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黒月家の4兄弟  作者: 雨月時雨
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柊の不安定

「ただいま。ん?柊…か?」

夜の9時を少し過ぎた頃。

俺が仕事を終え帰宅すると、リビングのテーブルに突っ伏して柊が寝ていた。

「あ、京にぃおかえり」

「ただいま」

いつもだったらリビングにいる雅人と創の姿が見当たらない。

「今日は雅人も創もまだ帰ってないのか?」

「うん。2人とも残業だって」

キッチンには夕飯を食べた後なのだろう。柊の食器が洗って置かれている。

「京にぃ夕飯食べる?」

柊は寝起きの目を擦りながら俺に尋ねる。いつから寝ていたのだろう。

少しどことなくダルそうだ。

「いや、自分でやるから大丈夫だ。風呂は入ったのか?」

「うん。夕飯食べてから入った」

今は年度が変わる時期。俺はまだ高校の卒業式が終わっていないため普通に仕事がある。

柊は今春休みで、アルバイトは夏に短期でやっているため今は休み期間だ。

俺は夕飯を皿に盛り、柊の向かい側に座った。

「いただきます。柊、今日は何してたんだ?」

「今日は少し勉強して本読んだりしてた」

「そうか」

俺は夕飯を食べながら柊の話を聞く。

俺たち兄弟の日常の1つに、毎日家に帰ってきた誰かしらが柊の話を聞いて、共有するという仕事のようなものがある。

柊は中学3年の冬にとあることがきっかけで病院に通院している。

かれこれ7年。

今は大学に通いながら短期でアルバイトをしたりしているが、時々しんどくなり動けなくなる。

あまり酷くなると柊自身も辛いため、前もって柊から話を聞き出来るだけ体調の波をキャッチしてあげている。

「勉強はどのくらい出来たんだ?」

「今日はなんか調子悪いのか、10分しか出来なかったんだよね…」

「10分でも出来たらんならいいじゃないか。調子悪いのか?」

「少しね。あ、でも本は読めたよ」

柊の体調を見る上で読書は大きなキーワードになってくる。

柊は元々読書家で、部屋には何百冊ものの本があるが、体調が悪くなると本が読めなくなる。

本が読めないのは軽くはないが、スマホやタブレットでさえも見れなくなったら休ませる事が必要になるが・・・。

「本は読めてるんだな。今日は何読んでるんだ?」

「俺のお気に入りの靴職人目指す子の話の本」

「あぁ、あの映画を見ると原作が読みたくなるって言ってたあれか」

「そうそう。京にぃよく覚えてるね」

俺の家族は基本的にみんな、本を読む人たちでそれぞれの部屋には本がたくさんある。

「今度リビングかどこかに共有の本棚置くのもいいかもしれないな」

「あ!それめっちゃ嬉しい!」

柊程ではないが俺も雅人も本を読む。創は本と言っても漫画や写真集、あとはビジネス本が多いらしい。

柊は本当に色々読むので、だいたい何でも読める。

「今度雅人たちにも話しておくな。今日は調子悪いって言ってたが最近からか?」

「んー。どうだろう…」

「最近本は読めてたのか?」

「ここ数日でそこそこ読めるようになったけど、先月とかはひと月で4冊だった」

ひと月で4冊だといつもより少ないな…

柊は多いとひと月で20冊近く読む。

「読む本はあるんだろ?」

「読む本は沢山あるんだけど、本棚の前に立っても読みたい本が分からなかったんだよね。あと、あんまり読みたい気分にもならなかった。」

「漫画は読めてたのか?」

「それもあんまりかな」

体調は結構ギリギリのようだ。柊は小説が読めなくても漫画が読めるということもあるが、今回はどちらも難しかったようだ。

今は春休みだからまだいいが、大学が始まっていたらしんどい時期になっていただろう。

「病院でもその話したか?」

「確かしたと思う。その時は『4冊でも読めてるんだからいいんじゃない?』って話した」

今日は3月に入って1週間が過ぎたほど。

「今月になってからはどうだ?」

「今のところ3冊読めてるけど少し停滞し始めてるかも。今日もあんまり読めてない…」

「そうか。明日はどうするんだ?」

「んー特に出かける用事もないし家で過ごそうと思ってるけど…」

「1人は不安か?」

「不安って訳じゃないけど、何しようかなって」

「ゆっくりしてもいいんじゃかないか?録画してるアニメとか観てもいいし映画とかもいいんじゃないか?」

「んーそんな気分でもないんだよね」

そんな話をしているとスマホが鳴った。

メッセージが来た音だ。

『京一兄さんもう家?』

夕飯を食べてるとメッセージを返すと柊の体調を尋ねてきた。

悪くなってはいないが、どこか不安定になっていると送ると、

『明日休みになったから柊のやりたい事しようって伝えて。今から帰ります』

「雅人が明日休みになったから柊のやりたい事しようって」

スマホのメッセージ画面を閉じてから柊に伝える。

「え!雅にぃ明日休みなの!そしたら本屋さん一緒に行こうかな。最近雅にぃと本屋さん行ってないし」

「気分転換にいいんじゃないか?」

「あーでも元気だったらにしよっと」

「無理はしない方がいいからな」

「うん」

そう言って俺は食器を手にキッチンへ行く。

食器を洗っていると、柊がテーブルにまた突っ伏した。

「そんなに体調悪いのか?」

「なんか疲れてるみたい」

「今日は早めに寝た方がいいんじゃないか?」

「うん。そうする」

「薬ちゃんと飲めよ?」

「うん。京にぃおやすみ」

そう言って柊は自室に戻った。

薬を飲んで寝れば少しはマシになるだろうが、明日のことも心配だ。

柊の様子を雅人と創にメッセージで送り、俺は風呂に入る準備をする。

明日は雅人がいるからそこまで不安でもないが、2人だけも少し不安である。

明日はなるべく早く帰ろうと決め風呂に入りに行く。







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