反省6:皇帝にポロりしちゃいました
お久しぶりです。梅雨と自粛で気分が滅入って気が付けば更新が一か月止まってしまいました。これから徐々にペースアップしていきたいと思います。
「ううっ……」
「おい! おい、嬢ちゃん大丈夫か!?」
「ふん鬱陶しい女だ。こんな奴らがうろついているとは面倒なことになりかねん」
「しかし、こいつらどうしますか?」
「見られたからには放っておくわけにはいかんだろう。少々手違いもあったが、このまま連れていくしかあるまい」
「——行くぞ! 今こそあの憎き皇帝の首を討ち取る時だ!!」
「「「ウォオオオオオオ!!」」」
失敗しました。
まさか反逆のタイミングに居合わせるなんて……!
でも仕方がないんですよ。普通上陸した国が大国に反旗を翻す準備をしていてうっかりそこに遭遇するんなんて思わないじゃないですか!
「……すまないな。あんたらに罪はないんだろうが、我々ももう限界なんだ。国を挙げていけば皆殺しにされる。耐えられないからと言って幼い子供や家族のいる者を巻き込むわけにはいかん。ひっそりとそれでいてある程度の力を持った人間が立ち上がらなければならない」
「そのうち、ここと関連付かない場所で解放するからそれまで我慢してほしい。悪いようにはしないから」
「……まあ、そっちのあんちゃんの方は海賊だからちょっと雑になるかもしれんがな」
「むー! むむむううう(仕方ないですね)!」
「……おい、今俺を見捨てなかったか?」
大丈夫です。きっとなんとかなります。ええ、たぶん?
「目を逸らさないでくれ。……あぁ、嬢ちゃんに関わると本当に碌な目に合わん。可愛い部下達よ、お前達は大人しく待っていてくれよ。くれぐれも巻き込まれるな」
人を災厄みたいに。失礼ですね。
最後の魔法道具を探すために手っ取り早く大国から攻めようと帝国を目指したものの、属国の人達の不満が爆発。う~ん、これだけだと巻き込まれた感は強いんだけど、最近のことを考えるとこれもあの魔族あるいは別の魔族が関わっている可能性があるんですよね。
だから、迂闊に離れるわけにもいかないというか……。
ただ、彼らも被害者だと考えると私のギロチンの力は使えないような気がしますね。
あれ? ということは簡単には逃げられない?
ま、まあ一応穏便に解放してくれるという話でしたし? 大丈夫大丈夫。
「——フハハハッ! 愚かな下僕風情が偉大なる帝国に歯向かって本気で勝てると思っていたのか!」
——なんて思っていた私が馬鹿でした。
なんと反乱軍はあっさりと帝国兵に返り討ちに遭い、私達はそのまま帝国の戦利品として捕まってしまいました。
「あ、あのう私達はこれで……」
どうやら帝国に勝てるわけがないと思った一部の人間が密告したようですね。賢明な判断と言えばそうですけど、その後のことを本当に考えたのでしょうか。
奴隷根性のまま生活を続ければ再び耐えきれなくなった人間が反旗を翻すのは目に見えています。今回のように失敗する可能性もありますが、やる前に潰された記憶は残るはず。次に立ち上がる力があるといいのですけど……。
「——将軍、そのような者に関わる必要はありますまい。むしろ陛下に一刻も早く心配事の種がなくなったことを報告する方がよいのではありませんか?」
「……まあ、そうだな。本来ならこの程度の奴らに褒美を与えるのも面倒だ。お前があとはすべて処理しておけよいな?」
「……かしこまりました」
「では、先に戻るとしよう」
ああ、これは駄目だ。
密告者はおそらく殺される。名目は反乱に関わった者は例外なく処刑するというところか。最後の始末を部下に押し付けるなんてなんて卑怯な。
「ああ、そうだ。その捕虜共もお前が連行して来い。汚らわしい荷物を持って陛下の御前に行くわけにはいかんからな。男はともかく女の方は見れるぐらいには整えておけ」
まあっ! 失礼しちゃいますね!!
これでも見た目は結構良い方ですよ!
わかりました。
この将軍は完璧ゴリゴリな帝国人。それもエリートと呼ばれるタイプの生粋の血統主義者。人間を皇帝を頂点とした帝国上層部の人間と自分よりも身分の低い者に分けている。それも自分より下の人間はほぼ人間ではないと考えるタイプですね。
ああ嫌だ嫌だ。こういうのが普通に上層部にいるから階級主義は嫌なんですよ。
「——さて、聞いた通りお前達の処分は私に一任された」
若い軍人さんはそう告げると剣を抜き去り、密告者を切りつけた。ただし、髪の毛や軽く血が出る程度に。
「これで戦闘の形跡は出来た。将軍が褒美を持って行ったからお前達には少ないが褒美を渡す。今後は大人しく暮らせ」
おや? この人は良い人かもしれない。
一応処分をしたという実績で上に言い訳をし、褒賞を自分で出すことで文句を言われなくしている。
ただ、気になるのは渡しているお金が普段持ち歩くには少し多い金額だと思う。
もしかしたら、反乱とその後の流れまで読んで用意をしていたのかもしれない。
「……まさか聖女がこのような場所にいるとは思いませんでした。皇帝陛下にちゃんと見ていただかなくてはなりませんね」
うわっ、完璧に切れ者だった!
「陛下、これなるは隣国からの貢ぎ物。最近、話題になっている聖女でございます」
「ど、どうもご機嫌麗しゅう皇帝陛下」
綺麗なドレスに着替えさせられた私は引きつった笑みで皇帝陛下に挨拶をする。聖女を貢ぎ物にするような国があってたまるかという思いと皇帝が私の想像よりも遥かにアレだったから。
「うむ。苦しゅうない。それにしても聖女か。ちょうど見てみたいと思っていたのだ! 後で籠を用意しておけ!」
「その役目、この私にお任せを! 陛下が喜ばれるような立派な籠をご用意して見せます!」
「そうかそうか! ならば将軍に任せよう。それにしても隣国までいきなり飛び出していくから何事かと思ったら貢ぎ物を受け取りに行っておったとは……これは朕を喜ばせるためのサプラーイズというやつだな!?」
「「「もちろんでございます!!」」」
「いや、馬っ鹿じゃないの!?」
あっ、つい思ったことが口をついて出ちゃった。てへっ。