自分勝手にも程がある
聖女様は言った。
「単刀直入に言うわ」
「なにかな」
「貴方はもう、この国には要りません」
その言葉を聞いて、私とミネットちゃんは激昂した。
「はぁ!?」
「シャーっ!」
「リーシュ、ミネット。落ち着いて」
あまりに落ち着いたフェリーク様の声に一瞬で冷静さを取り戻す。
とはいえ燃え上がるような怒りは消えてくれない、それはミネットちゃんも同じらしい。
「…まあ、野蛮な妖獣の嫁も野蛮ね。ペットは可愛らしいけど」
「リーシュを貶めるなら許さないよ」
「まあ、怖い。けれど何か勘違いしているのではなくて?もう貴方の時代は終わりよ」
あんまりの発言に胸ぐらを掴んでしまいそうな自分をぐっと抑える。
ミネットちゃんも全身の毛を逆立てながらもぐっと堪えていた。
「どういう意味かな」
「今代の聖女はわたくし。とても大きな魔力を持っているわ。わたくしは貴方の豊穣の能力ほどでなくとも、聖都に様々な豊穣をもたらすことができているの」
「へえ、それで?」
「代々の聖女は、より強力な魔力を持つようになっている。きっと神さまが貴方を要らないと思っている、その思し召しだわ」
「ふざけないでよ!!!」
堪えていたが、口を挟んでしまう。
フェリーク様に迷惑をかけてしまうのはわかっているのに、止まらない。
「フェリーク様はずっとずっと寂しい思いをしながらも、この国に豊穣をもたらしてきた!!!フェリーク様を散々利用しておきながら、今更必要ないなんてふざけんな!フェリーク様が許しても私は絶対お前を許さないからな!!!」
「リーシュ」
聖女の胸ぐらを掴む勢いの私を、フェリーク様が優しく抱きしめて止める。
「いいんだ。いいんだよ」
「フェリーク様っ」
「おれは大丈夫…リーシュが怒ってくれたから、もう充分だよ」
「にゃーん」
フェリーク様が私を抱きしめる腕をぎゅっとしてくれて、ミネットちゃんが私の頭を撫でる。
そんな自分が情けなくて、フェリーク様を悪く言われたのが悔しくて悔しくて。
感情が昂りすぎて、私は嗚咽を漏らす。
「うっ…ぐっ、うっ…」
「大丈夫、大丈夫だからね」
「にゃーん」
「…仲睦まじいこと。やはり、人を喰う野蛮な妖獣に餌を与えるような家柄の娘は価値観がおかしいのね」
また手が出そうな私を、フェリーク様がぎゅっとして止めた。




