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食事をする

フェリーク様の食事を待つ間に私も食事を済ませてしまおうかと思い、ミネットちゃんにお願いする。


「ミネットちゃん、食事の用意をお願いできる?」


「にゃーん」


ミネットちゃんはキッチンに行く。


どんな風に作るのかなと思ったら魔法で包丁やらなにやらを動かしてあっという間に美味しそうな具沢山チャーハンを作り上げた。


何故チャーハン?とは思うが具沢山だから栄養満点でボリュームもあるし美味しそう。


「すごいね、ミネットちゃん!」


「にゃーん」


早速食べようかなと思ったが、そこでフェリーク様が降りてきた。


「お、リーシュもお食事?」


「あ、はい。すみません勝手に」


「いいんだよ。ねぇ、リーシュのお食事オレも見ていていいかい?」


「いいですよ。でもその前に、ちょっと腕と口を拭きましょうか」


「あ、そうだそうだ」


血塗れになっているのを遠回しに指摘する。ミネットちゃんはさっとフェリーク様に濡らしたタオルを渡す。


ふと思い立ってフェリーク様のところに行って、タオルをもらってみた。


「リーシュ?どうしたの?」


「フェリーク様、私が拭いてもいいですか?」


「え?うん」


フェリーク様の口元や手を優しく拭う。


フェリーク様はなんだか気恥ずかしそうに嬉しそうに笑う。


「ふふ、これも初めてだ」


「そうですよね」


「なんかいいな、これ。明日も頼める?」


「いいですよ」


拭き終わるとミネットちゃんにタオルを渡す。


そしてフェリーク様の頭を撫でた。


「ふふ、おれこれすきだな」


「それは良かった」


「あ、でもご飯冷めちゃうよ」


「あ」


急いでテーブルに戻る。


「いただきます」


手を合わせて食べ始める私を、フェリーク様は向かいの席で穏やかな顔で見つめる。


「にゃーん」


「美味しいかってさ」


「美味しいよぉ、ミネットちゃんは天才だね!」


「にゃーん!」


「それほどでもあるってさ」


いやほんとそれほどでもある。


天才的に美味しい。


「ねえ、リーシュ。それってチャーハンってやつだよね?どんな味なのかな」


「うん?んーと、お米がパラパラしてて、具材もたくさんだから味に飽きなくて…とりあえず最高に美味しいです!」


下手な説明だが許してほしい。


私はそんなにグルメではない。


「へえ、面白いね」


フェリーク様はそんな私にもにこにこしてくれて、なんだか今度はこっちが気恥ずかしくなる。


「ねぇ、リーシュはどう思うの」


「ん?」


「あ、いや。食事中に聞くことじゃないね」


なんでもない、と誤魔化すフェリーク様に無理矢理続きを促す。


「なんでもありますよね?言って欲しいです」


「…本当に食事中に聞くことじゃないんだけど」


「いいですよ、どうぞ」


少し困ったような顔でおずおずと聞いてくるのは、ちょっと悲しいこと。


「ヒトの形をしたオレが、人しか食べられないのってどうなの?」


「別にいいんじゃないでしょうか」


「え」


「他の食べ物が食べられないのは物凄く可哀想ですけど…他の動物だって食べれる状況なら人間も食べるんですし、人間同士でも飢餓や独自の風習で同族喰いはありますし」


「ふふ、めちゃくちゃ直球に可哀想とか言うじゃん」


ていうか人間にも同族喰いとかあるんだねと謎の学習をさせてしまったところでチャーハンに向き直る。


美味しい。


「食事中に変なこと聞いてごめんね」


「大丈夫です。私、自分で思っていた数倍は神経図太いらしいので」


ここに来て初めて知ったんですけどね。


そう言えばフェリーク様は笑った。














「ふう、お腹いっぱい!ご馳走さまでした!」


「にゃーん!」


ミネットちゃんはさっと食器を下げてくれる。


「時計時計…まだお風呂にはちょっと早いなぁ」


「あと一時間くらいしたら入りましょうかね」


「おれの残り湯は嫌だろうし先入っていいからね」


「別に嫌ではないですけど、お言葉に甘えて」


さて、お風呂までは何をしようか。


「そういえば、失礼な質問していいですか」


「うん」


「フェリーク様って親とか友達っているんですか」


「うわ、直球」


身も蓋もない私の質問に笑うフェリーク様。


「リーシュって本当に面白いね。実の親は…神さまかなぁ。粘土捏ねて作られたから」


「へえ」


「驚きもしない」


「いや、私が習った神話では人間も元は土人形でしたから」


「へー、何教?」


「聖神教です」


ふうん、と短く呟く。


「育ての親は旅の賢者八百年生きてて俺より長生き」


「わあ、人間?」


「人間だけど魔力多すぎて死ねないんだって」


「可哀想」


「だよねー。でも本人は至って普通に人生楽しんでるよ」


そんなもんかぁとひとりごちる。


「友達は…西の森の精霊王くん」


「え」


「なんか可哀想な生き物認定されて良くしてくれてる」


「それは友達かなぁ」


「彼曰く心の友らしいよ。おれも彼は好きだし」


なら友達かぁ、と呟くとフェリーク様は笑う。


「リーシュって今までに会ったことないタイプで面白いや」


「めちゃくちゃ失礼な小娘ですけど大丈夫です?」


「むしろ肩肘張らなくて済むから楽ー」


そう言って笑ってくれるフェリーク様は良い人だ。


好き。

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