花嫁となる
美しく着飾られて。
私は純白のドレスで山を登る。
家族や元婚約者は、涙の別れを演出していたがこちらは白けたものだった。
…というか、山奥にある妖獣の住処に行くのにこんなゴテゴテしたドレス着せんな!
花嫁になる前に殺す気か!
「や、やっと着いた」
粗末な小屋…かと思いきや。
小さな家だが、割とちゃんとしたお家。
なんならこのまま食べられず、本当に家族になれたとしても全然暮らしていけそうな感じ。
外観も綺麗だ。
ただし、ちょっと外壁に血が付いているが。
「まあ、そんなものでしょう」
妖獣の住処なのだし。
とりあえず、殺されるのは覚悟の上で中に入ろうか。
「ごめんください」
「ん、入っていいよー」
ドアをノックして問えば、間延びした返事。
入れば、目の前に男がいた。
美しき紫水晶の瞳、虹色の髪、真珠色の肌。
なるほど、これは魅了される。
美しい男だ。
「…ありゃ?囚人服ではないね。餌ではないのだね」
「はい」
「どうしたの?迷子かい?」
「いえ、貴方の花嫁となりに来ました」
我ながら何言ってんだろうなぁと思うが、妖獣の反応はありがたいものだった。
「…え、花嫁?奥さん?おれと家族になってくれるのかい?」
「あ、はい」
「え、え!いいの?嬉しい!…あ、だからその格好!わ、すごく似合うよ。可愛い!さすがおれの奥さんだ!」
現金な人だなぁ。
花嫁とわかってから褒めるだなんて。
でも、可愛い人だ。
見た目だけでなく声もいい。
話し方も私には愛らしく感じる。
「ねえ、名前はなんて言うんだい?おれの奥さんの名前を教えておくれよ」
「リーシュです」
「リーシュ!可愛い名前だ!おれはフェリーク!よろしくね!」
フェリーク様。
この方が私の夫となる人。
…当の本人が受け入れているっぽいしその認識でいいよね?
「フェリーク様、これから奥さんとしてよろしくお願いしますね」
「うん!おれこそ、これからリーシュの旦那さんとしてよろしくね!」
ということで、私は食べられることはなくこの人の妻となった。