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その愛はちょっと重たいかもしれない。(改稿版)  作者: ありま氷炎
この愛は重くなんてない〜黎光視点
5/15

 数ヶ月後、急に皇帝陛下から呼び出された。

 皇后と妃たちが集めて茶会を開くと言われ、彼の考えがわからなかった。今の今まで、陛下は私に妃たち見せるのをいやがった。それが突然。

 皇帝と私が先に席に着き、皇后、妃たちが現れるのを待つ。次々に紹介されていく女性達。凛はまだか、と何度も焦らされる。他の女性の名前なんて覚えてられない。

 陛下によって席順が決まっており、席が埋まっていく。今日の趣向なのか、皇后は始め妃たちは色を抑えた着物を身につけていた。

 皇帝陛下の右隣に皇后が座り、左隣が私だ。私の左隣の席を空けたまま、妃たちは着席していく。

 扉が一度閉じられ、凛はやはり現れないかと思ったら、宦官の一人が皇帝に耳打ちした。

意味深な笑みを陛下が浮かべ、再び扉が開かれる。

 

 そこに現れたのは、正真正銘の凛だった。

 私は、一目で大人の女性に成長した彼女の姿に悩殺された。

 四年、四年の間で、彼女はすっかり花咲かせていた。はち切れんばかりの胸が、大きく開かれた襟口からを少しだけ姿を覗かせる。噛みつきたくなるような香り立つ首筋が刺激的に私を誘う。潤んだ青い瞳に、滑らかな真っ赤な唇は食べてくれといわんばかりだ。

 皇帝や他の誰もいなければそのまま抱きついていたかもしれない。それくらい、彼女は魅力的だった。

 陛下がにやにやと笑いながら、彼女を空いている私の隣に座らせる。目の毒としか思えない胸、気がつくと追おうとしている自分の目を意識的に皇帝陛下に向けた。

 何かの罰のような茶会の後、凛はすぐに部屋に戻ってしまった。追いかけそうになる私を止めたのは皇帝陛下だ。

 何を考えたのか、陛下は凛が望めば、私が貰い受けても良いと言ってくれた。条件としては、紫国にしか生息しない白馬の無償譲渡であったが、私は即答した。

 白馬は育てるのが大変だが、これくらいの我儘は通してもらう。即位してから私は国のため働きづめであったのだから。


 その夜、陛下のお渡りとして、周りの目をごまかしつつ彼女に会いにいくことになった。

 私を見た凛が悲鳴をあげそうになり、慌てて口を塞いだ。彼女の大きくて柔らかい胸が腕に触れ、必死に理性をかき集めた。

 できるだけ、彼女を怯えさせないように話して、肯定の返事をもらう。

 そのまま抱きしめてしまいたかったが、こういうことは焦っては駄目だとように教えてもらったので、何もせず私は立ち去った。

 今思えば、あの時の自分を褒めてやりたい。


後宮に入り、 凛を迎えるに行くのは、赤毛の勝気な女官の翠だけだ。だが彼女のことを気に入っているようが心配だとうるさいので、勝手にしろと言ったら、女装してついていった。あの行動力には驚くしかない。


 「黎光もいかがですか」


 そんな提案をされたが、私は丁重に断った。

  

 予定より遅い二人と凛に、やきもきして待っていると彼女が現れた。

 もう彼女は妃ではない。

 歯止めがきかず、私は彼女を抱きしめた。すると眼鏡をかけた、いけ好かない宦官野郎が文句を言いやがったので、とりあえず揉め事は避けようと、彼女から手を離した。

 凛が首を垂れたのには驚いたが、あの宦官の手前そのままにさせておいた。


 いやな奴がいなくなり、私は意気揚々と凛に触った。するとようからつっこみを入れられ、仕方なく手を離した。

 馬車に乗り、紫国に向かう。この皇帝領で広まっている蛮族の噂を消すため、私達は紫国について凛に説明した。何が面白かったのか、彼女は少し笑いながら話を聞いていた。

 笑みを嬉しかったけど、四年前の笑顔にはほぼ遠くて寂しかった。


 その夜。

 皇帝領の端っこの宿に滞在した。

 私達は完全に甘くみていた。

 あの嫌な宦官の言葉。角家の当主の背景を考えれば、予想できたはずなのに。

 奴が汚れた手で凛に触れたと知り、殺してやろうと思った。だが、ようが止めに入り諦めた。

 凛は驚いていたが、傷ついてはいないようで本当に良かった。

 だけど、聞き捨てならないこと口にした。

 私を名前ではなく、王様だと呼んでいた。

 ようすいですら、名前で呼んでもらっているのに、なぜ私は!

 お願いすると、本当の名前で呼んでくれて嬉しかった。公明よりも、やはり本当の名がしっくりくる。

 その勢いで告白してしまい、かなり驚いた顔をされて、正直傷ついた。

 しかもようすいもいらぬことを言いやがって!


 もんもんと悩んでいる私の前で、彼女はあの四年前の笑顔で微笑む。

 私が惹かれた、あの美しい笑顔。


 彼女を紫国へ連れてくるまで長くかかってしまった。 

 だけどこれからはずっと側にいてもらおうと思っている。

 

 私の想いは重いらしい。

 そんなことはない、いや、重いのか。 

 だけど、凛なら受け止めてくれるはずだと信じている。


(了)

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