表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/24

第10話 窮地のレンジャー

「こんにちは。何日ぶりかしら? あの戦いのときは世話になったわね」


「あ、あんた、ど、どうしてここが……?」


 分かったんだ、と言おうとしたが口の中がカラカラでうまくしゃべれない。

 だが、オレがセリフを最後まで発するまでもなく、カノア・アルムガントは微笑を浮かべてオレの質問に回答した。


「冒険者ギルドに問い合わせたのよ。レンジャーのザムザはいまどこにいるかって。最初は『分からない』って返事だったけど、あの情報屋のポルって三十路男にお金を払って尋ねたら、ごくあっさりと教えてくれたわ」


 あの野郎!

 オレはやつの顔を思い浮かべ、空想の中でポルの首を締め上げた。


 なにか面白いことがあったら教えてほしいと思い、やつにだけはオレの居所を教えていたのがあだになったか。

 しかしまさか、この姫様がみずから町の情報屋と接触するとは思わなかった。仮にも王女だぞ、おい。


「し、しかし姫様。……なぜオレが、レンジャーのザムザだとご存知で?」


「お前が自分で名乗ったじゃない。リーネの部屋に飛び込んできたとき、『かつて毒からお助けした、レンジャーのザムザです』って」


「う……」


 名乗った。

 ……確かにオレは名乗った。そうだった!


 オレとしたことが、なんてザマだ!

 くそっ、リーネ姫のこととなると冷静さを失ってしまう!!


 ま、待て。

 落ち着け、オレ。

 そもそもこの姫様はここに何の用事があって来たんだ? それを確かめねば――


 と、オレが思ったその瞬間だ。


「人探しをしているの」


「人探し、だと?」


間者スパイを、探しているのよね」


「間者?」


「そう。今回の戦争、アルムガント兵の弓の弦が、大量に誰かに切られていたそうよ。何者かの仕業であることは明白だけど、きっと間者スパイが紛れ込んでいたんだわ。で、その間者スパイの正体は誰なのか。個人的に興味が湧いてきてね……。どうせヒマだし、それを調べているのよ」


「調べる……たったひとりで?」


「ひとりが一番手っ取り早いでしょ。私より有能な人間なんてこの国には誰もいないんだから。単独で動くのがもっとも合理的で、かつ楽だわ」


 仮にも王女だというのに、大胆なことだ。

 まあ、あれほどの魔術が使えれば、そりゃ他人は全部無能に見えるだろうし、護衛もいらないだろうが……。


「――で、ザムザ。お前、間者スパイのこと、心当たりはないかしら? ……ところでこころみに問うけれど、お前はそもそも、どうしてあのとき、城の中にいたのかしら? レンジャーのお前が、城の兵士の服を着て、妹の部屋に飛び込んできたのはどうしてかしら? 教えてほしいわ。私ね、それを聞くためにここまでわざわざやってきたのよ」


 カノア・アルムガントは、ニヤニヤ笑いながら問うてきた――

 この女、オレのことを疑っているのか……!?


 どうする。殺すか。

 ……どうやって?

 敵の軍隊を魔術ひとつで蹴散らしたこの化け物女を相手に!?




 くそっ、厄介なことになってきた!!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ