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勇者編1 VS盗賊姫

「お初にお目に掛かります、私は『シアラ』第三皇女のベルドナス・フィーナ・シアラです」


 シエルにも負けないほどの美人がそう言いはなった。

 ここは『シアラ』という国の城にある王座の間、ここにいる理由を説明するには少しさかのぼる必要がある。

 幼馴染が急にいなくなった。メイドさんの説明によると、先に旅に出たらしい。まあ、あいつはよく途拍子のないことをするし、驚きはしないのだが、俺としては一緒に、せめて相談くらいはしてほしかった。あいつは小学まではいつも一緒にいたのに最近、というか中学からは少し俺から距離を取るようになった。いったい何故……あきらかにアレが原因だな。それはともかく、あいつがいなくなってから三日たって俺もシエルと一緒に旅に出たんだが、『シアラ』に着いたらシエルが挨拶して行った方がいいと言うのでよってみた。以上、説明終わり。


「すみませんが、貴方達に頼みがあります」


「はい、何でしょう?」


「最近、この付近で怪物(モンスター)が急発生しているのです。目途はたっているのですが、怪物(モンスター)の処理で兵をそちらに割いている余裕がないのです」


「それで私達に?」


「はい」


「待ってください姫様、秋水殿はこちらに来て間もないとのこと。大丈夫でしょうか」


 と後ろの老人。悔しいがその通りだ、俺はまだこの世界のことはまったく分からない。でも、


「それで困っている人がいるというなら、どんなに危険があろうとも俺は行きます」


「……分かりました。ですが、そう簡単に勇者様に死んでもらうわけにはいきません」


「ではいったいどうしろと?」


「力をみせていただきましょう」


 兵士とでも戦えばいいのか?


「では誰かを呼んできます」


「いえ、その必要はありません。私がやりましょう」


 え?


「姫様、いけません。そのようなことは」


「私が直接戦うのが一番よく分かるでしょう」


「そういう問題ではありません!」


「爺、これは命令です」


「……わかりました。ですが怪我などはしないようにしてください」


「分かっています」


 今、姫様が悪い笑みをしたのは気のせいだと思いたい。



「姫様、ですからそのような格好はいけません」


「ドレスで戦うわけにはいかないでしょう」


 姫様は今、こう、盗賊みたいな格好をしている。意外にも似合っているのは少し驚いた。


「さあ、やりますよ」


「あ、はいってうわ!」


 突然、ナイフを突き出してきた。


「よく避けましたね」


「って今のはちょっとってまた!」


 二本目のナイフ、こんどは死角から来た。えらく本格的だな、まるであいつみたいな攻撃をしてくる。


「本気を出さないと死にますよ」


 さっき言ったことと逆のこと言ってる!でも本当にまずいな。


「ではこっちからも行きますよ」


 そういって木刀を構える。ここに日本刀はなく、他の剣も合わないから、しかたなくあの時もらった木刀を日本刀のような形状に削った。真剣には劣るが、ちゃんと振れば切れる。挿絵(By みてみん)


「いざ勝負」





~~~~~~~~~~~~~~~




 ついに勇者との勝負までありつけた。木刀なんてなめた武器を使ってるが、さっさと本気を出させてやる。


「はあっ」


 生まれつき良かった反射神経を駆使してなんとかしているが、押されぎみだ。流石勇者なだけはあるな、だがこれなら、


「りゃっ」


「土よ、守れ、【土の盾(アースシールド)】」


 アタシの投げたナイフを勇者は魔術の盾で防ごうとするが、あのナイフには『貫通』の付術式が組み込まれているので意味はない。


「危なかった」


 盾を貫きはしたものの、ナイフは完全に避けられてしっまた。魔族ですら掠ったのに、アタシには劣るが凄まじい反射神経だ。しかし、


「あまいっ」


 スッ


「うっ」


 さっきのナイフがアタシの方に飛んで来て、勇者の右腕に掠った。


〝ナイフに糸でもつけといたらどう?回収も簡単になるし、適当に引いても敵に当たるかもよ〟


 あの後、槍女(正しくは男です)に教わった戦法。割と使えるし、やってみるもんだな。


「木刀なんて訓練でしか使えないような武器などで勝てるとでも思っているのですか?早く本気の武器で来ないと負けてしまいますよ」


「いえ、これが俺の剣ですから」


 あくまでとぼける気か、ならもう終わらせよう。


「風よ、飛ばし飛ばす飛ばせっ、【多量の遠投(スロウズ)】」


 魔術で飛んでゆく何十本ものナイフ。『貫通』により魔術では防げず、回避出来ないように配置されている。アタシが使える唯一の魔術であり、最強の技。

 これをくらえばいくら勇者といえど無事ですむはずはない。


「これで終わりです」


「まだだ!」


 そう言って勇者は、なんと木刀で自分に飛んでくるナイフを弾いた。


「このっ」


 糸を引いて追撃をあびせる。


「はっ」


「な、に」


 木刀で糸を切っただと! あんなもので切れるはずは……よく見たら形が少し変だな。いや、だがそれだけで切れるような脆い糸ではないし、一体何故?


〝武器ってのはさ、使い手しだいでどうにでもなるんだよ。例えばこの紙でも、……ほら〟


 あいつは確かそう言ってなんかのカードで怪物(モンスター)を切り裂いてたな。成程、あんな武器でもあの勇者が使えば……いや、あの武器は勇者が一番使い易い、いうなれば勇者にとって最強の武器。


「さきほど言ったことは訂正します。いい剣ですね」


「それは有難うございます」


 笑顔で答える勇者、あれ、カッコイイ……はっ、いけない、集中しないと。

 あの魔術はアタシが唯一使えると言うよりは、あれしか使わないと言う方が正しい。あれを使えば勝てる、いや、勝てるはずだったから、他の魔術を使う必要はなかたんだ。アタシがただ一つ、それだけを極めた最大の技が破られたということは、アタシの全て、つまりアタシ自身の完全敗北ということ。だが、


「諦めるわけにはいきません」


 戦いの中での諦めは死を意味する、あの魔族との戦闘で分からされたことだ。アタシはとても弱いと、いやになるほど思い知らされたあの戦い。

 でも、だからこそ、諦めるわけにはいかない。


「こっちだって」


 至近距離での戦闘、勇者の方が全体的に上回るが、そんなに力の差はない。普通に考えれば互いの持久力の勝負になるはずなのだが、すでに手はうってある。


「なっ!」


 動かなくなる勇者の右腕。槍女(だから男です)に作り方を教わった痺れ薬(有料)をナイフに塗っておいたのだが、あの時みたいにすぐには効かなかったようだ。

 だが、利き腕が使えなくなったとなると剣士の力は激減する。


「これで決めるっ」


 一足飛びからの突き、槍女(しつこいようだが男です)の見よう見まねだが、勢いは一番ある。今の勇者では防げまい。


「うりゃー」


「メンッ」


 パンッ


「あうっ」




~~~~~~~~~~~~~~~





「んっ」


 姫様が起きたようだ。みねに当たる部分で叩いたからたいした威力はなかったのだが、随分と早く起きたな。


「私の負けですか」


「……はい」


「一体何故?」


「さっきの突きは始めの打ち合いで俺が右利きだということが分かってのことでしょうが、剣道(俺の流派)では利き腕に関係なく左腕を中心に使うので、左腕のみの技もあるんですよ」


 片手面という技だ。あまり慣れていなそうな、勢いだけの突きだったから決めるのは難しくなかった。


「私の油断が原因ですか、あの魔族もそれでやられたというのにアタシは」


「え、今何て?」


「いえ、何でも。しかし強いですね、この世界に来たばかりだとは思えません」


「いやいや、それはアナタですよ」


 正直あのまま打ち合ってたら負けていた。


「いえ、私などまったく」


「そんなことありませんよ。はっきり言ってうちのパーティにほしいくらいです」


 ん、シエルは何で睨んでくるんだ?


「それなら私をパーティに加えてください」


「なっ、姫様、それが目的ですか! なりませぬぞ」


「よろしいですか?秋水様」


「え、まあ、俺はいいんですが」


「爺は許しませんぞ!貴女はこの国の姫なのですよ。国王様も病で寝込んでいるというのに」


「だからこそ、です。今、この国は弱ってきています。ですが、私は嫁いだり、まして王となれるような年齢ではありません。このままでは国は衰退し、どこかの国に吸収されてしまうでしょう。しかし、第三皇女である私が勇者と共に魔族を退けたとしたらどうなるでしょうか?」


「ですが」


「私にここで出来ることはありません。ですが、秋水様についていけばこの国を救えるかもしれません」


「ですから貴女は姫です。どう考えても戦うなどということは」


「姫だからこそ、です。私は国に今まで何も出来ませんでした。ですから、私もこの国の役に立ちたいのです」


「ひ、姫様。ご立派になられて、爺は嬉しゅうございますぞ」


 感嘆あまって泣きながら言う老人。


「ふっ、ちょろいちょろい」


 今のは空耳だな、うん。そうだ、絶対そうだ。


「では、姫様を頼みますよ」


「あ、はい」


「秋水様!何を勝手に」


 シエル? なに怒ってるんだ。


「え? 戦力的にもうしぶんないと思うんだが」


「そういう問題ではありません! 私との相談もなしに」


 ああ、そういうことか。


「シエル、君に何も言わずに勝手に決めてすまなかった。だが、彼女が加われば怪我も少なくなるだろう。君は俺にとって大切な人なんだ、なるべく傷ついてほしくない」


「い、いえ。私も一人で怒ってしまって」


 こんどは姫様が睨んでくるんだけど。


「話はまとまったようですね。それでは参りましょう」


 睨みながら言われても、って忘れるとこだった。


「そうです、早く怪物(モンスター)をどうにかしないと」


「ああ、それなら私(と元勇者)が魔族(原因)を潰しておいたので大丈夫です」


「ええっ!」


 俺っていったい。


「姫様、そこまでやっていたとは」


 この老人はもう駄目だな。


「まあ、よろしくな。秋水」


 俺だけに聞こえるように言った姫様の表情は、もう盗賊のそれだった。


とってもとっても書きずらかったです。

これだけの話を一話にまとめるのは作者的に辛い所があるようです。

次回は新展開、我ながら無茶な設定になるのですが外せない所なので頑張ります。

わかりずらい所があったらご報告願います。

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