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「マジックアバルド」  作者: 偽物
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第二話 人生経験と相棒経験

 水泡のアバルドを退治する依頼がバルの元に届く。

 そして、雨森の過去と、バルと雨森の出会い。

 雨森がアバルドと戦う理由とは?

【早朝】


 俺の朝の日課はお茶を飲むこと。

 お茶といっても緑茶。

 緑茶には、怒りを抑える効果があるらしい。


 探偵にとって、怒りは推理を阻害するものであるから、毎日落ち着くことを心がけている。


 よく、ドラマとかの探偵や刑事を見て、真似した飲み物とかはあるが、俺の朝には合わなかった。

 だから、俺は俺なりのモーニングルーティンを見出した。


 朝から『ダンダン』っと階段をかけ上がる騒音が聞こえる。

 どうせ、雨森のやつがアバルド退治をお願いしに来たのだろう。

 まったく朝から騒がしい奴だ。


「バルさん。今日の依頼はとっくに電話で話したのに、事務所で何してるんですか」


「朝のモーニングルーティンだ…」


「モーニングルーティン?」


「ああ、俺にとっての至高の朝を迎えるための時間を過ごすために、必要なことだ…」


「全然かっこよくないので、早く行きましょう」


「それに、モーニングルーティンが緑茶って、笑いをとりにきたんですか?」


 緑茶の効能は、血圧や血糖、悪玉コレステロールの上昇を抑え、生活習慣病の予防してくれる。

 ちなみに、怒りを抑えるのは、『江戸時代にお茶を飲んで、怒りを鎮めることに努力しろ』というもの。

 実際は、緊張緩和をしてくれる。


「そのくらいの知識はあ、あ、ある」

「それに、この緑茶は雰囲気づくりのためだ…」

「このルーティンが必要だから行っているだけで、別にかっっかっこいいなんて、思ってないぞ……安心しろ」


「はぁ〜。それはもういいので、水泡のアバルドの能力は何か、わかりませんか?」


「『水泡?』そんなアバルドいたんだ。俺の記憶じゃ、そんな奴いなかった気がする……」


「もういいです。今日は、ホントにバルさん、無能状態ですから…」


「そんなことはない」


「雨森よ、俺はやれば、見せる男だ」

「では、俺が無能ではなく、有能であるところを見せに、さっそく現場に向かうぞ!!」


「ところで現場って、どこ……?」


「ハァ〜、こんなんで安心しろはヤバいです…」


 ナトリクス公園の噴水広場に向けて、俺の愛車が走行している。

 この黒色の車は、俺のお気に入りだ。


 過去に助手の奴から、やれ量産型だ、やれカッコつけすぎだと、さんざんにバカされた。

 だがこうして、現場に向かう際には俺の車に乗っている。

 俺の愛車をバカにするより、感謝してほしいものだ。


「そういえば、しばらく休んでいないようだが、雨森、大丈夫なのか体調は…?」


「エンブレムや犯罪者達から、この国を守るのが俺たち、特殊課の使命なので…」


「こんなの平気ですよ」


「そういうが、働きすぎもよくない」


「あの時だって、お前は死にかけの状態だった」「俺やディナさんが助けてなかったら、本当に危なかった……」


「バルさんのおっしゃる通り、少し仕事に熱が入り過ぎてかもしれません」


「この依頼を片付けたら、しばらく休暇を取って、ディナさんと二人の時間を過ごすことにします」


『特殊課の使命』なんて、アイツにそんな使命感はない。


 雨森は、アバルドを殺したいほど恨んでいる。

 まっあ、本人が死んだら意味がないけど。

 まったく、俺に心配をかけさせる困った助手だな。


 お前が、俺を殺しにきた時と同じような展開に、ならないといいが……


「もうすぐ、ナトリクス公園に着くので、準備をしてください」

「激しい戦闘が予想されるので」


「大丈夫。俺はモーニングルーティンで、万全だ!!」


「無駄話がいつも多いですよバルさん」

「戦闘準備を早くしてください」


『コイツ!』

 こっちも現場まで、運転してやってんのに。

 なんだその態度は!?

 だが、俺は雨森より精神年齢も、現在の年齢でも大人だ。

 これくらいの生意気な助手程度に、怒る俺じゃない。


 しかしだ。

 人をバカにした事は、しっかりと反省させやるのが、大人のつとめだ。

 ……帰りは一人で帰らせるか。

 これは俺の助手としての試練だ。(頑張れ)


「バルさん。近くに止めてください」


「どうした、助手よ?」


「見てくださいアレ。あんな巨大なアバルド、見たことがないです…」


「ああ、デカい。あの人の胸」


「どこ、見てるんですか。撃ち殺しますよ?」


「すまん。冗談だ」


 液状体のアバルドか……倒しにくい相手だ。

 近くに噴水もある。

 もし水を使う能力なら、噴水の水で、補給できる。

 しかも、なんで噴水もデカいんだよ!

 メッチャ、これら側が不利な対面。


「さきほど、特殊課の同僚から連絡がきました」


「ナトリクスの住民にも、相当の被害が出たようです」


「『建物が真っ二つになったり、空から大きな水の塊が降ってきた』と」


「それはヤバいな、早いとこ、処理しないとな」


「俺は奴の正面に出て注意をひく」


「話し合いで解決しないなら、いつものパターンで、助手は後方から狙撃」


「これで倒せない、またはピンチになったら逃走。それでいいな?」


「逃げたくはありませんが、早く水泡のアバルドを殺しましょう……」


 雨森は、水泡のアバルドの後ろに回らせた。

 雨森の情報だと、建物を真っ二つにできる厄介な相手。

 攻撃には、よう注意しないと。


「ハァ〜」


 助手に俺がひきつけると言ったが、そもそも液状体に銃弾なんて効くのか?

 しかし、やらないことには始まらない。

 それに、もしかしたら、話し合いで解決できる利口な相手(アバルド)かもしれん。


「……よし、前に出るか」


 水泡のアバルドの目の前を一発の弾丸が横切る。


「すまんすまん、俺のエイムが下手くそで、アンタにあったちまうところだったよ」


(いいですかバルさん。俺の言う通りに話してください……)


((本気でそんな怪しいセリフ、言わなきゃダメ?))


(頼みます)


「てか、そんなデカいずうたいで、何やってんの?」


 やっぱり下手くそな演技だったか?

 それにしても、この作戦、ガチガチにアバルド殺るきじゃん。

 雨森の考えた作戦に、賛成するべきじゃなかった。


「……………『ボゥフ ボゥフ』……クゥ、クゥ』


「アレ?反応なし、それはちょっと泣けてくるかなぁ〜俺も知らない人に話すのは、苦手で……」


「だけど、返事くらいしてくれても?」


「そうだわかった。別の場所で、ゆっくり話そう!」


「ここじゃ住民の人にも迷惑になるし、もっと落ち着いた場所で、仲を深めよう。俺達友達!!」


 こんな変な陽キャみたいな奴、信用できねぇ〜。

 これで、騙せのか?


「…‥……ン〜〜ン……………クゥ〜〜〜〜〜!!」


 あ、この状況はマズイですな。

 『踏み潰されるか、体を真っ二つにされるかのどちらか選べ』ってなる。

 早く逃げるのボタンを押そう。


「ファァアア〜〜〜〜!!…………………クゥ〜!クゥ〜!!!」


 『これは死んだ』と思った時、水泡のアバルドの頭を弾丸が1発、貫いた。

 だが、簡単に弾の勢いは止まり、液状の体に取り込まれた。


「ナイス、助手!!俺の命を助けるために」


 けど、いつも俺がヤバいタイミングだよな……?

 アイツ、タイミングを狙ってないか?

 俺の気のせい?

 けど、救われたぁ〜からOK。


「バルさん、一息つのは後にしましょう。コイツ、まだ動いています」


「へぇ、マジ?」


 俺がマヌケな発言をした瞬間、水泡のアバルドは、拳で殴りにきた。


 間一髪で、その拳を避けることができた。

 続けざまに、水の斬撃を俺たちに向けて放ってきた。

 ギリギリで当たらなかったが、公園の木々が何本も倒れた。

 周囲に散らばった水溜りからも、攻撃がきた。

 水溜りの中から、液状の拳で連続ラッシュ。


「死ぬじゃん、こんなの!?」


[もう水溜りの上を歩きたくないと思うバルであった]


「もし再生能力を持っているのだとしたら、凍らせない限り、倒せません」


「確かに、無理ゲーってヤツだ」


 こんな危険なアバルド、本当に倒せんのか?


「雨森、一つ聞いてもいいか?」


「なんですか?」


「逃げないか?」


「まじか…?」


「マジです」


「弱点も見つかっていない状況で戦うのは無策だと思います」


「だから、撤退を進言する」


「ダメです!!ここで逃げれば、ナトリクス住民にさらなる被害が……」


「俺はこれ以上、誰もアバルドに殺させはしない」


「ちょっとは冷静なるんだ。ここで俺らが死んだら、誰が助けに来る?」


「特殊課なら、市民を守る正義がある」


「俺は、特殊課の連中に世話になるくらいなら死んだほうがマシだ」


「なら、バルさん1人で、逃げてください」


「……俺がアイツと死ぬまで戦います」


「俺は『逃げる』とは言っていない」


「水泡のアバルドを殺す!!」


「ハァ〜もう何言っても、戦う気なんだな」


「わかった。俺も付き合うことにした」


「けど!!作戦くらいは考えて、再挑戦する」


「今、ここで奴を倒すせるのは、俺達しかいない」


「バルさん、あの時みたいですね」


 またバルさんのこと『カッコいい』って、思っちまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【3年前】


 俺とバルさんとの出会いは今から三年前、俺が特殊課に入って、すぐの事件。

 俺がまだ、アバルドに対して殺意だけしかなかった。

 当時の特殊課の仕事はアバルドを捕獲すること。

 俺は命令を無視が多く、たびたび、処罰をくらっていた。

 『全てのアバルドを殺す』、それが俺の使命だから。


 そう俺は、信じていた……

 そして、アバルド捕獲の命令が出た。

 俺はいつものように、アバルドを『殺す』つもりでいた。


 けど、結果は逆であった。


 狙撃のアバルドによって、現場に向かった俺、以外の特殊課のメンバーは全員、殺された。

 俺も瀕死状態、俺も殺されるのかと少し、諦めていた。

 だが突然、コートを着た1人のアバルドが現れた。

 狙撃のアバルドとの銃撃戦を優位に進める、もう1人のアバルド。

 奴は、無傷のまま勝利した。

 10名の特殊課が同時に、かかっても勝てない相手を。


 バルさんは死体をそのままにして、どこかに消えてしまった。

 俺はアバルドに助けらたことが、悔しくて、現場になにか残っていないかと、必死に探した。

 その後も、あのアバルドについて、調査し、一つの手がかりをつかんだ。

 奴の名前は、【バル・アバルドルフ】。

 探偵事務所を営んでいる。


 バル・アバルドルフに借りを返しに、ではなく殺すために、奴の探偵事務所に向かった。


 俺はバル・アバルドルフに、ボコボコに殴られ、追い返された。

 それでも俺は、諦めることができなかった。

 仕事の後、忙しくて眠れない時、アバルドにムカついた時、俺は必ず、バル・アバルドルフを殺しに行っていた。


 でも、やっぱりボコボコにされて、追い返される。

 そんな毎日が続いた。

 その度に、ディナさんが手当をしてくれる。

 これが、ディナさんとの出会い。

 初恋の瞬間でもあるかな……


 変わった日常が続くなかで、俺は徐々にバル・アバルドルフに興味を持つようになった。

 そして、いつものように探偵事務所に向かっていた俺はエンブレムの構成員に狙われていた。

 なぜか、狙撃のアバルドを殺ったのは俺だと、嘘の情報が流れていた。

 確かに多くの死体の中で、俺だけが生き残っていれば、俺がやったようにも見える。

 だが本当は、バル・アバルドルフが殺したんだ。


 『アバルドに助けられた』という事実を認めたくない俺は、その嘘を本当だと、エンブレムの連中に答えてやった。

 その日からエンブレムは俺を狙うよになった。

 そんな時でも、俺はバルを殺しに向かった。


 借りを返す(助けてもらう)ために……


「バル・アバルドルフ!!俺と命をかけた勝負をしろ」

「これが最後の勝負だ」


 ボロボロの見た目で、勝負を申し込む雨森。


「嫌だねぇ。そんな死にかけの状態で、よく殺しにきたな」

「特殊課の中でも、お前は根性あるほうだよ」


「俺も面倒だから、その勝負を受けた方が厄介事もなくなってハッピーなのかも」

「だけど、今日は気乗りしない」


「お前以上の面倒ごとをもってこないでほしいものだ」


「バルっ、気づいているのなら、オレとの勝負をうけ、ろ…」


「オレにとって、アバルドに助けられたなんて、恥でしかない」


「だから、俺なりの、終わりを……グッ!」


「雨森、お前の事、調べたよ」

「お前の終わりなんざ、いらねぇ〜」

「早くディナさんに手当をしてもらえ」


「俺は、アイツらをお前と同じように、追い返す」


「ただし、手加減なしだ」


「また俺を助けるのか!?」


「また?あの時は、依頼でたまたま、助けただけだ」


「それにお前は、俺好みのおもしろい奴だからな…待ってろ」


「再戦くらい、また受けてやる」


「……バル」

 その時だろうか、俺がバル・アバルドルフという一人のアバルドに、『憧れ』と(恩)を感じたのは。


「エンブレムの構成員さん。ここは、うちの探偵事務所だが?」


「ここに狙撃のアバルドをやった特殊課の刑事がいる」


「早く出せ。お前も俺達がどんな組織か、わかっているはずだ」


「いえ、知りません」


「どうやら、死にたいらしい」


「ハッ、エンブレムの看板つけてる人間が、イキがるなよ」


「本気で死にたいようだ」


「悪いな。お前みたいな弱そな連中を殺すのも、俺達の仕事なんでな」


「こいや!!雑魚ども」


「ハァー!ふざけたこと言いいやがる。おい、全員でやるぞ」


「すいません、すいません。こんなセリフ、一度言ってみたかったんです」


「今更、遅い」


「そうですよね〜」


 バルは、素早く相手のポケットに爆弾を装備させた。


「早く外に出てください。片付けが面倒いので」


「あれ、そのアクセサリー、とってもお似合いですよ。貴方の死に様に…」


「なに!!??」

 

 一瞬の動揺。

 その瞬間、バルはエンブレムの構成員に向けて、弾丸を即座に構成員の数だけ、放った。


「俺は嘘のアバルドじゃないよ」

「俺は【記憶のアバルド】だ……」


「お前らが相手にしたのは、狙撃のアバルドと同じ、アバルドだよ」


「俺が負けるわけないじゃん、ただの構成員ごときに」


「こんなふざけた奴がっ………」


 バルは一瞬にして、エンブレムの構成員を倒した。

 一瞬の出来事、それでも、その光景は、雨森にとって、何かが変わった一瞬かもしれない。

 決めた。俺はこの人について行く。


「バルさん……俺をこの探偵事務所の助手にしてください」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「俺もお前のその必死な表情、3年前を思い出すよ…」


 お前がアバルドを恨む気持ち、人々を助けたいって思いは、俺もわかってる。

 

 どうして、雨森陽一がこれほどまでに、アバルドのことを殺したいほど、恨んでいるのか。

 それは、15年前に遡る必要がある。


【アトピスの町】


 破滅のアバルドは、そこに突然、現れた。

 触れるだけで人や建物を一瞬にして消滅させる。


 当時、9歳の幼かった雨森陽一。

 何かが消滅するの光景とともに、彼以外の全てものが、破滅のアバルドによって消された。

 雨森陽一だけが奇跡的に生き残り、この現状を理解できていなかった。

 ただその場で、彼は空を見上げでいた。

 両親を探しすために……

 この出来事が、彼を復讐者としての道の、キッカケである。


 破滅のアバルドは必ず殺さなければならない。

 アイツだけは、許すことができない。

 今も奴はどかこかで、人々を苦しめている。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「雨森、落ち着くんだ」


「これは復讐のための戦いじゃない。誰かを守るための戦いだ」


「アバルドを退治することだけが、俺達の仕事じゃない」


「フゥ〜。そのくらい、わかってますよ」

 すみません。

 ありがとうございます、バルさん。


「フン……」


「それじゃ早いとこ、作戦を決めていく」


「アイツの弱点、多分だけど、液体の中にある、核だと思う」

「おそらくあの核で、魔結晶の力をあそこから使っているんだ」


「じゃあ〜核を狙撃すれば、倒せる…?」


「たぶんな」


「ただ、アイツの核は水の体で守られている。弾丸も簡単に止めていた」


 バルさんと作戦を考えている間に、水泡のアバルドが動き始めた。


「オオ〜!!!!!!」


 俺達を探しているようだ。


「………ボウボウ〜」


 住宅街の方向に、直進する水泡のアバルド。


「ヤバい、街の人達が!?」


 俺がアイツを止める!!


「バルさん!今度は俺がアイツをひきつけます」

「その間に、アイツを倒す方法、考えてください」


「俺より、人生経験が無駄に長いんですから……頼みますよ」


「助手、お前が死なない程度にひきつけるだけで、十分だ」


「大丈夫ですよ」


 だって、俺もバルさんとの相棒経験は長い。

 これくらいの時間稼ぎ……こなしてやる。


「正直言って、無茶なバカだよ。現状、良策はない」

 頼むぞ、雨森。


 バルが打開策を思いつくと信頼して、戦う雨森。

 死ぬ可能性は、十分にある。

 けれど、あの時、『バルに助けてもらった命を無駄にしない』という思いが、彼にはあった。


「おい、こっちだ水脹れやろう。いや、違うな〜液体魔人?アバルド!!」


 どうなんだ、お前のネーミングセンスは…?

 あぁ〜駄目だ。

 変なことに頭まわしてたら、水泡のアバルドを倒す方法が思いつかない。


 集中するんだ。

 思い出せ、水、液体、核、弱点、弾丸……

 もし、弾丸がアイツの核を打ち抜けば、倒せるはず。

 アイツの体は、液体。

 外からの攻撃は無効化されてしまう。


 

 このまま長引けば、助手の体力が持たない。

 奴の一部が公園の周りに飛んで、攻撃の範囲が広げてやがる。

 攻撃と同時に水を飛ばし、その水の中を移動して攻撃。

 殺戮コンボすぎる。


 クッソ〜、強すぎ。

 しかも不死身だから。

 核を壊すだけで、倒せるはずなのに、液体の中に入れば、弾丸は止められる。


 俺も水泡アバルドみたいに、移動させることができたら……

 弾丸も自由に、奴の核に当てることができるのに……(!!)


 そう言えば、昔、エンブレムの連中と戦った時に、俺の足に弾丸が直撃したことがある。

 けど、なぜか足に入った弾丸が無くなり、痛みだけが残っていた。

 あの時、捕まえていたエンブレムの構成員は、急に足から血が出てきた。

 しかも、俺の足に当たった弾丸と同じ物が、ソイツの足にも……

 もし、俺の体にモノを別の誰かの、俺と同じ所に、移すことができるなら、奴の核にも。


「助手、準備ができた。今から水泡のアバルドを倒す」


「任せました!!」


 バルさんは水泡のアバルドが出した水溜りに駆け出し、水溜りに触れ、バルさん自身に弾丸を放った。


「バルさん何を!?」


 バル自身に向けて放った弾丸は、なぜか水泡のアバルドの核を貫いた。

 水泡のアバルドは、液状の体を維持することができず、ただの水に戻ってしまった。


「バルさん、どうやって倒したんですか?」


「お前はいつも俺に聞くよな」

「少しは自分で考えたらどうだ……?」


「今回は、バルさんの知られざる能力を知りたくて」


「それは、お前のおかげだ」

「水泡のアバルドを倒したあの技は……う〜ん【不純転送】って名前の技にしよう」


「なんですか、その変な名前の技は?ダサいですよ」


「俺も正直、ダサいと思ってる。だからもう一度考え直そうか…」


「確かに、言いにくいですもんね」


「ところでバルさん、あの技はどういうモノなのですか?」


「この技は俺の身体に入った不純物を触れた対象に、そのまま転送するだけの技だ」


「さっきの戦闘だと、不純物が弾丸。対象が水泡のアバルドだ」


「技の仕組みとしては、記憶の能力を俺の体に弾丸が入ったと同時に、発動させる」


「そして、俺の記憶から弾丸が体に入った事実を記憶から消す」


「そして、相手に消した弾丸を俺と同じに所に送りつける。心臓にな……」


「だが、弾丸が体の中にあった事実は変わらない」


「当然、痛みは残るが、弾丸だけは水泡のアバルドの核(心臓)に転送される」


「少し驚きです。バルさんにも、技があるとは」


「ああ、俺も驚いたよ……」


「あれ?今日は怒らないんですね?」


 バルさんは『弾丸が自分の心臓を貫いた』という事実をこの技で、『弾丸は水泡のアバルドの核を貫いた』という事実に書き換えた。


「ホント、バルさん危なすぎ」


「相変わらず、自分で答えを考えるよな〜お前」「ハァ〜アア痛え!!」


 さっきの技を使うために、弾丸が俺の体に入ったらから、痛い。

 病院、医者、報酬……


「雨森。病院、病院を早く頼む……このまま出血死なんて洒落に、ならない……」


「戦う前に、『特殊課の連中に世話になるくらいなら死んだほうがマシだ』って、言いましたよね?」


「自分でなんとかしてください」


「そんな殺生なこと言わないで、俺を助けてください雨森様」


「じゃあ今回も依頼料は半々で大丈夫ですね?」


「ぐぬぬぬ〜うぅぅ。せめて、6対4で」


「5対5です。俺も体張ったんですから、そのくらいの取り分はあると思います」


「わかりました。その条件でかまいません」

「だから、救急車を早く呼んでくれ〜〜!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【翌朝】

 バルさんを見舞いに病院に向かった。


「オイ!!ちょっとまて。本当に取り分は半々だろうな」


「依頼料が200万だったのに、俺の手元にきたのが10万って」


「詐欺だ詐欺!!この特殊課の犬め!!!」


「俺がアバルドだからって、こんな非道は許されていいはずがない!!」


「よくそんなに悪口が出ますね。バルさん」


「当然の結果だ」


「……ため息なら、自分がつきたいくらいです」


「あの後、公園の修繕、バルさんの医療費、街の人たちへの被害とかで、報酬はほとんど消えちゃいました……」


「自分の手元にきたのは、5万……」


「感謝の気持ちを込めて、バルさんの方に多く渡したんですから、妥協してください」


「まさか、そんな悲惨な事があったとは……」


「それと……自分は独断行動が上から咎められてしまい、しばらく停職処分になりました」


「ハァ?」


「特殊課の寮からも、追い出されました……」


「停職期間が終わるまで帰れません」


「なので、自分はしばらくバルさんの所に、居候することにしました」


「ディナさんには許可をとっています。2階は、大丈夫だと」


「安心してください。バルさんが入院している間は、自分に任せてください」


「いや、停職中に働いたらダメでしょ……」


 そもそも、停職ってなんだ?

 謹慎中じゃないのか?

 だとしたら、なんで寮から追い出されたんだ?

 普通、外出が禁止されるはずだが?


 そんなことより、2階は俺のオアシスだ。

 奴に奪われるわけには……!!

 でも、腹が痛い。

 くそ、俺が諦めることになるとは……


「ちゃんとここのルールを守るなら許してやる」


「仕事の依頼、ディナさんとの時間、もろもろここのルールは、わかっています」


「改めて、今日からお願いします」


「だから、わかっていなだろう!!(悲しみ)」

小説で、バトル系って、むずくね。

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