表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の流刑地で平和に暮らしたいだけなのに ~三国志の片隅で天下に金を投じる~  作者: 久保カズヤ@試験に出る三国志
三章 赤壁の風

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/102

45話 闇に動く


 雷氏の商家とは、あの雷華の家の事だ。

 主に天下の中心である北方との交易を盛んに行っており、規模も大きい。

 交趾郡の中でも指折りの商家であり、親父もこの家と懇意にしていた。


「あぁ、シキ様。話は御屋形様より伺っております」


 雷氏の当主、雷華の父はその膨らんだ腹を撫でながら、困惑の表情を見せていた。

 それもそうだろう。親父の話が、あまりにも突拍子のない無いようであったからだ。


 劉備に会ってこい、と。


 さしたる用もなく、ただそれだけ。

 交州の者として親父の頼みを断れるわけもなく、ただ困惑しているのだ。


「確かに麋竺殿とのつながりは、濃くはありませんが持っております。しかし、御屋形様は何を考えていらっしゃるのです?」


「私の経験を積ませるため、とのことです。留学の様なものと考えていただければ」


「劉備の、陣営にですか?」


「そうです」


 劉備は今や徳の将軍と言われてはいるが、実質は「超武闘派傭兵集団」だ。

 ニュースになりまくってるヤクザの家に勉強しに行く。うん。わけがわからん。

 ニセコイでも始まるのかしらん。


「まぁ、商家の私が政治に口を挟むわけではありません。ご協力いたします」


「感謝します」


「薬草や塩、酒を持ち、取引を行う商家の代表者として同行ください。名は、そうですね『ほう』としましょう」


 偽名は「雷豊らいほう」ということか。僕はそれに頷く。


「シキ様を補佐する者ですが、本来ならば、雷華に任せるべきなのでしょう。本人もそれを強く望んでます。されど、私としては、あの子には戦場を見せたくないのです」


「何か理由が?」


「まぁ、そうですね。親として心配、といったところです」


 顔が濁る。何かを隠している、がその何かは分からない。

 別に知ろうとも思わない。親として当然の反応だ。


「シキ様、頭を下げて御頼み申します。雷華をお守りください。分不相応な願いなれど、どうか、御頼み申す」


「勿論です。私は友を必ず守ります。それに、麋竺は文官、前線に立つことはありません。ご心配なさいますな」


「……友、ですか。ありがとうございます」





 シショウは、一つの竹簡を眺め、それを火にくべる。

 ぱちぱちと音を立て、ゆっくりと真っ黒な炭になっていく。


「そろそろ動くか、曹操。天下を、飲み込むために」


 それは、曹操からシショウにあてた書状であった。密書だと言っても良い。


 これより曹操軍は、蔡瑁の手引きで進軍し、荊州を占領。

 孫権を降し、劉備を必ず討ち取る。

 交州へ逃げてきた場合は必ず、その首をこちらに献上せよ。


 簡単に言えば、そんな内容であった。


「困った、困った」


 頭を撫でる。


 曹操が南下し、このまま全てを飲み込めば、交州は曹操に降るしかない。

 その場合、この交州の自治権は取り上げられるだろう。

 士家は、あまりにもこの地で影響力を持ちすぎているからだ。


 その場合、士家は中央に近い小さな所領と身分を与えられる。

 何不自由のない暮らしが約束されるだろう。


 しかしそれは、シショウが生きている間の話だ。


 自分が死ねば、間違いなく息子たちは何らかの問題をかけられ、没落していくだろう。

 力を持つ外部勢力。それも、あまり信用のできない。当然の結末だ。

 それだけは避けたかった。それに、シショウも一人の群雄としての意地がある。


「交州だけは、手放したくないのぉ」


 それがたとえ、相手が孫権でも、曹操でも、だ。

 辺境の妖怪は天下を見渡し、自分の生きる術を探っていた。


 この曹操の統一戦。間違いなく、劉備、孫権とぶつかる。

 勝負は、十中八九、曹操の勝ちだろう。

 しかし、このうちの一を引ければ、分からない。


 兵をほとんど持たない交州が、この趨勢を決めることは不可能。

 曹操と孫権に物資を送り、両方に良い顔をしておくしかない。それぐらいしかできないのだ。



「されど、妖怪は闇に動く。曹操よ、そうやすやすと、この天下は掴むことは出来まいぞ」



 妖怪は笑う。


 あの息子が、劉備にどう迎えられるか。

 それで、この戦の「一」を引き寄せれるかもしれない。


 博打だ。しかし、悪い賭けではない。

 シショウは、それを確信していた。



下手に力を持った外部勢力は脅威になりやすいですからね、没落していくのは世の常です。

例えば日本の戦国で言うと、丹羽家や蒲生家がそうですね、なんて。


次回は曹操陣営のお話。

この稀代の英雄を天下人にするべく、乱世に生まれた軍師は、命を振り絞ります。



面白かったら、ブクマ・評価・コメントよろしくお願いします!

また、誤字報告も本当に助かっています!


それではまた次回。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ