第10話 入学試験と最初の試練
こうして、スミレはカモミールとラベンダーという友達を得た。
翌日、魔法学院のある王都に着いた。
王都には中世ヨーロッパのような白や赤の建物が沢山ある。もちろん冒険者ギルドもあり、酒場もある。
さて、試験は明日である。スミレ、ラベンダー、カモミールは街を見て回り宿屋を探していた。
「宿屋はどこかな?」
スミレは懸命に宿屋を探している。
「さぁ。私は見つからなくても屋敷に帰れば良いだけだから。」
ラベンダーが余裕そうに言った。
「あれっ。でも、この前助けた時逆方向、というか魔王領の方向へ向かってるように見えたけど。」
スミレが疑問を口にする。
「あれは貴族の中に魔王がいるかもしれないという事の調査をしに行くところだったの。レッドローズ侵攻に邪魔な魔界を消すために。あなたのおかげで手間を省けたわ。」
とカモミールが言った。
「そうなんだね。あなた達を信頼しようと思ってたのに。」
スミレは怒っている。
「無様ね。まさか侯爵が魔王だなんて。あなたも魔族なんじゃないの?」
スミレをあざけるようにラベンダーが言った。
「悔しかったら魔族でない証でもみせてみな。」
カモミールも意地悪をいう。
「ひどい。もうあなた達なんて知らない。あと、カモミール、貴方だけ、どこの家かいっていませんでしたけど、そちらも何かあるんじゃありませんの?」
スミレが完全に怒っている。
「秘密よ。そんな簡単に言えるはず無いじゃない」
カモミールが言い返す。
「私を忘れてない?勇者の妹よ。私はあなた達なんて簡単に倒せるから。明日の受験覚えていなさい。」
ラベンダーが注目を集めるように言った。
「望むところよ」
スミレはワクワクしている。
「もちろんあなた達には負けない。つもりよ」
ラベンダーはそう言って帰って行った。
さて、翌日晴れ渡る空の下、魔法学院の試験は行われている。まず第1の試験は魔力測定だ。
「まずはカモミール=サンシャイン。この水晶に手を当てるんだ」
試験官がそう言った。
この水晶は魔力の量を計ったり、色によって属性も同時に測ることができる優れものである。例えば赤なら火、黄色なら光、黒なら闇、茶色なら土、青なら水というように決まっており、線状に属性の色が出てくる。また強ければ強いほど、濃い色になる。
「はい」
カモミールが水晶に手をかざすと黄色と赤の線が水晶に浮かび上がった。更に魔力も平均を圧倒していた。
「おぉ。やはり貴族だからか魔力が多いな。しかも2属性も使えるなんてすごいではないか」
「ありがとうございます」
カモミールは嬉しそうだ。カモミールはスミレの方に向き直ると
「どうかしら。あなたには負けないわよ」
と言って去っていった。
「次ラベンダー=ブラウン。水晶に手をかざせ。」
試験官が言った。
「はい」
ラベンダーが水晶に手をかざすと茶色と黄色と赤が出ていた。更に平均を圧倒するカモミールより多い魔力を持っていた。
「さすが勇者の妹だけあってすごい魔力量で3属性も操るのか。しかも光、火、地か。カモミールと似ているな」
試験官が言った。
「ありがとうございます」
ラベンダーもスミレに向き直ると
「あなたにだけは勝ってるつもりよ。」
と言って去っていった。ラベンダーやカモミールはスタイルも良かったので男子達も盛り上がっていた。最後にスミレの番がやってきた。
「スミレ=ヴァイオレット。水晶に手をかざせ。」
試験官が言った。スミレはカモミール、ラベンダーを含めた学院の中でも抜群の美貌を持っていたので男子はテンションアゲアゲだ。しかし、髪の色が紫なのが残念だと思っていた。
「はい」
スミレは最初魔封じの呪文を使って良い感じに魔力を調節するつもりだったが、2人がすごい魔力を持っていることがわかったので本気を出す事にした。
そしてスミレが手をかざすと、濃い黄色、真っ黒、赤、青、そして茶色の五色が出て、水晶が壊れそうになるほどの魔力量もあった。
あまりに強すぎると思ったスミレは自らに弱めに魔封じの呪文をかけた。
「凄いですよ。これは学院始まってからの快挙です。5属性も操り、勇者であるサトシ=ブラウンの魔力を圧倒する学院始まって以来の魔力量です」
試験官が驚いている。
「ありがとうございます」
スミレは立ち去ろうとしたが、男子の上級生に声を掛けられていた。
「お前紫髪のくせになんで全属性使えるんだよ。しかも勇者を凌ぐ魔力とか、強すぎるだろ。紫髪は嫌いだが、お前は好きだ。一緒に遊ばないか?」
情緒不安定にも程がある。
「好きと言ってくださってありがとうございます。しかし、遊ぶというのが普通に遊ぶのかそれとも下心があるかわからないのでまた授業で会えればいいですね」
スミレはやんわり振った。
「この俺が振られるだと。この勇者である俺が」
そう、この男子はサトシ=ブラウンと言い、勇者である。スミレより2つ上の学年だ。そして、勇者はとにかく欲が強く、いつでも強い女子を自分のものにしたいと思っているほどのものだった。
そして断られた事など無かったのだ。
だから勇者は腹を立てた。
「勝負しろ。明日の昼に学年をまたいだ模擬戦があるはずだ。その時お前を指名するから戦え」
勇者は完全にキレている。
「わかりました。楽しみにしています」
スミレは余裕そうに返した。こうして、魔力測定は終わった。教室に戻ると、カモミールとラベンダーがいたので話しかけることにした。
「カモミールさんもラベンダーも凄いですね、カモミールさんが光と火属性、ラベンダーさんは光と火と土属性を、持っているんですものね。更に2人とも平均を圧倒していると聞きました。本当に凄いですね」
スミレはやんわりそう言った。
「当然よ。学院始まって以来の快挙でしょう」
ラベンダーもカモミールも自信満々だ。
「そうですね」
スミレはとりあえず彼女らの下にいるように見せかけることにした。なぜなら面倒ごとを避けたかったからだ。加えて、彼女らとは友達でいたかったのだ。