目が覚めて、不安になる
目が覚めると、ミネットちゃんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「にゃーん」
「私…?」
そしてハッとする。
そうだ、聖女が喧嘩を売りにきて…私、あんまりの怒りに興奮しすぎて意識を飛ばすように寝ちゃったんだ!
「フェリーク様!」
叫んで身体を思いっきり起こす。
「ふふ、目覚めから元気だなぁ。そんなリーシュも可愛いけどね」
声のする方に目をやれば、椅子に腰掛けてお義父様がお土産に持ってきてくれた本を片手ににっこり笑うフェリーク様。
「よ、よかったぁ…」
「え!?リーシュ!?泣いてる!?」
「フェリーク様が無事で良かったよぉ…」
安心して泣きじゃくる私に、フェリーク様は大事な本を投げ捨ててまで駆け寄ってくれて抱きしめてくれる。
「そ、そんなに心配しなくても聖女は退散させたから!」
「フェリーク様に何かあったらとか思ってぇ…」
「何もない!ないから!」
「あれから…何も言われてないです?」
「ない!ない!あの後すぐ追い返したから!」
グズグズと言い募る私を抱きしめたまま必死で泣きやませようとするフェリーク様。
怪我をした様子や落ち込んだ様子はないので、少し安心する。
「よかった…よかった…」
「うんうん、大丈夫大丈夫。いい子いい子」
「にゃーん」
ちょうど泣き止む頃に、ミネットちゃんが濡らした清潔なタオルを持ってきてくれて顔を拭う。
はぁ、すっきり。
「落ち着いた?」
「落ち着きました…」
「よかった」
「本当に無事ですね?」
「無事無事」
ぎゅっとフェリーク様に自分から抱きつく。
「リーシュ?」
「ごめんなさい、あんな場面で意識を飛ばすなんて」
「おれこそごめんね、それおれの魔法で眠らせたんだよ」
「え?」
「リーシュが怒りで倒れる前に寝かせておこうと思って」
なるほど。
…なるほど?
抗議しようかとフェリーク様を見るけど、優しそうな表情に悪気はないんだろうなぁと思い直す。
「まあ、私興奮してましたからね」
「うん。身体に不調はないよね?」
「ないです」
「やっぱり眠らせて正解だったかな」
…まあ、フェリーク様なりの優しさなんだし今回はそれでいいや。
「フェリーク様」
「うん?」
「大好きですよ」
「おれも」
とりあえず、安心したからこれ以上考えるのはもういいや。




