彼女は罰されたらしい
聖女襲撃から数日が経つ今日、パウロさんが餌を持ってきた。
「リーシュちゃーん!妖獣様ー!」
「え、パウロどうしたの」
パウロさんは会うなりフェリーク様に抱きついた。フェリーク様は嫌がるでもなく受け止める。
「おれ男に抱きしめられるの初めて」
「それはごめんなさい!でも妖獣様とリーシュちゃんがクソ聖女に喧嘩売られたって聞いてー!」
「あー、うん。大丈夫大丈夫」
フェリーク様はパウロさんの様子に仕方がなさそうに笑う。
私も思わずくすくすと笑ってしまう。
パウロさんのこういう優しさが、幼い頃から大好きだ。
「ところで、あの聖女って罰されたの?」
「そりゃ当たり前ですよ!公にはなっていませんが、知るべき人にだけこっそりと知らされた話です。毒杯を賜ったそうですよ、それもえげつない奴」
「あー…」
私は思わず声を漏らす。
だよねー、としか思えない。
自業自得という奴だ。
「よかったっすね!妖獣様!聖王猊下がバッチリ仇とってくれましたよ!」
「いや仇って」
くすくすと笑うフェリーク様にパウロさんは安心した顔を見せる。
「…よかった、元気そうで。あのクソ聖女に何言われたかわからなかったので、心配してたんすよ、本当に」
「ありがとう、パウロ」
「いえいえ、リーシュちゃんも大丈夫?」
「私は全然大丈夫です!色々と言われて、ちょっとだけ取り乱しましたけど」
「あの性悪聖女め…リーシュちゃんも気にすることないからね!」
元気付けてくれるパウロさんに力強く頷いておく。
そんな私の様子に満足そうに頷いたパウロさんは、餌をフェリーク様が二階に運ぶとちょっと心配そうな表情を見せた。
「…妖獣様、今日は少し餌を運ぶ動作に迷いがあったよ。リーシュちゃんは気付いた?」
「なんとなく」
「やっぱり妖獣様、平気そうに振舞ってるだけで結構ショックだったのかな。何を言われたか知らないけど」
「私も気をつけてフェリーク様を見てみますね」
「そうして差し上げて」
パウロさんが帰った後フェリーク様の様子を見てみたが、餌を殺したことに何か思うところがあったのか元気が激減していた。




