落ち込んだ彼は復活した
お風呂から上がって、フェリーク様が今度はお風呂に入る。
フェリーク様はお風呂から上がってきたら私の隣に座る。
いつもの添い寝前のお話タイム。
私は思い切ってフェリーク様に言ってみた。
「フェリーク様」
「うん?」
「元気ないですよね?」
「リーシュは本当に率直に物を言うなぁ」
ふふ、とフェリーク様は笑う。
お風呂に入ってきてさっぱりしたからか、その間に考えがある程度まとまったのか。
少しは元気になってはいるみたいだけど。
「フェリーク様。フェリーク様は私にとってなくてはならない方です」
「知ってるよ」
「だから、フェリーク様が人を喰うからって嫌ったりしません」
「本当に直球だね」
「人間だって動物のお肉を食べますし、動物だって他の動物を食べます。だからフェリーク様だけが責められるのは私は納得いきません」
フェリーク様は微笑んでくれる。
「リーシュがそう思ってくれるなら、おれはもう何も言うことないかな」
「フェリーク様…」
「おれの代わりにリーシュが怒ってくれるから。おれは心穏やかになれるよ。こんなこと言うと怒られるかな…おれのために怒ってくれるリーシュを見ると、なんだか嬉しいんだ」
意外な言葉に驚く。
だが、私も昔私の代わりに家族に怒りを燃やしてくれたパウロさんを見て懐いた覚えがあるので気持ちはわかる。
「わかります」
「わかってくれるの?」
「はい。似たような理由でパウロさんに懐いた覚えがあります」
私がそう言うと何故かフェリーク様が少しムッとした。
「そうなんだ」
「はい」
「リーシュってパウロに本当に懐いてるよね」
「…ヤキモチですか?」
「直球すぎる」
思わずくすくすと笑ってしまった。そんな私にフェリーク様がぶすくれる。
「なんだよぅ。おれだってヤキモチくらい妬くよ」
「ふふ、はい。ありがとうございます、嬉しいです」
「え?」
「だって、ヤキモチを妬くくらい私を好きになってくれたんですものね」
上機嫌で笑いかけたら、フェリーク様が苦笑した。
「…そんなに嬉しそうにされると思わなかった。リーシュには敵わないな」
「ふふ。だって私もフェリーク様が大好きなんですもの。大好きな人からヤキモチを妬かれたら嬉しいです」
「もう!リーシュ大好き!」
ぎゅっと抱きしめられる。
幸せ。
フェリーク様も元々お風呂から上がってある程度吹っ切れたっぽい感じだったけど、もっと元気が出たみたいだし。
よかった。
「ふふ、嬉しすぎてもう聖女の言葉なんかどこかに行っちゃった」
「なら良かった」
フェリーク様が幸せなのが、今の私にとっての一番だからね。




