第13話 馬車での邂逅
スミレは、今馬車に揺られている。この馬車は魔王を倒しに向かおうとする勇者も利用する馬車だ。今回も勇者が乗っているようだ。
「やはり、魔物は悪。魔王倒すべし。悪魔しばくべしだよな」
「だよな。うちのばっちゃんも魔物にやられたんだよな。手ー組んで一緒に倒そうぜ」
「良いけど、名前教えろよ。俺はアルベルト=ストーンズだ。お主は何という。」
「俺はベンジャミン=フラワーだ。」
2人の勇者達が会話している。それを聞いたスミレは余裕そうに提案した。
「あなた達は勇者なのですか?。私もお手伝いしましょうか。道案内くらいならできますよ。魔王城の近くに住んでいるので」
勇者達は驚いている。
「助かるわ。てか、つい3ヶ月前に魔王城行ってたような気もする」
アルベルトがそう言った。
「本当に信頼するんだな、アルベルト。こいつ髪紫だぞ。てか、魔王城行ってたかもってどういうことだ?」
ベンジャミンが困惑する。
「もちのろんさ。信じるよ。だって、3ヶ月前の戦争止めたの俺らだし。な、スミレ」
アルベルトが言った。
「なら、身の上話でもしますか?私はスミレ=ヴァイオレットです。イエロー家生まれで、ヴァイオレット家の養子です。使える属性は内緒です」
スミレが言った。
「俺は平民だ。平民ではあるが鍛冶の腕が認められて、一応貴族っぽい扱いだ。あと、勇者だしな。魔物は倒すべしとは思うけど、魔人は知らね。」
アルベルトが言った。
「魔物と魔人は違うのか?魔王が魔物を操ってるのでは無いのか?」
ベンジャミンがそう言った。
「それは情報に踊らされている。スミレのパパによると、魔人はふつうに王国で貴族してたらしい」
アルベルトが言った。
「久しぶりに会いに帰るんだ。って、あれ?その事教えたっけ?」
スミレは首を傾げる。
「ラベンダーに聞いた」
アルベルトが答える。
「えっ。てことはスミレって魔族?」
ベンジャミンがそう言った。いささか混乱しているようだ。
「イエロー家生まれって言ってただろうが」
アルベルトがしっかりツッコむ。
「そうですよ。まあ、ヴァイオレットの方のパパは魔族だけど」
スミレが衝撃情報を投下する。
「てことは、お前があのスミレか」
アルベルトが確信を得る。
「そうですよ。すみません。話を聞くばかりで、名乗ってもいませんでしたね。私はスミレ=ヴァイオレットです」
スミレが自己紹介する。
「あのサトシをメイスで倒したという。あのスミレか」
アルベルトが驚いている。
「俺置いてけぼりなんだが」
ベンジャミンが言った。空気に入っていけず混乱している。
「このスミレさんは魔法系やばいらしくて、サトシをメイスで殴って勝ったというあのスミレなんだ。王都では一躍時の人となってる。」
アルベルトがそう言った。
「えっ。嘘ですよね。私そんなに目立つ気無かったんですけど。メイスで殴ったのも、魔法のこと知られない様に勇者殴ったのに」
スミレがまごつく。
「それはすまんが、ラベンダーちゃんにバレてたら隠せないかも」
アルベルトがそう言った。
「そうなんですね。残念。ところで魔族のことですが、魔物は知性を持ちませんが、魔人は知性を持ち、話すこともできますよ。王国は勇者ビジネスで儲けたいんでしょう。魔王討伐した国として名を挙げたいんでしょうね」
スミレは軽く落ち込んでから、説明を始める。
「これ知ってしまったら行く意味ほぼ無いんだが」
アルベルトが行く意味を見失う。ちなみにアルベルトは魔人と魔物の違いを知っていたが、魔物を統率しているのは魔王だと思っていたので、行くことになったのだ。
「あ、もう隠すのめんどくさいので言いますね。ヴァイオレットのパパは魔王です。私魔王城で育ちました」
スミレによる衝撃情報のコーナー。
「どうして今言った。俺たちが信頼できる保証なんてないだろう」
アルベルトが言った。
「あなたが私を信じてくれたように私も信じることにしたんです。アルベルトさんは信頼できますよ。私は信頼します。」
スミレはこともなげにそう言った。
「本格的に行く意味が無いんだが」
アルベルトがそういった。
「魔王城で、お茶しますか?」
スミレが提案する。
「ハハハ。まさか、魔王討伐が魔王城で茶になるとはな」
アルベルトが言った。ちなみにスミレは話の流れからベンジャミンも勇者であることは知っていた。
そんな話をしている時にドラゴンが飛び出してきた。ドラゴンは空を飛びながらこう咆哮した。
「スミレを出せ。私はそいつを倒して世界一強くなるんだ」
「私がそうですよ。さぁ、どうぞ」
スミレは余裕そうに出て行った。ドラゴンは怒りのあまりこう咆哮する。
「なめ腐りやがって」
ドラゴンはブレスを吐いた。残念ながらスミレにそれは当たらなかった。そして、スミレはシャイニングピラーを放つと一撃でドラゴンは倒れた。
「お前はやっぱりあのスミレだわ。絶対そうだわ。3ヶ月前の魔界侵攻の時は動転しててそれほど顔を見れてなかったけど、俺、君のこと好きになりそうだよ。てか、もう好きだよ。だってあの戦争止めたのスミレだし」
アルベルトが言った。
「そうですか。私もアルベルトさん好きになりそうです。サトシさんは強いのですが、女の子の気持ちがわかってなさそうなんですよね」
スミレもそう言った。
「ハハ。サトシめ言われてらー。ザマァ」
アルベルトがめちゃくちゃ笑いながら言った。
「歴史的瞬間に立ち会えたのかもしれない。まさかあのスミレがね。って16歳だろうが。はえーよ。なんでだよ」
ベンジャミンが焦っている。そしてツッコミのキレ凄くいい。
「ベンジャミンザマァ。俺勝ち組。実は3ヶ月前にはスミレとあってたんですわ。教会に行った時出迎えてくれたのがスミレちゃん」
アルベルトが勝ち誇ったように言う。
「もし、私とサトシさんが敵対したら私の味方をしてくれますか?人質を取られた場合は私は人質を先解放しますが」
スミレが聞いた。
「俺も人質は先解放した後お前を救う。サトシは強い。俺は勝てないだろう。だが、洗脳魔法を使われなければスミレの味方をしよう。だって好きだし。他の女の子には無い魅力があるからね。スミレには」
アルベルトが顔を赤らめながら言った。
「ありがとうございます。」
スミレの顔もトマトみたいに赤くなっている。夕陽が彼らを照らす。
これが後の馬車の誓いである。
「お二人さん、俺は見えてますか?」
ベンジャミンがそう言った。