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辺境の流刑地で平和に暮らしたいだけなのに ~三国志の片隅で天下に金を投じる~  作者: 久保カズヤ@試験に出る三国志
一章 商売を始めよう!

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12話 山越賊の急襲


 シキョウ従兄の太鼓判もあってか、この居酒屋事業は軌道に乗ってきた。

 結構な豪商人の客が多く、居酒屋でもあり、新たなビジネス展開を画策できる、人と人をつなぐ場にもなりつつある。


 僕もここで生まれる新規事業にて、組織運営の方面で多少の口を挟ませてもらったりと、色々と噛ませてもらえることも。

 色々と各地の情報も入ってきてるしね。

 当初想定していた形で、運営が広がりつつあり、何とも嬉しい限りだ。


 これでもう少しすれば、群雄に投資が出来るね!

 最初は誰にしようかしら。西涼の韓遂とか、黒山賊も面白いなぁ!



 ただ、悩みごともある。


 まず一つは、名士や儒学者の層は一人たりとも寄り付かない事。

 まぁ、これは最初から分かっていたことだ。別に痛手はない。

 だからこそ客層を絞ってるわけだし、快適な環境づくりは大切。


 それよりも、こっちだ。

 やっぱりいくら客層を絞っているとはいえ、物好きな客がいることもある。

 丁さんはアレとして、康さんや、特に蓮さんへ熱を入れる客も多いということ。


 普段は豪商として辣腕を振るう、力ある男達だ。

 それに、この時代の価値観的に、女性を好きにできると考える人も多い。

 店舗の拡大を狙って、彼女達には自分の店を持たせてあげたいとも思ってもいたけど、今の状態では何とも難しい段階。


「蓮さんは気が強いし、サバサバしてるからまだ安心だが、康さんは人が良いからなぁ。旦那さんに心配がかかる様な事だけは絶対に避けないと」


 子が無くとも、極めて仲の良い夫婦だ。

 康さんの仕事にも理解を示し、高級な魚介を取ってきてくれる、あの優しい旦那さんに心配はかけられない。


 丁さんが上手く場の空気を仕切ってくれるからか、まだ本気で熱を入れるような人はいない。

 でも、ずっとそれが続くとも限らない。


「なぁ、雷華。どうすりゃいいと思う?」


 定休日の店でダラダラしながら、僕は雷華に尋ねる。


「変な事をしたら出入り禁止」


「そういう規則は全部ちゃんと作ってる。けど、自棄になる人がこれから出たら困る」


「じゃあもう、力で分からせるしかねぇな。ボコボコにしちまおう」


「いつもなら呆れるとこだが、それも視野に入れても良いかもなぁ」


「というか、おい、お前も掃除を手伝え馬鹿。怠けやがって」


「頭で働いてるんだよ」


「ケッ」


 ただ、警備員を雇う当てがない。

 僕がそう言った人間になれれば丁度良いんだけど、生憎、近所の女児にも腕相撲で負けるレベルで貧弱なのです。




 すると、ギギィという音を立てて扉が開いた。

 あれれ? 今日は定休日だって扉にかけていたはずなんだが。


 入ってきたのは粗野な格好をした、異民族系の男達。

 目の彫りは深く、肌は浅黒い人達ばかり。およそ五人。

 まだ年は若そうだった。二十代くらいだろうか。


「あの、すいません。今日は店はやってなくてですね。ところで、どちらからのご紹介でしょうか?」


「……お前が、シキとか言うガキか」


「ふぇ?」


 頭領格だと思わしき青年は一足飛びに近くまで迫り、双剣を抜き、僕と雷華の眼前に刃を突きつけた。

 後ろの男達はそれに合わせて、皆が棍棒を構えている。


「何、下手な動きをしなきゃ、殺しはしない。ただ、この店はぶっ壊させてもらう」


「ななななな」


 すぐさま動いたのは、雷華であった。

 ほうきで敵の腕を跳ね上げて、柄を槍の要領で突き出す。


 しかし青年も動きはしなやかで、そのほうきを叩き斬り、雷華を引き倒してすぐに踏みつける。


「畜生! 剣を使いやがって! ズルいぞ!!」


「お前もあっちのガキみたいに大人しくしてろ」


 その頃僕は、完全に腰が抜けていた。

 情けない話ではあるが、こればかりはどうしようもないだろ。


「よし! オメェら、滅茶苦茶にしちまえ!!」


 そんなとき、奥の炊事場から現れたのは、魯陰であった。

 手に持っているのは、大きな鍋をかきまわす用の長棒。


「シキ様、血が出ないように善処しますので、しばしお待ちを」


「何だ、このねーちゃんは」


 すると魯陰はふわりと飛び、棍棒を持つ男の一人を叩き伏せる。

 頭に打突が直撃し、男は立ち上がれずに地面を掻くばかり。


 周囲の男達はそれを見て、魯陰へ一斉に棍棒を振るう。

 しかし涼やかな顔のまま、手を打ち、棍棒を落とし、ある者には鳩尾に突きを入れ、ある者には顎に打撃を加える。

 まさに一瞬の出来事。屈強な男達は、瞬く間に無力化されてしまう。


 これが、武術が全くダメな僕の付き人。

 士家随一の武術の腕を持つ、女傑の実力。


「さぁ、あとは貴方だけですが」


「仲間を、テメェ……俺だってよぉ、ここまで来て引き下がれねぇんだよ!!」


 青年は猫の様なしなやかさで飛びつき、双剣を振るう。

 魯陰はそれをいなし、弾き、突く。

 周囲に被害が出ないように配慮して戦う魯陰は、まだまだ余力がありそうだ。


 そんな圧倒的な実力差を前にしても、青年は戦う事を止めない。


「出来れば貴方をここで打ち倒したくは無いのですが」


「んだとコラ……余裕かましてんじゃねぇぞ」


「貴方がここで倒れれば、そこの方々を誰が連れて帰るのですか?」


「ほざけテメェ!!」


 雄たけびを上げ、青年が再び剣を振るおうとした時であった。



「──このグズが! 剣を下ろしな!!」



 入口に立っていたのは、鬼の様な形相を浮かべる、蓮さんであった。

 いつもの上品な立ち居振る舞いとは異なり、あまりにもドスの効いた声色である。


 僕も、雷華も、そんな蓮さんの姿にポカンと口を開けた。


「あ、姐御アネゴ!? 俺を、俺を止めないで下さい!!」


「ウチの言う事が聞けないってのかい? 二度目は無いよ?」


 青年は顔を白くして、剣を落とし、蓮さんにひざまずく。

 蓮さんは倒れてる男達を蹴飛ばしながら青年に近寄り、その頭を何度も何度も踏みつけた。


「こんのダボが! 恥かかせやがって!! この人達は恩人じゃ! それに剣を抜くとは、殺されてぇんか!?」


「あ、あの……蓮、さん?」


「あら、シキ様。本当に、ウチのモンが申し訳ありません」


「え? あ、いや、その、もう止めてあげて? 意識もう無いのに、そんなに踏んだら、し、死んじゃうんじゃないかなぁ、なんて」


「シキ様がそう言うのでしたら」


 蓮さんはようやく足を離す。

 え、今、この人、姐御あねごって言われてた?

 マジで? 素性を聞かないなぁ、って思ってたけど、そういう感じ?


「あとでコイツらにはきっちりケジメつけさせますので、どうかお許しください」


「あ、いや、別に大丈夫だよ。うん。これからも、よろしく」


「何て心の広い御方なのでしょう。責任もって、このゴミは持って帰りますので、本当にスンマセン」



 男達に縄を結んで、引きずりながら店を出る蓮さん。


 あれ、これ、警備員とか要らないかもしれんな。

 いやむしろ、蓮さん警戒の為の警備員を雇うまである。


 ちゃんと素性の事、今度聞いとこ。



三国志展行ってきました!


いやぁ、燕の公孫氏や、交州の士燮についてまで資料があったりと、とても面白い資料が満載でした!

さてさて……仕事が溜まってるなぁ(;´∀`)(笑)


月間も二位に浮上し、大変うれしい限り。

いつも、ブクマ・評価・誤字修正、本当にありがとうございます!

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