

「おやすみなさいジオさん、シノン君」



話しが終わりみんなが自分のベッドに入る。机に置かれた蝋燭の火をジオが吹き消すと部屋は月明かりだけになり、静かに夜風が部屋を一蹴して外にでる。

魔力があるおかげで生半可な運動では疲労はしなくなったが脳の疲労は感じる。

シノンは今日の出来事を思い返し、それらを深く考えながら眠りに落ちる。

風の吹く音を聞きながらゆっくりと意識を沈めていく。ゆっくり、ゆっくりと…

そしてある線を越えた時シノンは瞼の外側に眩しさを感じた。部屋にあるはずのないその明るさに思わず目を開けた時シノンは光景に嫌な記憶を想起した。



「ここは…」

「また、会ったね」



稲穂が揺れ、夕暮れで時を止めた刹那の永遠が続く金色の世界、それはシノンがあの凄惨な日に見た夢の中の景色だった。

書きたい展開までタイピングが進まないよ~

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