第19話 約束
第19話 約束
前の晩そんな事があったため、アルベルト以外は全然眠れていなかった。そのため、酷い馬車酔いに襲われていた。
しかし、王都はすぐ目の前だ。
そんな時また盗賊が来た。
「スミレ殿の馬車とお見受けする。スミレ殿を出せ」
同じような盗賊がまた、叫んだ。
「またか。そろそろなれそうだよ」
ベンジャミンがため息をつく。
「あら。たかだか2、3回目で慣れそうだと。慣れるのが早いのね」
カモミールが挑発する。
「さあ、スミレ。勝負よ」
ラベンダーが言った。
めんどくさかったがスミレは酔いを覚ますため、馬車から降りた。その瞬間、勇者が斬りかかって来た。かろうじてメイスで防いだものの酔っていて、いつもより動きが鈍い。
それを好機と見たラベンダーやカモミールは、3人で襲いかかることにしたのだ。カモミールはシャイニングブレイズを放ち、ラベンダーはブレイズボールを弾幕のように放った。更に勇者もブレイズボールを放ち、もうスミレが逃げられる場所なんてない。
絶対絶命のピンチである。そんな時アルベルトが飛び出して来た。そう。スミレを守るためだ。しかし、その攻撃を受けたことでかなりの傷を負った。
スミレは動揺した。同時に覚醒し、盗賊ごと、闇と炎の属性を合わせたヘルブレイズで焼き払った。するとすぐに、神級回復魔法をアルベルトにかけた。アルベルトは驚いている。火傷やその他の傷も全て癒えていたのだ。
「さすがスミレだな。神級回復魔法まで使えたのか」
アルベルトが驚いている。
一応闇の方が得意なんですが、神級回復魔法の方で治癒しました」
スミレが言った。
「で、あそこの焼けているやつもやるのか?」
ベンジャミンが嫌そうに言った。
「自分たちでなんとかするでしょうが、カモミールは友達だと思いたいので、回復させます。あと、ラベンダーも。ただし、普通の上級でいいでしょう。そのほかは知りません」
スミレが言った。こうして、ラベンダーとカモミールを回復させ、宿屋に泊まった。
さて、昨日は王都に入るまで苦労し、宿屋でしっかりと休んだ。今日はもともと、予備日なのでスミレはアルベルトと出掛けることにした。
「アルベルト、どこか出掛けない?」
スミレが提案する。
「そちらから誘ってくれるとは有難い。俺も行こうと言おうと思ってた。好きなものを買ってやろう。さあ行こう、お姫様」
アルベルトが言った。
「カッコいいですね。さあ、行きましょう」
スミレは嬉しそうだ。この光景を見ながらベンジャミンはため息を吐いた。このベタ甘なスミレとアルベルトの関係性を見ていると砂糖を吐きそうなぐらいなのだ。下手をしたら砂糖に埋もれていても気づかないぐらいかもしれないぐらい甘い関係性なのだ。
しかも、2人には完全にベンジャミンがいない感じに見えているみたいだ。
さて、アルベルトとスミレは出掛けて行った。ベンジャミンは自分は何をするか考えながら本でも読むことにした。
一方、アルベルトとスミレはスミレが住むとこを決めていなかったという事で不動産屋に来ていた。すると、魔法学院は全寮制で、特に特進クラスは良いところが準備されるらしいということをきかされた。
それが終わると、スミレとアルベルトは冒険者ギルドに向かい、冒険者登録をしておいた。これから日銭を稼いで生きていくことになるからだ。ちなみにスミレは僧侶、アルベルトは剣士だ。選ぶ職によってステータスの伸びは違うものの今まで学んだものが消えるわけではないので、スミレは変わらず5属性使える。
そして、スミレは学院の生徒であることを伝え、明日また冒険者ギルドに行くことになっている。というのも、生徒が冒険者ギルドにいる事は学院に取って都合がよく、冒険者ギルド側も能力に見合ったクエストを受けさせることができるので都合が良いのだ。
アルベルトは付き添いだったが、2年後に勇者として旅立つ時に役立つだろうと取っておいた。
スミレとアルベルトは夕焼けを見ながら互いの唇を重ね合わせていた。2人の顔も夕焼けに負けないほど赤く燃え上がり、2人の愛は水の最上級魔法でさえも消すことのできない炎のようだ。
宿屋に戻ると、ベンジャミンが燃え尽きたようにというか疲れたのであろう眠っていた。なぜそんなことになったのか。
アルベルトとスミレが出掛けている間にベンジャミンは、本を読んでいた。何時間経ったかわからなかったが、昼は過ぎていた。そこにカモミールが来て、また襲うことを提案された。しかし断ったため、洗脳魔法をかけられ、精一杯レジストした結果眠っているのだ。そのため、洗脳にはかかっていない。
「どうした。ベンジャミン。起きろ」
アルベルトが言った。
「ああ、おはよう。っておはようではないな。こんにちは?」
ベンジャミンが笑いながら言った。
「何かあったんですか?」
スミレが聞いた。
「カモミールがまた襲おうとしていた。明日は入学式だろ。気をつけろよ。あと、明日からしばらく会えなくなるが、寂しくないか」
ベンジャミンが答えた。
「私は大丈夫です。あと、すみませんでした。あなたを見てない感じの雰囲気出してしまって。アルベルトさんが好きすぎて、見えてなかったんです。ごめんなさい」
スミレが言った。
「おい。煽りか?煽ってるのか?リア充め爆発しろ。って、無理じゃん。勝ち目ないじゃん。あー。もー」
ベンジャミンが頭を抱えている。
「明日からは別の道を歩むことになる。でも、俺たちの絆は永遠だ。主にスミレと俺、俺とベンジャミンだな。ベンジャミンとスミレは絆あるのか?」
アルベルトが疑っている。
「大丈夫です。信頼してますから。ベンジャミンさんはどうするんですか?」
スミレが言った。
「俺は冒険者するよ。で、実際に魔物と戦ってみるよ。魔王なんか倒さなくて良いけど。模擬戦で勝てるようになるために、2、3年後に魔王城で会おうぜ」
ベンジャミンが言うとスミレとアルベルトは「おう」と応じた。
スミレは物思いに耽っていた。もう、明日から別の人生を歩むことになるということを考えると少し憂鬱だった。それを感じ取ったのか、アルベルトが話しかけてきた。
「不安か?スミレ。あなたは強い。だからそんなに不安に思うこと無いよ。それとも、会えないのがさみしいかい?私は王国騎士団で2年も修行するんだ。きっとどこかで会えるさ。手紙ぐらいは書けるかもしれないし。ベンジャミンだって、冒険者するんだ。きっとどこかで会える」
アルベルトが言った。
「でも、不安だよ。私まだ生まれて16年なんだよ。たしかに会えるかもしれない。でも不安だよ」
スミレが言った。
「ならこれで問題ないだろう」
そういうとアルベルトはスミレと唇を重ね合わせた。本日2度目のキスである。
「ありがとう。少し元気出たよ。騎士団での訓練頑張ってね」
スミレが言った。
「ありがとう」
アルベルトが言った。
「おい。2人ともまた、俺が見えてないぞ」
ベンジャミンがツッコミを入れる。
「すみません」
スミレとアルベルトの声がハモった。そして、3人とも笑い合った。