聖女様とやらが来る
「お義父様が居ないと寂しいですねぇ」
「にゃーん」
「一週間と言わず一ヶ月くらい居てくれてもいいのにねぇ」
お義父様がまた旅に出てしまった、フェリーク様が寂しそう。
私も寂しい。
お義父様にすごく懐いていたミネットちゃんも寂しそう。
「まあ、またお土産たくさん持って帰ってくるからそれまでの辛抱だね」
「はやくお会いしたいですね」
「そうだねぇ」
「にゃーん」
そんな風にお義父様の旅に出てしまった寂しさをお話ししながら紛らわしていたら、玄関のドアがノックされる。
「あれ、またお客様」
「ここのところ賑やかだなぁ」
三人で玄関のドアを開ける。
そこには宗教着…それも高位の存在が着るそれを身に纏った美しい女性がいた。
「え…もしかして今代の聖女様ですか?」
「御機嫌よう」
「ご、御機嫌よう…」
聖女とは、国内でも魔力量が多い女性の中から選ばれる神聖教の…象徴というか、言ってしまえば理想の偶像的存在。
国を守るのは神さま。国を豊かにするのはフェリーク様。国をまとめ上げるのは国王陛下と聖王猊下。そして信仰を集めるのが聖女様。
でも今代の聖女様は公爵家の令嬢が選ばれたとかで、気位が高い上に理想も高く地方には来ないで聖都でしか働かないと聞くが。
「貴方が妖獣ね?」
鋭い目でフェリーク様を見つめる聖女様。
何この人。
「…そうだけど、おれに用かな?」
「ええ、話があります」
…なんでだろう。
胸がざわざわする。
どうしよう、でも追い返せないし。
睨み合っている二人の間で困ってしまったが、意を決して口にする。
「…とりあえず、奥へどうぞ」
「ええ、上がらせていただくわ」
フェリーク様に目配せをしたら、頷いてくれたから多分この対応で良かったはず。
リビングにお通ししてソファーに座ってもらう。
ミネットちゃんが聖女様にお茶を出す。
ミネットちゃんにお礼を言って一口お茶を飲み、聖女様は一息ついた。
それでもピリピリした雰囲気で、一体何を言われるのだろうと身構える。




