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第十八話「迷宮胎動 二」

首痛いよー

受付嬢から任務を受注したシノンたち一行、彼らは今これからの行動について整理していた。

街は未だ不安と焦燥に駆られている。

勢いに任せてクエストとして受注してしまったが、今一度慎重に状況を考えなければならない。

シノンとジオは持ち前の頭を回転させ、状況をまとめ出し得る最適解を導き出し。

その横でジャンヌは情報量に潰れ頭から湯気を出す。


常若の森(コル・ナ・ノーグ)へ行くのは確定事項、王への謁見に加えてダンジョンの様子も見ておきたい。

ダンジョンブレイクがいつ起きるかわからない。急ぐべきなのは変わらないな。

何はともあれ



「ジャンヌさんの装備を買いに行こう」

「だね。まずはそこからだ」

「いいでしょうか?私の装備なのに…」



シノンとジオの提案にジャンヌはとても遠慮したような態度だった。

彼女の性格的に、他人に恩を多く作る事は気持ち良くない。それも金銭的な事なら尚更、そしてシノンはそれを既に理解している。



「いいですか?その服のままでいたら危険になるのはジャンヌさんですし、それが僕たちの危険にもつながります!

 っていうことで買いに行きますよ」

「そ、そう言うことなら…」



シノンは彼女の性格上自分だけへの施しはあまり良く思わないのは理解していたので全員のためになると説明した。

シノンに言い包められジャンヌはなんとか納得する。



「それじゃ行こうか案内するよ」

「よし頼んだ。行きましょうジャンヌさん」

「はい!」



ーーー



到着した武具やに入り、シノンたちは店の中に並べられた防具や武器を見て回る。

どれを見ても悪い品質の物はない安定性のある品々を見定める。



「結構あるね」

「僕の知る限りこの都市で一番なんじゃないかな?」

「よく知っていましたね」

「伊達に歳取ってないよ」



そんなこと言うまで歳取ってんのかこいつ?持っても30代くらいだろ。

でも、それにしてはジオのこの世界に対する知識量は多いんだよな。

ネットもないのによくここまで情報を仕入れたものだ。



「これなんてどうですか?」



あれも違うこれも違うと武具を探しているところにジャンヌが一つのセットを持って見せに来た。

持ってきた物はまぁまぁ防御面積の多い胴装備に肘と膝まである四肢の装備だった。


彼女の戦闘能力はわからないが戦闘向きではないのは大体わかる。

彼女の纏う魔力はいつでも緩やかだ。警戒心を纏った研ぎ澄まされた魔力ではない。

それならいっそ動きはある程度捨てて予期せぬ事態のために防御力を上げておく方が良いな。



「いいじゃないですか。僕はそれでいいと思います」

「ジャンヌさんが選んだなら僕も文句はないよ」

「ではこれにします!」

「じゃあ次は武器か…」

「武器はこれだね」

「おっと!」



防具が決まり次は武器だと探しに行こうとした時、既に探していたジオがシノンへ一本の槍を投げ渡した。

シノンは投げられた槍をキャッチするとその軽さに驚愕する。



「なんだこれ軽っ!?」

「いいでしょ?それに使われてる鉱物はとても軽くてね、女性に人気なんだ」

「じゃあピッタリってことかどうですかジャンヌさん」



シノンはジャンヌに槍を手渡し、握った感覚と重量を確かめるよう促した。

シノンから槍を受け取ったジャンヌは握ったり軽く二人して自分に合うかを試す。



「すごく扱いやすい…これにします!」

「じゃあ買いましょうか」



シノンはジャンヌから槍を返してもらい、防具と共に買いに出した。

支払いの金額はベルウィック銀貨13枚、安い買い物ではないが思いの外報酬金が多かったので別に痛いものではなかった。

そしてシノンたちは今は、店の外でジャンヌが防具の着用を待っている。

運のいいことに店の中に購入した防具をそのまま付けられる場所があったので使わせてもらっているという訳だ。

見せの壁に寄りかかりながら人の動きを見詰めてジオは呟く。



「ダンジョンか…ジャンヌさんといい君は色々持ってくるね」

「そりゃどうも」

「ジャンヌさんの件は保留かい?」

「今のところは何もないしな」



ミラーナへの道中では入れ替わりが起きなかった。

時間経過で切り替わる。もありそうだったけどここまで時間が経っているのに何も起きないなら消していいか。

不明点が多いのが難点だなほんと…



「ダンジョンは、何かある気がしたからだな」

「何か?」

「ただの勘」

「なんじゃそりゃ」



この予感は何なのか。ジャンヌさんの二重人格(仮)の解明に繋がるのか、それとも単に嫌な予感を感じ取っただけなのか。

ま、この勘が杞憂に終わってもダンジョン攻略はしたいしな。


二人の間に沈黙が流れて数秒、店の扉が開き防具を着け武器を握ったジャンヌさんが出てきた。

シノンが視線を移すとジャンヌが慣れない装いに少し恥ずかしそうにしていた。



「どう、ですか?」

「似合ってますよ。とても」



シノンはジャンヌの質問に軽々しく答えた。

その返答にジャンヌは安堵の笑みに顔を綻ばせた。



「よかったです!」

「」



やっぱり違うんだな。

こんな時、幼いジャンヌさんなら恥ずかしがってもっと顔を赤くするんだろう。

本当に細かな違い。でも何故か気づき易い。

今のジャンヌさんは確かに純粋ではある。しかしどこか大人びた余裕も感じる。

少女らしさと女性らしさの問題だ。



「それじゃあ向かいましょうか」

「そうだね」

「はい!」



ーーー



シノンたちがこれより向かうはミラーナより南東に馬車を使って数時間走った場所にある妖精族(エルフ)の森、常若の森…幻世暦の一つ前の現世暦(げんせいれき)に作られた妖精族が住む森であり、現代では珍しい精霊の住まう地とされている。

そこに住まう妖精族は自然の中で生きたことで魔力を扱う技術が人族とは異なった形で成長している。

歴史に名を遺す魔物タラスクとの封印戦では当時の妖精王が多大な功績を上げたことが世界に知られている。



「らしいけどこれってほんと?」

「なんでも僕に聞くね君」

「知ってそうだし実際物知りじゃん」



ガタガタと揺れる馬車に身を委ねながら都市で買った妖精族に関することが掛かれた本を読んだシノンはジオに聞いた。

シノンの無茶振りに少し文句を垂れるがすぐさまジオは答える。



「そこに書いてあるのは事実だよ。実際それは妖精族が書いた物だろうしね。

 まぁ色々アバウトに書いたらその書き方になるってのは十分理解できる」

「へーじゃあこれは実際あったことなのか」



手に持ったほんのページをぺらぺらと捲りながらシノンは適当なリアクションをする。




「あの都市を浮かせるほどの魔力を持つ魔物ってやっぱりつ強かったんですかね?」

「どうだろうね。歴史書に書かれている特徴は六本足に甲羅を背負った竜としかね」

「ほんと何度聞いても気持ち悪い外見だな」



俺が知ってるタラスクもそんなもんだ。

聖女マルタによって退治された竜なんだが、どうもこの世界じゃその強さは盛られてるらしい。

この本にも持っていないか疑う程の内容で書かれていた。


『魔獣竜タラスク、異形の体に異様の力全てがこの世の物とは思えない存在それがタラスク。

 咆哮が波を起こし、歩みが大地を揺らし、一撃が街を崩す。

 タラスクは、今も再誕の時を待ち望んでいる』


とのこと、読んだ内容をそのまま想像したらただの歩く災害だ。

現世暦ってのはそんな魔物ばっかいたのか?



「昔のことって長寿な種族に聞いたら知ってるのかな」

「確かにその手がありますね」

「いや無理だね」

「即答かよ」



シノンが名案とばかりに思い付きジャンヌまで賛同した案をジオは即答で否定した。



「君たち、何故暦が変化していくのかわかっているのかい?」

「いやなんにも」

「私もです…」

「世界規模の戦いが起きたことによる被害のせいで歴史の記録が難しくなった時に暦は変えられるんだ」

「そうだったんですね」



世界規模の戦い、前世でもあったが歴史の記録が難しくなり程の被害って比にならないだろう。

そこまでの戦争ってことは核以上の威力を引き出せる種族や人がいた可能性だってある。



「その戦争で多くの人が亡くなった。それは種族問わない話だ。

 当時を生きた者は少なく。この世界にいる幻世暦の生き残りは公表済みで両手で足りるか程度だよ」

「10人以下…」



ジオの説明に大げさとも言える程シノンは気分を落とした。


この広い世界にたった10人程度しかいないのか。絶対聞きたかったのに…

公表されているならどうにか会いに行くのもありなんじゃないか?



「行っておくけど、公表されているだけでどこにいるかは知らないよ」

「くそ!」

「当然でしょ」

「でも会って話したい~!!」



シノンはジオの方を激しく揺らしながら親にお菓子を買って貰おうとする子供のように駄々をこね始めた。

ジオはされるがままに揺らされながら涼しい顔で語り続けた。



「彼らは歴戦の強者、幸運の持ち主、悪の王である者たちだ。

 そして誰に何を聞いてもいい話は出てこないと思うよ」

「なんで」



シノンはジオの体を揺らす手を止める。



「世界を巻き込んだ戦争だ。

 誰もが自分の命の終わりを悟り、神に祈り、終わりを受け入れた。

 どこが渦中なんてない。世界の全てが渦の中心だったんだ。

 貴重な経験談として聞くなら後悔するのは君だ」

「…そうか。そうだよな」



俺の言葉は軽率だったのかもしれない。

ジオの俺を見詰める瞳にある熱が俺にそう教えてくる。

戦争の話なんて知るもんじゃない。知りたいなら誰の心も傷つけずに一人で知るべきだ。



「ま、今を生きる僕たちは今に集中しようじゃないか」

「そうですよシノン君!」

「そう、ですね」

「お客さんそろそろ着きますよ」



話しがちょうど一段落ついたところで御者が到着の知らせを伝えた。

その言葉を聞いた一行は馬車から顔を出し目に入る景色に息を呑んだ。



「でっかい森だ!」

「あんなに高い木初めて見ました!」

「壮観だねー!」



馬車から見える景色は一本数10mする木々が生え並ぶ巨大な森、その驚愕の広さはなんと122平米㎞に及ぶ。

話によればこの木々は初代妖精王の生跡によって作り出されたとかなんとか。

未だミラーナと森が結ばれていなかった頃、この森に無断で入った者は戻ってこれない…とはならず森に徘徊しているスプリガンという巨大な人型のゴーレムに案内されて外に出されるとか。


シノンたちは森の近くで馬車を下ろしてもらい御者に料金を払ってその場を後にした。

少し進み森の入り口、木が湾曲し繋げられ門の形になっている部分へ着くとそこには二人の門番らしき人が立っていた。



「貴様たち何者だ!観光の者ではないな!」

「何をしに来た!」



門へ近づいたシノンたちに門番は槍を向け警戒の態勢をとる。


先のとがった耳に特有の魔力の感じ、妖精族だな。やっぱりここが入口か。

武装した俺たちを警戒しているしここは脅威ではないことをアピールだ。


シノンは両手を上にあげ、その場から動かず十分に距離をとった状態で妖精族へ声を張って話した。



「僕たちはミラーナのギルドから依頼を受けてきました」

「我々は依頼など出していない!」

「ダンジョンの件と言えばわかりますか?」

「!?」



ダンジョンの一言に門番の一人が反応する。


今しっかり反応したな。妖精族の中でもダンジョンは周知の事実か。

妖精族としてもダンジョンの放置は良くないと理解しているはずだ。このまま通るのを許してもらおう。



「ギルドの依頼書もあります。話の停滞によるダンジョンへの対処の遅れを危惧しているのは双方同じでしょう!」

「では武器を外し、依頼書を見せてみろ!」



シノンは門番の言葉に従順に従い、腰に携えていた剣を門番の方へ投げて腰の小さなバッグに入れた依頼書の巻物を取り出し門番に見えるように広げた。



「あれは確かにギルドの印…」

「では」

「間違いないな」



依頼書をじっと見つめた門番はこそこそと話し納得した様子で再度シノンの方へ顔を向けた。



「手荒な検問申し訳ない。

 其方たちがギルドから手配された者だと確認できた。この門を通るといい」

「ありがとうございます」



シノンは話しが付いたことをジオたちに知らせて門まで向かった。

門の先からは片方の門番が案内をしてくれるというのでシノンたちは是非にと後を着いて行くことにした。



「「!」」

「おっ気付いたね」

「これは…?」



門を潜った瞬間に周囲の魔力ががらりと一変した。

とても優しく穏やかで温かい魔力、まるで陽だまりに寝転んでいるような感覚にシノンは包まれた。

新鮮な感覚に興味を示したシノンに門番が説明する。



「ここの魔力は外と比べて別物でしょう?」

「はい!なんだか気持ちいいです」

「この魔力はこの木々が持つものなんです。この木々はどれも自然にある木の何倍もの魔力を持っているため自然特有の魔力が満ちているんです」



初代妖精王によって作り出されたこの森の木々は魔力で作られたこともあり、他の木々とは保有する魔力量の桁が違う。

自然が生み出す魔力は通常多くの魔力と合わさり大気に溶け込むがこの森一帯は結界により植物の生成する魔力以外の侵入を極端に妨害している。

それにより自然特有の魔力が森一帯に満ちているのだ。



「この環境で鍛錬をすることで私たちは特有の魔力操作を身に着けるのです。

 このように」

「!?」

「すごい、自然と一体化している」



目の前にいるはずなのにまるで存在を感じない。

そうか、自然の魔力の中で生きているから自然と自分たちの魔力の性質や操作も自然の物に似ていくんだ。

だから他種族からは植物と同じ魔力に感じて生物として認識しずらくなる。



「すごい技術です!」

「素敵な力ですね!」

「はは、ありがとうございます。

 他のお二方はわかりませんが、あなたはきっとできると思いますよ?」



そう言って門番は意味深にシノンの方を見た。

当然シノンは何故自分にそこまで期待されるのか理解できていなかった。



「どうしてですか?」

「あなたにも流れているからですよ。

 同族の血が」

「………え?」




シノンお前、種族なんなんや…

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