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4話 出発と仲間


 僕が生きるこの時代は、いわゆる「三国志」と呼ばれる時代。

 しかし、生きる場所が「交州」というド辺境の為、正直なとこ歴史の表舞台に立つ事は無いだろう。


 なんてたって、中華の南端。

 中華に生きる漢民族よりも、ベトナム系の異民族の方が圧倒的に多い土地。

 現に、この屋敷に仕える家人も、ベトナム系の人が多いしね。


 前漢の「武帝」がこの地を征服するまでは「南越国」として漢王朝からも独立していたような辺境です。

 まぁ、流罪地として扱われてるくらいだしなぁ。


 高温多湿の熱帯地方。沼地が多く、土地は貧弱。疫病も多く、未開の土地や少数民族も多数。

 作物は植えても、多量の雨ですぐに流されてしまう。だからこその流刑地なのだ。

 この地に流された罪人は、すぐに駄目になってしまう土地を延々と耕さなくてはならず、生きていくのもツラい状況に陥る。



 ただ、それは天下の中心である、中華北部での評判に過ぎない。

 この南越の土地は、東南アジアやインド地方との貿易の中継地点であり、その一切を牛耳れる土地でもあるのだ。


 現に前世の時代では、交州は、ベトナムの「ハノイ」と、中国の「香港」を含めている。

 それだけを見ても、立地が非常に優れていると言えるだろう。



 そして、それを理解していたのが、親父だ。


 黄巾の乱や、董卓の専横で混乱していた朝廷の隙を見て、交州南岸の各郡を一族の人間で独占。これを認めさせた。

 すると、貿易の収益の一切を牛耳る事が可能になった。

 収穫できる食料は確かに少ないが、それも様々な場所との交易で十分な量が確保できる。


 いまや、勘の良い商人がこぞってこの地に押し寄せる有様だ。



「歴史では、親父が死ぬまでこの地が戦火に見舞われることはない。しかし、問題はその後か」


 僕の悩みの種は、そこにある。

 今の名前は「士徽シキ」。この名前を思い出すまで、本当に長いことかかった。


 この士徽は、士燮シショウの死後、呉を治める「孫権」が交州の一族統治に口を挟んできたことに反発。

 士一族を巻き込んで反乱を起こし、そのまま滅ぼされたのだ。


 つまり、この僕が「交州」と「一族」を滅ぼす原因となる。

 勿論、この未来だけは避けたかった。



「まぁ、でもまだそれは先の事だ。今は何より、金が欲しい」


 自分と一族の死の未来より、こうやって群雄が割拠する時代に、色んな英雄達に投資したいという欲が勝っている。

 頑張っている人は応援しないとね! 天下取り頑張れーっつって! 


 まぁ、これから勝つことが分かってる曹操、劉備、孫権への投資は、あんまりワクワクしないけど。


 その為にもまずは、一にも二にも金だ! 商売を始めなければ!



「シキ様、荷物の積み込みが終わりました」


「分かった」


 今回、親父の弟、合浦郡の太守を務める「シイツ」叔父上の下へ向かう際、僕に付いて来てくれるのがこの家人であった。

 肌は浅黒く目の彫りは深い。あのディーラーを務めてくれていた美人のお姉さんだ。


 美人なのに、何とも無口で無表情。

 でも、仕事面では超優秀。おまけに武術にも秀でてるっていう。

 愛想が無いだけ。ほんとに、足りないのはそこだけ。


 あの親父の色目に、あからさまに嫌そうな顔をするのも、彼女くらいのものだ。

 これでめげない親父も親父なんだが。


 名を「魯陰ロイン」と言うらしい。素性に関しては、あんまり聞いたことが無い。


「もう、出発なさいますか?」


「いや、もう少し待ってくれ。連れていきたい奴がいてね」


「承知しました」


 僕が待っていたのは、友人だった。

 よくこの屋敷に出入りする商人の末っ子、やんちゃで明るい友人だ。


 出来ればアイツも連れていきたいなぁと思って、予め話は持ち掛けていた。

 ただ、結構過保護な家らしく、許してくれるかどうかは微妙なとこらしい。


「うーん……厳しかったかな。これ以上は待てないや、行こうか、魯陰」


「いえ、シキ様。あちらを」


 魯陰の促す先。

 手を振って駆け寄ってくる少年の姿が一つ。


「お! 待ってたぞ、ライカ!」


「シキ! 遅くなった!」


 衣服や髪こそだらしないが、ハッとするような美形の顔立ちである。

 本当に目が覚める様なイケメンなのだが、この明るい笑顔を前にすると、嫉妬すら湧いてこないレベルだ。


 「雷華ライカ」は息を切らして駆け寄ると、俺の手を引いて、馬車の荷台に飛び乗った。


「おい、急げ! 出発しよう!」


「な、どうしたんだ?」


「父上が許してくれなかったから、そのまま逃げてきた! すぐに追手が来るから、早く!」


「何やってんだよお前は!?」


「早く! どうせお前んとこのシショウ様が上手く話を付けてくれるだろうから、大丈夫だろ! たぶん!」


「まったく……魯陰、頼む」


「承知しました」



 先行きがどうも不安だが、こうして旅路はスタートしたのであった。




ジャンル日間2位まで浮上出来ました。

本当に皆様のお陰です、ありがとうございます。

これからも皆様のご期待を裏切らないよう、精進させていただきます。


とはいえ、交州に関する資料が少ないよぉ(;´∀`)

士徽に関しては、孫権に一族総出で逆らって死んだ、くらいの記録しかないですしおすし。

士徽以外の息子達は、その反乱に従って死んだ、ぐらいです。うひー。


まだ士壱親子の方が記録残ってるのん。


ただ、その分、想像の余地が入るってことでもありますし、頑張りマンモス(死語)



作品を面白いと思って頂けたなら、是非、ブクマ・評価よろしくです!


これからもよろしくお願いします。


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