緑の巫女、友ができる:2
木の国、ユピテル 街道
チュウケイとは次の街まで一緒に行くことになった。
モリガンに食料を分けてもらったお礼ということで仮依頼で護衛をすることになった為だ。
彼自身の荷物も野盗に盗られていた事もあり、旅を続けるには装備を整える必要があるだろうと考えてのことでもある。
「2、3村を戻ることになるけど、あのまま強行してもまた行き倒れるだけだしな」
あっけらかんと笑うチュウケイにモリガンも同意する。
「なんなら目的地まで送ってもいいぜ?」
「流石にそこは大丈夫だよ」
「だよなぁ。ちなみにどこまで行くんだ?」
「クロノスの城下町まで」
「あー、この時期は収穫祭だもんな」
「そうそう。ケンジに今回の事話したら誘われたんだ」
「へー、黄の巫女様直々のお誘いかぁ。やっぱり巫女同士仲が良かったりするんだな」
チュウケイがそう言うと、モリガンはなんとも言えない顔をして首を傾げた。
「ありゃ?そうでもない?」
その顔にチュウケイもはて?と首を傾げる。そのまま黙ってモリガンを見ていると、彼は眉を寄せたり明後日の方に視線を向けたり、コロコロと表情を変えていたが暫くして
「ケンジは…癒し枠かなぁ、ジャンヌとホクサイは反りが合わないみたいだし、ソロモンは元々緑の巫女候補だったから俺と話が合うけど仲が良いって程では…ないなぁ」
もそもそとそう言った。
その様子にチュウケイも「色々あるんだなぁ」とだけ言って深くは追求しなかった。
モリガンもそれ以上は何も言わずに微妙な沈黙が流れる。
が、それも長くは続かなかった。チュウケイが別の話題を出したことでまた会話が弾んだ。
そうしているうちに村に着き、宿を取ってその日は終わった。
翌日、朝日とともに起き出した2人は朝食もそこそこに出発した。
「ダメです」
「そこをなんとか」
街に着いた2人は、足早に冒険者ギルドに向かった。ここまでの道中を事後報告という形で依頼し、チュウケイの路銀の足しにするためだ。
「そもそも、高ランク帯の巫女様が中ランクに護衛される状況に無理があります」
「そこはほら、僕ということを伏せてどうにかできないかな?」
しかし、チュウケイのランクとモリガンのランクの関係で申請が通らないという事態に陥っている。冷たくあしらう受付嬢に頭を下げているが、仕事に忠実な彼女は首を縦には振ってくれない。
「こうなったら…」
意を決した顔で、モリガンが鞄を漁る。取り出したのは1枚の写真だった。
「そ、それは!?」
「そう、ホクサイの貴重なオフショット。昔出回ったけど殆どが彼女の手によって焼かれてしまったと言われているその生き残りさ」
写真を見た受付嬢の目の色が変わる。
「君はホクサイのファンだったよね?どうだい?無理を通してくれたら、コレをあげ…」
「申請、承りました!」
モリガンの言葉が終わらないうちに、受付嬢が書類を書き上げる。それに不備がないかザッと目を通して、指定の報酬額をチュウケイに渡した。
「ありがとう。約束通り、コレは君のものだ」
受付嬢には写真を渡して、2人はギルドを後にした。