「勇者の子孫」だなんて呼ばれたくない! ~「試練の時」を乗り越えた彼らの子孫の物語~
「試練の時」に嵌まってしまった者たちの子孫のお話。
ご先祖様が偉大?だと子孫はいろいろと迷惑しますよね?
昔のことだから、いろいろと妄想が膨らんで…
僕の名前はルドウィック・コーウェン。コーウェン侯爵家の男子だ。
この国では四英傑と呼ばれる人達がいる。
今から100年程前「試練の時」という摩訶不思議な状況に嵌まる貴族令息が定期的に現れる現象が起きていた。
「試練の時」とは高位貴族の令息が特定の下位貴族令嬢をチヤホヤしたり、追いかけ回したり、寵を得ようと私財を投じたり、果ては己が婚約者に婚約破棄を突きつけたり…。
要は通常の常識ある貴族は取らないであろう行動をする者たちの出現する現象である。
これは、全員がかかる訳ではない。己の中に不満があったり、不安があったりして心が弱い者がかかると言われている。誘惑に負けやすい質であるとの証明にもなると言われていて、貴族の資質を問うものとして、試金石にもされていた時代もあったそうだ。
だが、「試練の時」にかかった令息の家族はたまったもんじゃない。嫡男だったり、一人息子だったりが、かかってしまったら、下手をすると家の存続すらも怪しい状態に追い込まれるのだ。
兄弟が「試練の時」にかかった事で誘惑に負けやすい家系だと思われて、婚約が解消となった令嬢もいたと言う。
そんな「試練の時」を乗り越えて、特効薬を作り、開発させ、予防接種を実施し、100年後の今は「試練の時」は過去のものだと言わしめる程の功績を打ち立てたのが四英傑である。
今の予防接種の形になったのは、70年程前でかなりの試行錯誤があったそうだ。今でこそ腕に注射をするだけで済んでしまうが、100年前は、予防接種はかなりの覚悟を試されるものであったらしい。
当時の記録によると、予防接種を受ける際には騎士により殴られてから気を失ったすきに打つとか、睡眠薬を飲んでから打つとか、本人の気が付かないうちに打つというのがセオリーであったらしい。
それであっても打った後は、3日は熱を出して寝込むとか、1週間は歩行が困難になるとか言われていたそうだ。
そんな言われ方をされている予防接種を四英傑は直接、患部に刺したと言うのだから、今の若い僕たちからすれば「勇者」だ。
確かに、切羽詰まっていたとは言え、偶然にしてもその勇気には脱帽する。
が、僕を指して「勇者の子孫」とは言わないで欲しい!
生暖かい目で見ないで欲しい。
僕はそんな蛮勇を起こさない。
偉大なる「マクスウェル・コーウェン」よ!あなたの偉業は認めます!
でも、お願いだから僕を「勇者の子孫」とは呼ばないでくれ!!
いや、実際考えたら、痛いですよね。
痛いどころじゃないか…
リクエスト編です。
感想、ありがとう御座いました!