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執着心  作者: 空暗
2/3

神隠しと雨

雨が降っていた

この時空の歪みを固めた様な世界では、色々なことが突然起きる


黒い着物を利き手で握りしめた

その部分だけ皺ができる

水分を吸った着物だけに、ペッタリと自分の手に張り付く

後五メートル先には、安全な都市が広がっている


けれど、今僕は危険な戦国時代に居る


後数メートル先は、安全なのに


ここは危ない場所




時空と時空が固まって、世界ができてしまったこの世界は


色々なものと、色々なことが突然起こる


今は雨が降っている

今は時空が曖昧になっている

今は安全区域には行けない


全て神様の気紛れ


何処で生きるかなんて、自分で決めろってことで

何処で死ぬのかは、神様が決める


絶対的なその秩序

きっと壊すのは不可能



安全と危険と普通が存在するこの世界

神様の気まぐれで、簡単に自分たちは死ぬ


時々神様は生き方にさえ手を出す





ザー






灰色の空から、また誰かの涙が零れた





「ただいま」



鉄製のドアを開ける

途端に肉じゃがの臭いが嗅覚を刺激する


「お帰り、またNO.0に神隠しされたの?」


母が言う


「うん、今日は雨だった」


僕は答える


「タオル持ってくるね」


母は洗面所へ行った

僕は玄関のコンクリートの床に、雨の滴を垂らし待っていた

パタパタとスリッパが空気を切り、床を蹴る音がする

音は次第に大きくなる


「はい、替えの洋服持ってきたから。悪いけどそこで着替えて」

「えー」

「仕方ないでしょ、玄関しか外じゃないんだから」


玄関を越えたら、もう此処はこの世界だから

入ってくるな


「はーい」


大きなバスタオルで頭を拭いてから、着物を脱ぎながら体を拭く

どうせ下は家では濡れてない洋服だから、別に替えの服を持ってくる必要はなかったのに

そう思いながら、ああ、やっぱり文字化け直すのは金かかるんだと納得する

つまり着物は脱げということだ


まだ濡れている全身を一瞥した後、僕は裸足で家に入る

するとある場所を境に水は消える

振り返ると、少しだけ空間に文字化けがあった

多分僕の服にもあるだろう

僕は更衣室に行き、服を着替えた

そして今まで着ていた服を水に浸し、その水にウィー(ウイルス排除ソフト粉版)を一つまみ入れる


そしてそのまま台所へ移動する


「ちゃんとウィー入れた?」

「うん」


そこまでいうと、母は黙って、浮かない顔で僕を見る


「最近、あそこへの神隠しが多いわね」


前まではNO.2やこの世界の何処かという方が多かったのに

ブツブツと呟く


「けど今日はこっちの空間の近くの場所に行ったから、結構楽だった」


そう一応気休めを言うと、雨だったんだからどうせ封鎖してたんでしょとピシャリと言われた

その通りだ、封鎖していた


「雨が止まなかったら、ナオ、0で一晩過ごすことになったのよ」


やっぱり危なかったじゃない




知らないよ、そんなこと

神隠しだもん、僕の意志なんて関係ないよ

ただの神様の気まぐれだもん


僕には関係ないよ





さっきまで僕のいた場所には、まだ0の雨が残っていた

どうせ一斉消去の時に消えてしまうだろうけど

けれど


まだ消えないで



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