第2話 父として
さて、子供を連れ帰った魔王は困っていた。というのも、この子供に名前がないのだ。
そこで、彼は四天王と側近を広間に集め会議を開くことにした。最初に口を開いたのは魔王だった。低くカッコいい声でこう宣言した。
「これより第一回子供に名前をつけようの会を始める。」
一同も口を開き返事をした。
「はい。」
「名前を思いついた奴から言っていけ。」
魔王が名前を考えさせた。
火の四天王ブレイズは紫のイメージからすぐに思いついた物を言った。
「ナス」
水の四天王アクアも同様に思いついたものを言う。
「ラベンダー」
側近はヴァイオレットが指す色の名前を言った。
「スミレ」
「ほかに意見はあるか。」
魔王は威厳のある声で意見を求めた。すると側近がそもそもの疑問を口にした。
「そもそもなぜ子供をひろってきたんですか。」
魔王が威厳のある低い声でこう答えた。
「拾ったのではない。知り合いから頼まれた。
紫は不吉だが殺すのは忍びないからとな。
で、名前の件じゃが、ラベンダーかスミレが良さそうじゃ。ワシ的にはスミレじゃな。」
「ならスミレと名付けましょう。」
側近は壮年ながら嬉しそうにそういった。
「ではこれで終わる。皆の者大儀であった。」
魔王の威厳のある声によって会議は終わった。
こうして、赤子はスミレと名付けられる事になり、四天王と魔王が協力して育てることとなった。
この世界では1歳までに注がれた魔力の多さによって使える魔法の属性やその数、強さが変わる。
そのため、ある日は魔王によって闇の魔力を注がれ、
またある日は火の四天王ブレイズによって火の魔力をまた別の日はアクアによって水の魔力を、ほかに土の四天王グランドに地の魔力を、側近ライトによって光の魔力を注ぎ込まれていた。
それを繰り返すこと約1年が経つ頃、スミレも魔法が使え始め、立つことも話すこともできるようになっていた。
そこで四天王や魔王は魔法を実戦の中で使えるように模擬戦などをさせるようになっていった。もちろんメイスを与え、魔法を主軸に戦えるように育てるつもりであった。
しかし、剣や槍などの近接攻撃もできなければならないということでブレイズはメイスで剣に勝てるよう魔法を封じる稽古をさせるよう魔王に進言した。
「確かに必要であるだろう。無茶はさせんようにな。あれはまだ2歳にもなっておらん。」
魔王は必要性を認めた一方で無茶はさせないように言った。
「あれは化けますぞ。」
ブレイズは早くもスミレの才能に気付いていたようだ。
「そうか。よし、剣に対する稽古もつけよう。ついでに魔封じの呪文もな。あと解除もできなければ。」
魔王はノリノリでもりもり稽古をつけようとしている。するとスミレが入ってきた。
「私、魔法、好き。私、魔法、強くしたい。」
まだ、文法が覚束ないが意思表示をするスミレ。声はとても可愛い。
「ということらしい。魔法を強くしよう。」
魔王はスミレの意思を尊重した。
2年後3歳になったスミレは魔王を凌ぐ魔力を持ち魔法の威力も上がっていた。
また、側近からは主に光の回復魔法や神聖魔法、魔王からは闇の攻撃魔法や即死魔法、さらに闇の回復魔法を習っていた。加えて、四天王それぞれからそれぞれの属性魔法を習っていた。