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少しずつ、綻びが見え始めた
ナルチーゾ様が、最近様子がおかしい。
時折寂しそうな、虚しそうな顔を見せる。
それでわかってしまった。
リーシュを思っているのだと。
やはり、血を分けた娘への愛情がなかったわけではないのだと。
「…虚しさを感じてしまうのは、むしろ私の方」
ナルチーゾ様の娘であるリーシュ。
それなのに私は愛せなかった。
結果ここまで拗れてしまった。
今のナルチーゾ様は心ここに在らず。
心から愛しているが、だからこそ虚しい。
「私は結局、ただ愛されたかっただけだった」
ナルチーゾ様を愛しているのは本当。
これは誰にも否定はさせない。
けれど。
私は愛している以上に、ただただナルチーゾ様に愛されたかっただけだったのだ。
「なんて醜いのかしら、私は」
ナルチーゾ様にいつか、この醜い内面を知られて見限られるのではないか。
ナルチーゾ様からいつか、捨てられてしまうのではないか。
少しずつ、綻びが見え始めた。
いつ終わるかわからなかった幸せな日々は、きっとここから崩壊していくのだろう。
そんな気がしていた。




