第11話 決闘!!勇者を圧倒、そんな結果まじ上等
魔力測定の翌日、魔力や戦い方の技術向上を目的とする特進クラスの上級生との模擬戦及び交流をする授業が行われた。
これは技術の向上はやはり模擬戦の中でこそ得られるものだという教官の意向である。しかし特進クラスだけとはいえ3学年30人いる。
そこで模擬戦をトーナメントで行う事にした。それでも、やはりサトシは勇者ということもあり、順調に勝利を重ねていた。
スミレも魔法を使わずに勝利を重ねていた。カモミールやラベンダーはサトシと戦って負けていた。
そして、最後の決勝戦。大方の生徒の予想通りスミレvsサトシの対戦が実現した。もちろんカモミールやラベンダーは勇者を応援している。
「スミレ、俺と勝負しろ。俺が勝ったらお前は俺のもんだ」
サトシが宣言した。
「なら、私が勝ったら何をしていただけるのですか?」
スミレが条件を聞く。
「そうだな。万に一つもお前が勝つことは無いだろうが、勝ったら一つだけ願いを聞いてやろう」
サトシはそう言った。万に一つも負けるとは思っていないのだ。周りの人々は勇者とスミレの決勝戦に釘付けだ。
まず、先に動いたのはスミレだった。スミレは自らに魔封じの呪文をかけた。
周りの生徒たちは初めて見る呪文をバフだと思った。そんな周りを置き去りにスミレとサトシは戦っている。
サトシは火の魔法を使いながら剣でスミレに斬りかかった。スミレは火魔法と剣の両方を避けながらメイスでサトシの頭を殴った。しかし、そこは勇者。ほとんど隙など見せず、また切りかかってきた。スミレはまた、避けてサトシの腹にメイスを当て、素手で勇者の鼻を殴った。
周りはざわついている。なぜなら明らかに勇者に対して手加減する余裕すら見せている新入生がいるからだ。そもそも、勇者は魔法や剣を使っているのに、スミレは一切魔法を使っていない。
使ったのは自らに、魔封じの呪文をかけたくらいだ。スミレは、このまま手加減しても勝てるけどそれではサトシが可哀想であると考え、魔封じの呪文を解いた。もちろん無詠唱である。ついでに勇者サトシにも魔封じの呪文をかけた。
周りはまたざわついた。サトシは勇者であり、魔法に対して抵抗があるにもかかわらず、すんなり魔封じの呪文をかけられてしまったからだ。
しかし、サトシは諦めない。サトシは剣でまたスミレを切ろうと斬りかかった。しかし、また避けられ、股の急所にメイスを当てられた。勇者は悶えている。その隙を見逃さずスミレは、こめかみと腹を叩き、勇者を沈めた。
勇者サトシは焦っていた。これでは自分が弱いように見えてしまう。そう考えたサトシはスミレを不意打ちしようと後ろから剣を構えて切りかかろうとした。しかしメイスで受け流され、投げられた。
スミレは優しいので、サトシを許し、回復魔法をかけてあげた。もう周りはウハウハだ。勇者を倒す新入生が出たのだ。特に女生徒は勇者に望まない行為を、させられることがなくなるかもとスミレに近づいた。
一方勇者は自らが低く評価されているようで腹が立っていたので、ありとあらゆるものを使って嫌がらせをしようと企みを巡らせていた。
それは、勇者が今まで負けたことがなく、敗北の悔しさを知らなかったからだ。
ラベンダーやカモミールは驚いていた。なぜなら、自らより弱いと思っていたのに、スミレが勇者であるサトシを倒すなんて思ってもみなかったからだ。さて、勇者は約束した通りにスミレに望むものを聞いた。
「スミレ。君は何が欲しいんだい?」
サトシは負けて落ち込んでいる中でそう聞いた。
「ライバルですね。私が本気を出さないと勝てないような。まぁ、もういただきましたけど。もっと強くなってください。あなたは今日から私のライバルです」
スミレがそう言った。
「さすがに強いな。別にライバルと認められて嬉しいわけじゃないからな。勘違いすんなよ」
サトシは内心めちゃくちゃ喜んでいた。自分の思いびとにライバルと認められたんだ。嬉しくないわけがない。そして、さらに強くなろうと思った。
カモミールやラベンダーは悔しがっていた。そして同時に嫉妬した。それゆえに勇者の側にいて、3人で組んでスミレを倒すことを考えながら、きっかけを伺っていた。