何故か虚しさが胸に去来する
要らない方の娘が妖獣の花嫁になってしばらくが経つ。
ここにきて、何故か虚しさが胸に去来する。
どうしてだろう。
グラツィアを幸せにできて、ブルローネも毎日楽しそうに笑う。
幸せな日々のはずなのに。
「…まさか、私はあの要らない子に多少の情をかけていたというのか」
いや、そんなはずはない。
要らない子だ。
きっと、今までいたものが居なくなって少し違和感を感じているだけのこと。
そのはずだ。
「そのはず、だ」
グラツィアは、そんな私の様子におそらく気付いている。
時々私を見てはとても悲しそうな…不安そうな顔をする。
グラツィアを悲しませたくない。
不安にさせたくない。
心から愛しているから、幸せにしてやりたいのに。
「このままではダメだな…」
少し気分転換にワインを飲む。
ほろ酔い気分になった頃、ふと疑問が湧く。
「…リーシュは、妖獣から愛されているのだろうか」
いやまさか、人を喰う妖獣相手に愛されることなどあるものか。
けれどどうしてだろう。
今は、もし奇跡でも起きて愛されてくれていればいいと。
そう思った。




