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魔神視点

魔神視点です。

日本とは遥か遠く離れた国が僕の生まれた所だ。生まれたという言い方には語弊がある。正確に言えば作られたが正しい。

 最高の技術と職人、そして最高級のアレキサンドライトや金をはじめとした貴金属を使って作られた首飾りが僕だ。

 当時では僕を所有することはそれだけで力のある家だということを証明していたし、誰もが僕を欲しがった。

 そして僕は多くの特権階級の身分の花嫁を飾ってきた。

 多くの人に愛され、求められた僕は気が付いたら人間と意思疎通を図れるようになっていた。そして年月が経つにつれて不思議な力を持つようになっていた。

 それからは持ち主の話相手になったり、その力をもってして僕の持ち主たちに繁栄をもたらした。

 だけれどもある時代の持ち主が没落して財産を失ったのがきっかけで僕は手放された。

 それからは戦争や家督争いの中で様々な家に渡っていた。

 長い年月と杜撰な手入れは僕の装飾品としての価値を下げ、本体である首飾り自体も劣化していった。そんな僕はかつての栄光を失い、前は美しいともてはやされていたけれど現代では誰も僕に見向きもしなくなっていた。

 古臭くて小汚い首飾り。それが僕の評価だった。かつては王家で持て囃された首飾りと言われても誰も信じはしないだろう。

 そして僕はいつのまにか東にある島国のアンティークショップで二束三文の値で売られていたのだ。

 それからはロクに手入れされることもなく、ただただ退屈な日々を過ごしていた。

 だけれどもそんな退屈な日々を覆す運命的な出会いを僕は果たすことになるのだ。その時に僕は盲目って言っていいほどの恋に落ちる。首飾りの分際で人間に惚れるのはおかしい話だ。だけど僕の心が輝くような気持ちに襲われた。

 その相手が万里だった。

 出会いは万里がまだ四歳の時だった。

 彼女は優しそうな両親に連れられて僕のいる店にやってきた。

 彼女の両親と共に店の商品を見ていた。


「お母さん見てこれすっごいキレーだよ。このネックレス素敵!まり、これ欲しいの!ねえ買って買って!」


 彼女は僕が宿ったアレキサンドライトでできた首飾りを手に取る。

 小汚い首飾りに目を輝かせて綺麗という彼女の存在が嬉しかった。そしてこうやって求められたのは数百年ぶりだ。

 枯れていた心に恵みの雨が降り、オアシスのように鮮やかな色がついた。

 一目惚れだった。まだ幼い子供の女の子の笑顔に僕は落ちてしまったのだ。ふくふくとした血色のいいほっぺにキラキラに輝く茶色い瞳。可愛らしい声。全てが欲しいと思った。

 かつての主人が言っていた『恋は落ちるもの』

 今やっとその意味がわかった。彼女と一緒にいるためならなんだってしたい。


「そうね。でも万里、勝手にお店の商品触っちゃダメよ。それにこのネックレスは買ってあげられないわ」

「やだー買って買って!」


 そう言って彼女は駄々をこねはじめてしまう。彼女はしばらく床にへばりつき、買ってくれるまで離れないと言い出した。

 そんな様子を見かねた彼女の両親はため息をついて僕を買って行った。

 僕は万里の家に迎えいられる事になる。

 それから僕は常に万里を見ていた。

 彼女は幸せに満ちた女の子だった。裕福な家に生まれ、優しい両親に愛されたそんな女の子。そして起こる出来事全てに楽しさや喜びを見出せる性格。明るく愛嬌がある彼女は通っている幼稚園にも馴染んでいるらしく常にニコニコとしていた。彼女は放っておいても自分の力で幸せになるだろう。

 そしてワガママを言って買ってもらった古めかしい首飾りの事なんて忘れて行くのだろう。実際に万里は飽きっぽい女の子だ。

 万里の部屋には見向きもされなくなった白いウサギのぬいぐるみが転がっていた。

 このぬいぐるみはついこないだまで万里の宝物で万里は肌身離さずこのぬいぐるみを持っていた。しかし、新しい熊のぬいぐるみを買ってもらってからはそっちに夢中で前のぬいぐるみは放置されている状態だった。

 僕もいつかこうなるのだろうか? ウサギのぬいぐるみのように部屋の隅に放置されて埃を被って万里の目に留まることはなくなってしまうのだろうか。

 だけど僕はもうそんな思いはごめんだ。必要とされず、存在するだけの日々はもう嫌だ。

 万里を自分のものにしてしまいたい。万里に必要とされて愛されたい。その分僕は同じだけ、いいや何十倍の愛で万里を包んであげる。そして僕の全ても万里に捧げる。

 万里が欲しい。絶対に誰よりも幸せにしてあげる。

 その前に万里が僕を求めてくれる状況に持って行かなくてはならない。そうするにはどうすればいいか。

 そんなの簡単だ。彼女を不幸にしてしまえばいい。不幸があるから幸せの瞬間は何倍にも引き立つものだ。

 今の彼女は幸せしか知らないだろう。無垢な彼女に襲いかかる不幸は彼女の心に消えない傷痕として残るだろう。

 それにつけ込む。そして僕が存在することで幸福が約束されていると彼女に思ってもらう必要がある。

 そうと決めたら行動は早かった。

 まずは彼女の父を不幸な事故に見せかけて再起不能に近い状態にした。

 大好きなお父さんが突然事故で重傷になったという事実は万里の中では辛い出来事になった。

 それから万里はお父さんが入院している病院で毎日のように泣いていた。顔をぐしゃぐしゃにして泣いている幼い子供を見るのは僕も気分が良くなかった。

 だけどこれもこれから幸せになるために必要なことだ。

 万里しかいない病室で僕は彼女に契約を持ちかける。


「どうしたの可愛いお嬢さん?君はなんで泣いているの?」


 彼女はこちらを振り向いた。涙に濡れた顔に僅かに期待の輝きが見える。

 後は簡単だ。幼い彼女に小難しい言葉で語りかけ契約させてしまえばいい。

 実際に可愛い万里はあっさりと契約に応じた。僕はわざと契約の際に対価の部分をぼかして説明した。

 対価は万里の人生全てだ。それをこねくり回した言い方と選択への時間をあまり与えないことで万里の判断力を削ぐ。

 万が一にでも対価を知って万里が契約を結んでくれなければ何の意味もないからだ。

 万里は僕の思惑通りに契約に応じてくれた。

 次は彼女の母親に僕は目をつけた。彼女の母親を病気にした。

 母親の病気を知った万里は予想通り僕に懇願してきた。


「魔神様、お願い。お母さんを治して」


 僕よりも小さい万里は見上げるようにお願いをする。

 それからも僕は万里の願いをちょくちょく叶えてきた。僕なしでは生きていけないようにするためにたっぷりと甘やかした。たくさんたくさん願いを叶えた。

 万里の二十歳の誕生日に僕は万里自身を貰う。彼女が二十歳になる日が楽しみだ。

 十四年越しの計画だ。十四年という歳月は僕からしたらあっという間だけど人間である万里からしたら人格形成に繋がるくらいには長い時間だ。

 きっと彼女は僕の要求をあっさりと受け入れるだろう。

 君と僕のハッピーエンドはもう目の前に見えていた。幸せにしてあげるね、僕の運命の人。

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