第39話 勇者コムギ=ゴールデン
今回はコムギの語り口調です。ブックマーク評価などお願いします。
私はイエロートパーズ領、ビスタウンの出身である。父親はビスタウンの町長。ビスタウンはある程度裕福な街でその中でも私達町長の家は裕福だった。
我が家にはこんな言い伝えが残っている。
「勇者サンシャイン様がこの家により、道を聞いた。そして、道を教えた見返りとして、サンシャイン様がこの家の者にゴールデンと名乗ると良いという旨を話した。」
というものだ。
それから代々この500年もの間ゴールデンの姓を受け継いでいる。
私には兄がおり、兄の名はベンジャミン。今では文通もできていない。
父が兄に対して厳しくし過ぎたことが原因で、母と喧嘩になり、母と一緒にレッドローズに行ったと、父から聞いた。私が2歳、兄が3歳の頃の話だ。
母は優しかったらしい。太陽のように明るい笑顔を振りまき、この街の看板とも言える人だった。
私は母に会いたかった。しかし、その望みは叶わない。10年後、私は勇者として祭り上げられた。そして、兄も勇者になったらしい。
そのことが最後の文通だった。数年前の兄はレッドローズで可愛い子がいると言っていた。しかも、その子は魔界育ちらしい。
会ってみたい。その一心で私は魔王城まで、直行した。しかし、町長の1人娘ということで、街の行政を叩き込まれ、出ることができたのは6年後、私は18になっていた。
私は魔王城目指して、街の景色もすっ飛ばして、風のように駆け抜けた。あっというまにニコタウンまで抜けた、ここからはひと月だ。
魔王城までの最後の街である、サンゴーズタウンにより、荷物を整え、魔王城に乗り込んだ。
ちなみにサンゴーズタウンが最後の街であるが、もう一つ最後の街がある。それが、ブラックローズタウンだ。
その街を通るルートがたしかに最速ではあろう。しかし、関所が多く値段がはる。だからこそ、遠回りだか、関所が少なく安いサンゴーズタウンが魔王城への正規ルートだ。
馬車の乗車賃もこちらの方が安い。スミレはそのことに気づかず、高いルートで帰っていたのだ。
さて、魔王城には着いたが、魔王の間のドアの前で私はうろちょろしていた。魔王の間から明らかにイケメンであろう声が聞こえたのだ。
「仕方あるまいよ。スミレは今日から休みだと聞いた。きっと戻ってきてくれるだろう。」
「そうですね。では、お部屋の準備などをしておきますので、書類の処理お願いします。」
「わかった。大義である。」
話していたであろう人が出てきた。そして、話しかけて来た。
「大丈夫です。お行きなさい。今なら大丈夫です。」
「ありがとうこざいます」
キョドッてしまった。話しかけてきた人もメガネクール系のイケメンだったのだ。
私は意を決して入ろうとした。すると気づいてくれたみたいだ。
「どうした。勇者か?」
威厳のある声がする。
緊張するけど言わなきゃ。
「そうですね。勇者です」
我ながら声が細い。
「何しに来た」
威厳のある声は重い。
「あなたを倒すつもりだったんですけど、侵略とかしてますか?」
我ながら何聞いてんだろう。
「いや、前の代からしてないみたいだ」
普通に答えるし。
「なら、ここで住んでいいですか?」
聞かなくてもここにいたいと思った。
「なんでそうなった?結婚でもする気か?」
きっとこの人が魔王だろう。
「だってイケメンじゃないですか。魔王様」
急に口調が砕けたのは緊張の糸がぷつりと切れたからだ。魔王という認識で良かったみたいだ。
「勇者よ。それでいいのか?。本当にいいんだな。可愛いし、良しとするか」
魔王さんが言った。
「やったー」
心が水素のようにフワーっと浮いていくようだ。そして、ポンっと音を立てて現実に戻ってきた。
「お主名前は?常に勇者と呼ぶのはどうかと思うてな」
魔王さんが言った。
「私は、コムギ=ゴールデンです。イエロートパーズから来ました」
頑張って名乗った。イエロートパーズと言ってしまったが、実はビスタウン出身であるという必要もなさそうなので、こうなった。
数日後、スミレという人が帰って来た。魔王さんは昼も夜もずっとスミレさんの話をしていた。そして、スミレさんがお兄ちゃんの言ってた「可愛い人」かもしれないと思った。
そして、そのスミレさんに会う前になぜか兄がいた。脳内にクエスチョンマークの花畑ができていた。
「え、コムギ?なんで?」
ベンジャミンが言った。
「あー。お兄ちゃん。久しぶり」
「大きくなったなー。まだ、あの親父の元にいるのかと思ってた」
ベンジャミンが言った。
「私だって勇者だよ。魔王討伐に来たんだよ」
私が言った。
「で、討伐できたか?やったと言ったらザマァの言葉を君に贈ろう」
ベンジャミンが言った。
「討伐は無理だったけど、屈服させたよ」
コムギが言った。私だけど。
ベンジャミンと魔王は顔を見合わせ全力で叫んだ。
「は?」
魔王は疑問形で、ベンジャミンは困惑した声を上げた。コムギは真意を伝えることにした。
「魔王さん私のここに住むって提案と告白受けてくれましたよね?」
魔王はやっと理解したようだ。
「なるほど。自分の提案を受け入れさせたから屈服させたということか」
「そうですよ」
コムギのその答えを聞き、ベンジャミンは納得しかけて、思いっきりツッコミを入れた。
「なるほどな。って、やっぱりなるかー。ならんよな。お前結婚するのかよ。」
それはそうであろう。自分より先に妹が結婚を決めたのだ。しかも、結婚相手は魔王だ。
ベンジャミンのツッコミでその場にいた人達は笑っていた。ベンジャミンよ、妹は強いなっと。
その後、私はスミレさんと会った。本当に綺麗と可愛いがバランスよく入った容姿だった。
あどけない表情と、大人だなっと感じる胸。アメジストの様な輝きを持つ紫色の目とスミレ色の髪。そして、おしゃれな服のコーディネートとマント。
まるで、お人形みたいだった。私はボーっとしていたらしい。スミレさんがあどけなさの残る澄んだ声で話しかけてきた。
「どうされました?私はスミレ=ヴァイオレットです。初めまして」
私は緊張していた。なぜなら可愛すぎるのだ。年は4つほど下だろうか。抱き枕にしたいほどである。
彼女の身長は私より少し低い。私も自己紹介しないと。
「コムギ=ゴールデンです。初めまして、スミレさん。あと、横の男性は?」
スミレさんがまた澄んだ声で、
「アルベルト=ストーンズさんです。かっこいいですよね?」
たしかにカッコ良かった。180センチは下らないだろう高身長。甘いマスク。
アルベルトが自己紹介をする。
「アルベルト=ストーンズです。よろしく、コムギさん。」
声もカッコ良かった。お兄ちゃんにはないものだ。お兄ちゃんはツッコミのセンスは抜群だ。さすが本場レッドローズ勢である。
ベンジャミンが口を開く。
「アルベルト、お前どこ行ってたんだよ。大広間行く前にトイレに行くっつーから待ってたけど、待ちきれずに先に来てしまったんだぞ。」
アルベルトが答える。
「どのくらい待ってた?トイレ行くだけでなく、スミレさんと一緒に居たくて」
スミレさんが驚いた顔をしている。
「私でいいんですね。アルベルトさん。」
「あぁ、もちろんさ。」
ベンジャミンがツッコミを入れた。
「お二人さーん、見えてますかー?」
今回は緩めのツッコミだ。どうやら2人とも恋は盲目タイプらしい。その後、茶会もとい花見をすることになった。
花見をして、1週間後には魔界一武道会をするみたいだ。皆楽しそうだ。
私はメイドの見習いとして、ミサさんにお世話になった。また、魔王さんと一緒に寝てるうちに、身ごもった。魔界一武道会の数日前だ。
魔王さんが酔っていたので積極的に攻めてみたのだ。
それから一年が経つ頃、スミレさんが二年生になる頃子どもが生まれた。待望の第一子だ。しかも、女の子だ。
魔王さんが名前を考えてくれた。
「紫陽花なんてどうだ。スミレからの連想になるが。もちろん、直系だ。ヴァイオレットを名乗らせる。」
子供はスミレさんと同じ目と髪の色だった。どうやらスミレさんは拾われたらしい。
「アジサイですか。たしかに紫ですが。アメジストとかはどうでしょう?」
「アメジストか。お主の金のイメージとわしの紫のイメージがあっておるな。よし、アメジストしよう」
ちなみに、スミレさんを名付ける時は四天王と魔王さんで考える会議を開いたそうだ。そして、魔力もみんなで分け与えたようなのだ。
「私のアメジストもスミレさんと同じように愛してくれますか?」
魔王は確信を持ってこう言った。
「もちろんだとも。才能の差はあるかもしれないが、愛の差は無い。ちなみにスミレが異常なだけだ。あの年でレッドローズ協会の本と魔王城の本のほとんどを読んだらしい。まだ、魔王城のは読みきれてないみたいだが」
スミレさん。凄い。そう思っていると、魔王さんのスミレさん伝説が止まらなくなっている。ベンジャミンやアルベルトさんも加わりカオスだ。
来年この子が1歳になる年も帰って来るのだろうか。楽しみでならない。




