実家が勝手に破滅した
「というわけで、なんかリーシュちゃんのご実家は天罰が降ったみたいよ」
「うわぁ」
当たり前だけどあれからも何度もパウロさんと会っているものの、しばらくは実家と元婚約者の話はしないようにしていた。
私から聞かなければ、パウロさんは自分からはあの人たちのことは言わない。
けれどしばらく経って、そういえばとふと思い出して実家のことを久々に聞いてみた。
しばらくぶりにパウロさんの口から実家の話を聞いたのだが、思ったより悲惨なことになっていた。
「なんか酷いことになっていますね」
「天罰でしょ」
「本当に天罰としか思えないですね」
天罰でなければ納得できないほど悲惨だ。
何故そうなったのか、投資詐欺に引っかかるなんて誰にでも起きかねないこととはいえ早い段階で気付いて欲しかった。
とはいえ爵位を真面目で優しい叔父が継いだと聞けたのは良かった。
「まあ、叔父が父の跡を継いだというのは良かったです」
「ほぼ買い取りって形だけどね」
「叔父なりの優しさとけじめでしょう」
叔父さんは優しいが真面目だし商人だから、ただ支援するだけというのは金額を考えても難しかったのだろう。
「リーシュちゃんから見てもそんなにいい人なんだ?新しい男爵様」
「それはもう。父とは比べ物にならない人です」
「じゃあ良かった」
「統治も問題ないでしょう?」
「うん、村は変わらず穏やかだよ」
良かった良かったと安心する。
「でもまさか実家が勝手に破滅するとは」
「神さまもちゃんと見てるよねー」
「ですねー」
「あ、元婚約者くんもそれなりに天罰があったみたいだよ」
「え」
そっちもかとびっくりするが、それはそうか。
彼は婿入りの予定だったが、その話は当然なくなっただろう。
彼はうちの爵位を継ぐためだけに頑張っていたから、その全てが無駄になったのだ。
「あ、その顔は気付いた?」
「いや、婿入りの話はなくなったのかなって」
「そうそう。それで彼は実家を追い出されるように家庭教師の職についたみたい」
「え、それならば十分では」
「…未亡人のマダムの家庭教師だって」
…ふむ。
まあ、そういうことか。
「愛人かぁ」
「明け透けー」
「そうとしか思えないじゃないですかぁ」
「そうだよねー、俺もそう思うよ」
いやぁ、色々倫理的にどうこうはあると思うけど…別に未亡人相手なら愛人になるのが悪いとは思えないし、まあ頑張れー。
「でも案外今は幸せかもしれませんよ?ブルローネにも飽きてたんでしょう?」
「そうかもね?」
「まあ、どちらにせよ実家も彼もご愁傷様とだけ言っておきます」
「うんうん、俺も」
ということで意外と天罰がちゃんと降ったお話を聞きました。
ご愁傷さま。




