日常になる
フェリーク様に嫁いでから早数日。
人というのは日が経つにつれ非日常が日常になるもので、フェリーク様との結婚生活にもすっかりと馴染んでいる。
「にゃーん!」
「ふふ、これ美味しいよ。作ってくれてありがとう」
「にゃーん」
ミネットちゃんとはすっかりと仲良くなった。
ミネットちゃんの作るご飯はめちゃくちゃ美味しくて、すっかりと私はミネットちゃんに惚れ込んでいる。
「ご馳走さまでした」
「にゃーん」
ミネットちゃんが食器を下げて洗ってくれている間に、清潔なタオルを濡らしてぎゅっと絞ったら準備は万端。
いつでも来い!
「リーシュ、食べ終わったよ」
「はい、じゃあお口元失礼しますね」
予想通り口元を血だらけにしたフェリーク様が来る。
朝昼晩に、その血に塗れた口元や腕を拭うのが私の日課だ。
フェリーク様は何故かこの作業をとても喜ぶので、私としても嫌ではない。
「でも、すっかりリーシュのいる生活に慣れちゃったな」
「ふふ、そうですか」
「うん。ずっとこういうの憧れてたから、これが当たり前になって幸せだなぁって感じる。リーシュは?」
「私もずっと穏やかで満たされた生活に憧れていたので、今では大満足です」
「そっか」
フェリーク様がぎゅっと私を抱きしめる。
「リーシュがおれのお嫁さんでよかった。お嫁さんに来てくれてありがとう」
「ふふ。こちらこそ、旦那様になってくださってありがとうございます。フェリーク様が私の旦那様で、本当に良かった」
「にゃーん!」
二人でイチャイチャしていたら、ミネットちゃんが乱入してきた。
「ふふ、もちろんミネットも大事だよ」
「ミネットちゃん、大好きだよ」
「にゃーん!」
嬉しそうにぎゅむぎゅむと私とフェリーク様に抱きつくミネットちゃんは世界一可愛い。
「こんなに幸せでいいのかな」
「良いんですよ。もっともっと三人で幸せになりましょう」
「にゃーん」
人と関わる機会が少なく、いつも同じような日々を過ごしてきたフェリーク様。
突然家族が増えて、穏やかで温かな日々を急に与えられれば不安になることもあるのだろう。
けれど安心して欲しい。
私はきっと、フェリーク様を幸せにするためにここにいるのだから。
「…うん、そうだね。リーシュとミネットと、三人でたくさん幸せになろう」
「ふふ、はい!」
「にゃーん!」
フェリーク様をミネットちゃんと一緒にぎゅむぎゅむと抱きしめる。
今日もあの殺伐としていた日々では考えられなかった、穏やかな時間が過ぎる。
このまま幸せを三人で謳歌していたい。




