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辺境の流刑地で平和に暮らしたいだけなのに ~三国志の片隅で天下に金を投じる~  作者: 久保カズヤ@試験に出る三国志
二章 妖怪の二枚舌

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21話 李術の乱 前編


 ずりずりと呂岱に引っ張られながら、魯粛は機嫌良さげにニヤついていた。

 対する呂岱はどこか不機嫌であり、気に食わないといった様子。


「なぁ、将軍よ。あの小僧をどう感じた? 趙括か、それとも章邯か」


「交友の証に堂々と金品を差し出すような真似をする。気に食わん。才だけで実のない、まだ趙括の方が良いわい」


「そうかそうか、まぁ、軍人のあんたからすりゃそうだろうなぁ」


「ふん、それにあの凡庸で怪しげな目つきがいかん。まだあの従者の方が良い器をしとる。それともお前は、あれが章邯に並ぶと?」


「いやいや、章邯じゃない。かといって趙括でもない。あれは、間違いなく妖怪の息子だ」


「は?」


士燮シショウがどうしてあの三男坊を寄越したのか、なんとなく分かったってことさ」





 僕らが連れられた先には、数千の武装兵が地を埋め尽くしていた。

 たなびく旗には「孫」と「呂」の文字。護送にしちゃ、あまりにも物々し過ぎる。


 まるで、これから戦にでも向かうような。


「あの、魯粛様。これは、一体」


「ハッハッハ! 孫家が誇る精兵ですよ。その数は総勢で千五百! 呂岱将軍の直属にあたる兵ですな」


「いや、そういうことを聞いているのではなく」


 僕らの馬車に並ぶように、馬に乗った魯粛は軽快に笑う。

 だいぶ酒を飲んでいるようだが、しっかりと馬を御していた。


「これほどの兵が必要なのですか? その、呉郡へ向かうには」


 江東という土地は、そこらかしこで山越族の反乱がおきる土地である。

 だからといって、この武装兵の数はいささか多すぎた。


 ちなみに、三国志の時代、孫呉が天下統一に積極的に動かなかったのは、この土地柄に原因があった。

 広大な土地ではあるが、そのほとんどが孫権に従わない山越族ばかり。


 呉の歴史は、そんな異民族との闘いの歴史である。

 外に目を向ける余力がなかった、ともいえる。



「ん? あぁ、そうか、言っておりませんでしたな」


「なにを、ですか?」


「まず今、孫権様が呉郡におられないことは昨晩に話したな」


「はい。そうお聞きしております」


「現在、孫権様は自ら李術の討伐を行っておられ、この兵はその増援も兼ねているのだ」


「えっと、それは、つまり」


「我々の行く先は呉郡にあらず。盧江郡へ向かう。雍闓殿、シキ殿には、そちらで孫権様に会見していただく」


 うっそやん。えー、ちょ、嘘やん。

 これから僕らが向かう先は、争い真っただ中の戦場だと、そういうことか。


 この待遇で、孫権が此度の会見をどう感じているのかを、暗に伝えているといってもよかった。

 危険な戦場で、しかも戦の片手間に会見をするということ。


 要するに、こちらを冷遇していると、そう見てもいい。


「そう苦い顔をされるな、シキ殿。まぁ、言いたいことは分かるが、我が君は南蛮と交州の重要さは十二分に理解しておられる」


「それは、大変ありがたいことです」


「しかし孫家の臣下は、誰もが交州を苦々しく思っておる。その手前、孫権様もこうするしかなかったのだ」


 出発。呂岱の指示一つで、大軍は一糸乱れることなく進む。

 目的地は、戦地「盧江郡」であった。





 李術の乱。これがどのように起きたかの背景を、まずは語っておかねばなるまい。


 さて、盧江郡という土地は、建業の西側に位置する江東の要所である。

 江東の前の主である孫策は、この地に李術を置いて、統治を任せた。


 この李術は曹操寄りの人物であったことから、この人事には曹操への配慮があったとも考えられる。

 袁術のもとから独立して地盤を広げている最中であった孫策が、急速に勢力を伸ばす曹操に配慮したか、それとも油断させようとしたのか、そこまでは分からない。


 そしてこの広大な南方の「江東」という土地は「揚州」と定められており、この地を治める刺史は「厳象げんしょう」といった。

 つまり、実質的な支配者こそ孫家であるが、名目上の主は「厳象」であり、彼は曹操によって赴任された者である。


 厳象の役目は、孫家を懐柔すること。

 曹操は積極的に孫家と婚姻を結び、厳象もまた孫権らと親しくし、官職を与える為に推挙を行っている。


 そんな最中のこと、孫策が暗殺されるという事件が起きた。

 跡を継いだのは、まだ二十歳にも満たない、十代の「孫権」であった。


 これを面白く思わなかったのが、李術であった。

 彼からしてみれば、孫権なんぞに江東は治められないというところだろう。


 李術がまず行ったのは、厳象を殺すことであった。


 曹操から赴任されたとはいえ、厳象は孫権と親しい関係であり、彼が孫権を認めてしまうと曹操もそれを良しとしてしまう。

 それを防ぐために真っ先に厳象を殺害し、曹操に支援を求め、周辺の豪族と共に反乱を起こしたと考えられる。


「俺を支援してくれ。そうすれば、孫家を潰して、俺が江東を治める。貴方もその方が都合が良いだろ?」


 曹操に対する李術の言い分は、きっと、こういうことであっただろう。



 しかし、孫権の方が一枚も二枚も上手であった。

 厳象が殺されるとすぐに曹操へ使者を送り、その非を訴えた。

 自分で揚州刺史に厳象を据えた手前、曹操はそれに反論することが出来ず、李術への支援を打ち切った。


 こうして孤立無援になった李術の衣を一枚一枚剥がすように、孫権は彼を攻め滅ぼしたのだ。



 以上が、李術の乱の背景とも言えるだろう。




いやぁ、同じ三国志作品の方が、日間で4000ptぐらい取ってて驚きっぱなしだった一日です(笑)


歴史ジャンルで、同じ三国志を書く身として、なんとも嬉しくありますね。

これでどんどん三国志が盛り上がってくれれば、僕もその恩恵にあずかれるという。

僕の前世はハイエナかな?(


三国志といいながら、交州は実質ベトナム史なのでは? とかいうアレはもう、やめて(



さて次回は、孫権様が登場。

得意の「使者をネチネチいじめる」やつを見ることが……(笑)



面白かったら、ブクマ・評価・コメント、どうぞよろしくお願いします!!

ほんとによろしくお願いしまs(


ではでは、また次回!


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